アイデアを生み出す「五上」の活用
前回ご紹介した「6:4ルール」を教えていただいた三菱総合研究所 経営コンサルティング本部 市場戦略グループ 主席研究員の佐藤敦さんがリラックスを大切にするのには、もうひとつの理由があります。
それは、「アイデア」や「ひらめき」に関する話なのですが、佐藤さんの好きな言葉に「欧陽修の三上(さんじょう)」があります。
「馬上、枕上(ちんじょう)、厠上(しじょう)」というもので、もともとは「文章を練るのに最もよく考えがまとまるという三つの場所」(『広辞苑』)として挙げられたものです。
佐藤さんは、これを「アイデアを練るのに最もよい三つの場所」と捉え直しています。現代風に言えば以下の3箇所になります。
(1)馬上→電車などの移動空間(満員電車は除く)
(2)枕上→ベッド、寝室
(3)厠上→洋式トイレ(和式は少しきつい)
佐藤さんは、さらに2つを加え、五上としています。
(4)浴上→温泉やお風呂
(5)宴上→飲み会(ただし、いいアイデアだったのによく忘れる)
言い換えれば、現代の五上は斬新なアイデアがひらめく空間と言えます。
共通しているのは、リラックスした状態だということです。このリラックス状態が、斬新なアイデアが生まれるのにもっとも適した環境であると言えるでしょう。
アイデアやひらめきは、極限に追い込まれたり、根を詰めて考えたり、気合を入れれば出てくるというわけではありません。むしろ、それらの張りつめた苦しい過程を経て、その後に心が開放された状態にあるとき、生まれてくるものではないでしょうか。
肝心なのは、順番とプロセスです。
佐藤さんは、このように続けています。
「アイデアが生まれるポイントのひとつに、ネタとネタの『つながり』が挙げられます。『空』から『有』が生まれることはありません。相応のネタの仕込みが必要になります(インプットなければ、アウトプットなし)。イメージで表現すると『しっかり詰め込んで(これがティーチングです)、熟成して、ふっと抜く』といった感じでしょうか」
実は、GROWモデルにおいても、信頼関係のある上司とのコーチングを通じて、安心感から生まれたオプションが最善のアクションプランになることが多いのです。