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宿輪ゼミLIVE 経済・金融の「どうして」を博士がとことん解説

英EU離脱の隠れた理由は「宗教」だ

宿輪純一 [経済学博士・エコノミスト]
【第39回】 2016年7月6日
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 6月24日、英国では国民投票によって、EU離脱が決まった。主として経済面での理由がいわれているが、筆者は、実は英国の主たる宗教が「英国国教会(Church of England)」であることが主因の一つであると考えている。

政治的意思で
統合へ向かったEUの原点

 52年に欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が設立され、EU統合が具体的にスタートした。欧州は第1次・第2次と2つの世界大戦で、国土が焦土と化し、多数の人命も失った。そのため、まずは二度と戦争を起こさないために、経済的というよりも、政治的意思として統合へ向かった。この点では、ドイツ・フランスに比べて、英国は地上戦がなかっただけ戦争被害が少なかったことも、影響している可能性がある。

 1999年には単一通貨ユーロ(Euro)が発足した。通貨の統合も一つの国に向かう大事な道筋で、戻ることはできない。欧州統合では重要なステップである。以前、ギリシャがユーロを離脱するといういい加減な話もあった。よく調べてほしいが、ユーロ離脱の項目はEUの条約にない。つまり、実際にユーロを離脱するということは、そもそもEUを離脱することなのである。これほどのことをギリシャがするはずはない。

 ちなみに長年、欧州経済、特に欧州統合を研究していると、“国”の特徴が見えてくる。現在のEU28ヵ国で、通貨統合まで進んだユーロ参加国は19ヵ国である。欧州は4つの国家グループに分かれる。これは、単一通貨を目指して収斂を始めていた、92~93年に発生した欧州通貨危機等の対応等ではっきりした。

 まずゲルマン系の国々(ドイツ・オランダ等)の通貨は常に上昇する傾向があり、ラテン系の国々(フランス・イタリア・スペイン等)の通貨は常に下落する傾向があった。これは経済の強さとインフレ管理の厳格さによるものである。

 それに加え、北欧系の国々(イギリス・デンマーク等)があった。北欧の国々を見ると、そもそもノルウェーはEUにも入っていないし、英国、デンマーク、スウェーデンは単一通貨ユーロに参加していない。北欧の国々は、そもそも欧州の中でも独立性が強い。

 さらに、2004年に東欧系の国々(ポーランド・チェコ・ハンガリー・エストニア・ラトビア・リトアニア・スロバキア・スロベニア等)がEUに参加したが、まだ発展途上国で、後に先進国である英国などに移民し、今回のEU離脱の一因になった。このように、北欧である英国は独立性が強く、過去を見ても19世紀後半には「栄光ある孤立」政策を進めていた。

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宿輪純一[経済学博士・エコノミスト]

しゅくわ・じゅんいち
 博士(経済学)・エコノミスト。帝京大学経済学部経済学科教授。慶應義塾大学経済学部非常勤講師(国際金融論)も兼務。1963年、東京生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業後、87年富士銀行(新橋支店)に入行。国際資金為替部、海外勤務等。98年三和銀行に移籍。企画部等勤務。2002年合併でUFJ銀行・UFJホールディングス。経営企画部、国際企画部等勤務、06年合併で三菱東京UFJ銀行。企画部経済調査室等勤務、15年3月退職。4月より現職。兼務で03年から東京大学大学院、早稲田大学、清華大学大学院(北京)等で教鞭。財務省・金融庁・経済産業省・外務省等の経済・金融関係委員会にも参加。06年よりボランティアによる公開講義「宿輪ゼミ」を主催し、4月で10周年、開催は200回を超え、会員は“1万人”を超えた。映画評論家としても活躍中。主な著書には、日本経済新聞社から(新刊)『通貨経済学入門(第2版)』〈15年2月刊〉、『アジア金融システムの経済学』など、東洋経済新報社から『決済インフラ入門』〈15年12月刊〉、『金融が支える日本経済』(共著)〈15年6月刊〉、『円安vs.円高―どちらの道を選択すべきか(第2版)』(共著)、『ローマの休日とユーロの謎―シネマ経済学入門』、『決済システムのすべて(第3版)』(共著)、『証券決済システムのすべて(第2版)』(共著)など がある。
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「円安は日本にとってよいことなんでしょうか?」「日本の財政再建はどうして進まないのでしょうか」。社会人から学生、主婦まで1万人以上のメンバーを持つ「宿輪ゼミ」では、経済・金融の素朴な質問に。宿輪純一先生が、やさしく、ていねいに、その本質を事例をまじえながら講義しています。この連載は、宿輪ゼミのエッセンスを再現し、世界経済の動きや日本経済の課題に関わる一番ホットなトピックをわかりやすく解説します。

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