主な夏フェスも終わってしまったが、この夏もどこかのイベントに参加して、あるいはフェスの掛け持ちをして「やっぱり音楽っていいなあ」と感じている読者も多いのではないかと思う。

 僕は夏が来るたびに「夏フェス、行きたいなあ」と思うのだが、結局、この夏もどこのフェスにも行くことができなかった。毎年、毎年、この時期になると夏フェスに行けなかったことを悔やんでいるので、来年あたりは、いっそのこと自分で夏フェスを企画してやろうかと思っている。自分で企画すれば絶対にそのフェスには行けるからだ。

 まあ、フェスなんてものは思いつきだけでどうにかなるモノでもないが、わりとまじめに考えている。世間には「夏フェス、多すぎ」という声もあるが、まだ誰もやっていないフェス・テーマがある。そう、「社会貢献で夏フェス」だ。

 世の中にはチャリティ・コンサートは数多いし、社会貢献がこれほど大きなムーブメントになっているのだから、そろそろ社会貢献をテーマとした夏フェスが出てきてもいいはずなのに誰もやっていない。だったらオレがやってみたいなあと考えている。(読者の中で実現に協力したいという人がいたらメールください)

 社会貢献と音楽はもともと相性がいい。「ライブ・エイド」や「We Are The World」は有名だし、日本の演歌歌手のみなさんもチャリティに熱心だ。そもそも、ロックやフォークは60年代を席巻した「愛と平和」のフラワー・ムーブメントと密接に関連した革命思想だし、ラップは黒人の公民権運動にもつながっている。これらの音楽と、「世界を変える」が共通のスローガンである社会貢献とは、やはり根底でつながっているのである。

コンサート運営を通じて、
若者に生きるチカラを与える

 社会貢献と音楽をつなげた活動も増えている。NHKの番組でも紹介され、最近注目されているのが「ブラストビート」である。

 「ブラストビート」は、音楽を通じた高校生向けの社会教育プログラムで、アイルランド出身の音楽プロデューサー=ロバート・スティーブンソン氏が開始した。主にドラッグや飲酒に溺れる非行少年の更正や、不登校・引きこもりなどの無気力少年に気力を与えることを目的としている。

 このような高校生を集めてチームを作り、ロック・コンサートを企画・開催させる。チームはバーチャルな会社組織で、メンバーにはCEO、マーケティング、セールス、PRなどの役割が与えられ、コンサートを企画し、会場の手配、出演バンドの選定と交渉、ウェブやフライヤーなどによる宣伝、チケットの販売、そしてコンサートの実施まで自分たちの手で行なう。利益の一部は自分たちが選んだNPOなどに寄付される。

 こうして実地でビジネスを学び、自分たちの活動が社会に役立つことを実感することで、非行少年や無気力少年は前向きに生きようと考えるようになる。

 2003年に創業して以来、ブラストビートの活動には14万人を超える10代の若者が参加、500回以上のライブを実施した。2006年には「アイルランド社会起業家賞」を受賞。いまでは、アメリカ、イギリス、南アフリカなど世界各国に活動が拡がっている。