突然で恐縮ですが、今週9月9日木曜日、いよいよ拙著『社会貢献でメシを食う ~だから僕らはプロフェッショナルを目指す』(ダイヤモンド社刊)が発売となります。よろしくお願いします! などと、自分の本のお知らせになると急に文体まで変わって丁寧口調になってしまうのがなんともだが、ともあれ、日本の社会貢献の状況を考えてみると、やっぱりこの本は多くの人に読んでほしいと思うところもあり、今回はその理由について書いてみる。
最近、特に感じるのは「社会貢献はまだまだ世間の認知が足りてない」ということである。当連載では何度も「社会貢献がブームですよ~」と言ってきたし、そう語る人も増えてはきたが、まだまだブームは初期段階なので社会貢献に関する認知度は低い。
フリーライターの今一生氏はつねづね、「日本で社会起業家という言葉を知っている人は20%くらいしかいない」と言っている。マーケティング屋にとっての20%というのは微妙な数字だが、この数字から言えるのは、日本人のほとんどは社会起業家という言葉をまだ知らないということだ。
筆者の周辺には社会貢献を関心のある人しかいなくなってしまったので、日常会話でも「CSRとは?」とか「社会起業家とは?」みたいな会話が注釈無しで成立する。もちろん、筆者もマーケティング屋の端くれなので、そのようなコミュニティがある種、特殊なものであることは自覚はしている。それでも、往々にして現実は予想を超える。
企業人の多くはまだ知らない?
「CSR」の意外な認知度
先週、筆者はCSRに関する2回の講演を行なった。ひとつは某大企業の支社の営業マン向けのもの。もうひとつは、とある業界団体で、中小企業の経営者の集まり。どちらも40~50人程度の集まりだったが、CSRに関するセミナーにもかかわらず、CSRという言葉を知っていたという人は前者ではたったの2人。後者も5~6人程度だった。つまり、日本のビジネス社会ではいまだに、ほとんどCSRという言葉自体が知られてないということだ。
というわけで、先週の筆者は完全アウェーの状態でCSR最新事情とか「CSR3.0」の話をするハメになってしまったわけだが、日本の社会貢献の現状を知るにはよい機会になった。
言葉を知らないということは、そういうことと無縁に生きているということだ。無縁でも生きていけていると言い換えてもいい。日本人のほとんどが社会起業家とかCSRという言葉を知らないということは、ほとんどの日本人は社会起業家とかCSRを必要としていないことを意味する。日本企業のCSR担当者の悩みの根源はここにあると思う。
幸いなことに筆者がおつきあいしている企業のCSR担当者や経営者は、意欲的に楽しんでCSRを推進している人が多いが、悩みを抱えて仕事をしているCSR担当者の方が多いという話をよく聞く。
「40~50社くらいのCSR部を対象に調査してみたが、9割くらいのCSR部の人間は嫌々仕事をやっている、と感じた」という情報をくれた人もいる。また、ある企業のCSR部の人は、「転属になったので後任の人に仕事の引き継ぎをしようと思ったら、その後任の人が自社のCSRについてまったく何も知らなかった」という話をしてくれた。
社内の人間が自社のCSRのことをまったく知らないという嘆きはよく聞かされるが、これは多くの企業でCSRが経営戦略に組み込まれていないことを意味する。CSRのことを社員が知らなくても、その企業の事業活動に支障をきたしてないということだ。自社の基幹ブランドが何で、最近のヒット商品が何なのか、知らない企業人はいない。それなのにCSR活動に関してはCSR部の人間くらいしか知らない。それで企業活動がまわっているとすれば、CSRの存在意義は何なのか、CSR担当者が悩むのも無理はない。