「ビジネス書なのに初めて最後まで読めた」
そんな感想が届いているのが、安藤広大氏の著書『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』『パーフェクトな意思決定』シリーズ四部作だ。これまで4400社以上の導入実績があるマネジメント法「識学」をもとに、ビジネスの現場で「一生活躍し続けられる」メソッドや思考法を授ける本シリーズは、さまざまな業界から圧倒的な支持を集めている。今回は、全ビジネスパーソンに必須の「リーダーシップ」のあり方を指南する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「それ前にも言いましたけど?」と言われたとき、頭のいい上司はどう返す?Photo: Adobe Stock

指摘よりも空気を整えることが先

 会議中や1on1の場面で、部下から「それ、前にも言いましたけど?」と返されたとき、上司としての対応力が問われます。

 こうした言葉には、二重のメッセージが込められています。
「情報の繰り返し」という事実と、「こちらの話を聞いていないのでは?」という苛立ちです

 上司がその場で「いや、聞いてるよ」と反射的に返してしまうと、空気は硬直します。
 冷静な管理職ほど、まずは相手の反応を受け止めつつ、会話の目的を立て直します

冷静な上司はこう返す

 おすすめは、こうした言い方です。

「うん、たしかに言ってくれてたね。ちょっと確認したかっただけなんだ」

 この返しは、自分の記憶や理解に問題があったことを曖昧に認めつつ、話の流れを乱さずに会話を続けることができます。相手の立場を立てながら、場のコントロールを維持する返答です

 仮に本当に相手の言ったことを覚えていなかった場合でも、「もう一度言わせた」ことのストレスを和らげる工夫が必要です。

感情の応酬を避けるのがリーダーの役割

 この種のやりとりにおいて最も避けたいのは、「前にも言いましたけど?」「いや、聞いてるって」「ちゃんと聞いてましたか?」といった、感情の応酬が始まるパターンです。

 これがエスカレートすると、周囲も息をひそめるようになり、チームの心理的安全性は一気に損なわれていきます。

 上司はいつでも、空気の管理者です。目的は、過去の正しさを証明することではなく、未来に向けて前に進めることです。

仮面をかぶって、淡々と進めていく

 そのためには、自分の記憶や立場にこだわりすぎないことです。

 たとえ自分の非ではないと思えても、相手が不快に感じているのであれば、そこに丁寧さをもって対応すべきです。

 必要なのは、感情ではなく機能としての受け答えです。リーダーは、感情を脇に置き、仮面をかぶって、淡々と進めていきましょう

(本稿は、リーダーの仮面の著者・安藤広大氏が書き下ろしたものです)

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。2002年、早稲田大学を卒業後、NTTドコモ、ジェイコムホールディングス、ジェイコム取締役営業副本部長を経験。プレイングマネジャーとして「成長しないチームの問題」に直面し悩んでいたときに「識学」に出合い、2013年に独立。多くの企業の業績アップに貢献した。2015年、株式会社識学を設立。わずか4年足らずで上場を果たし、これまで9年間で約4400社に識学メソッドが導入されている。著書にシリーズ累計170万部を突破した『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』(ダイヤモンド社)がある。『パーフェクトな意思決定』はシリーズ最新刊。