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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

中国が西側の制度や価値観に寄り添うと考えるのは「幻想」

加藤嘉一
【第79回】 2016年6月21日
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対外強硬姿勢を貫く王毅外交部長
に根強いナショナリズムを見た

現在の国際社会において、中国が西側の制度や価値観に寄り添ってくると考えるのは「幻想」に思えてならない

 “知日派”外交官・王毅外交部長(元駐日大使、以下敬称略)の“快進撃”が止まらない。外国の政府首脳や記者に対して強気で発言し、中国の国益や国家イメージを頑なに守ろうとする姿勢・言動は、党・政府関係者、軍人、知識人の間でも比較的高い評価を生んでいるように見える(2016年3月1日公開、連載第71回「王毅の訪米に滲んだ米国、北朝鮮、台湾をめぐる戦略的意図と不確定要素」参照)。

 普段は外交にあまり関心のない一般大衆が、王毅の対外強硬姿勢に集団的喝采を贈っているように映る現状は、中国の対外関係においてナショナリズムという産物が依然として重大な作用を保持している現実を彷彿させる。

 そんな王毅が、またしても外国の地で一発かました。6月2日、カナダを訪問中のことだ。カウンターパートであるステファン・ディオン外相と共同記者会見に臨んだ際、カナダ人女性記者が同外相に中国の人権問題に関する批判的な質問をした。中国外交部長に向けた質問ではなかったが、王毅は「この問題は中国に関わる。私はコメントしなければならない」として次のように主張した。

 「あなたの問題提起は中国への偏見、そしてどこから来たのか分からない傲慢さで満ちている。私はそれを受け入れることがまったくできない」

 「あなたは中国を知っているか?」

 「あなたは中国に行ったことがあるか?」

 「あなたはとても貧しい状態にあった中国が6億人を貧困から脱出させたことを知っているか?」

 「あなたは中国がすでに1人あたりGDPが8000米ドルに達した世界第二の経済体になったことを知っているか?」

 「仮に我々がしっかりと人権を保護してこなかったとしたら、中国がこれだけ大きな発展を遂げられただろうか?」

 「あなたは中国が人権保護を憲法に書き入れたことを知っているか?」

 「私はあなたに言いたい。中国の人権状況を最も理解しているのはあなたではない。中国人自身だ。あなたに発言権はない。中国にこそ発言権がある。したがって、今後このような責任感のない質問をしてはならない。我々はすべての善意ある提案を歓迎する。しかし、根拠のないいかなる叱責をも断じて拒絶する」

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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