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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

中国が天皇陛下の「お気持ち表明」を政治的に“歓迎”する理由

加藤嘉一
【第83回】 2016年8月16日
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中国共産党は「生前退位」に対し
他国と異なる視角、次元、緊張感で注視

中国共産党は天皇陛下の「生前退位」の動向を注視しているという 写真:宮内庁ホームページより

 いま米ワシントンD.C.で本稿を書いている。11月に控える大統領選挙が本格感を増している。8月に入ってから議論を交わしてきた政策立案者や知識人らの間で関心の高い国際問題はやはり“イスラム国”問題を含めたアラブ中東情勢だと感じる。ロシアの動向も緊密に語られている。特に、先日モスクワで行われたプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領との会談は注目された。米国は両国・両大統領の接近を地政学的観点から警戒している。習近平政権や経済情勢を含め、中国問題への関心度は“安定的”な高さを維持している。

 そんな中、なかなか単独のイシューとして注目されない日本問題であるが、8月8日にお気持ちを表明された天皇陛下を巡る動向に対しては、個々の政策屋・知識人たちも単独的というか、本能的な関心を示しているように見える。日本人として、「エンペラー」の存在感というものをこの地で実感している。

 先日ホワイトハウス関係者とアジア太平洋情勢を巡って議論する機会があった。中国問題から天皇陛下の話に及んだ際、私は「中国はかなり真剣、緊密に天皇を巡る情勢を追っていると思います」と述べると、先方は「我々だって追っている。米中含め、どの国も同じように追っている。特別なギャップはないはずだ」と返答してきた。その場で議論を拡張させることはしなかったが、私は、中国共産党は他諸国とは異なる視角、次元、および緊張感をもって天皇陛下、特に生前退位の如何を巡る動向を注視していると考えている。

 本稿では、中国がなぜその動向を注視するのか、その背景にはどんな考えがあるのか、これからどうしようとしているのかを考えていきたい。「中国民主化研究」と名付けた本連載にとっては、中国共産党をあらゆるケースを用いながら“解体”していくことが基本的作業になる。今回は天皇観にフォーカスすることによって、中国共産党の一面を覗き込んでみたい。

東京駐在の新華社記者が配信した
興味深い分析記事

 天皇陛下が午後の時間帯にお気持ちを表明した8月8日、党のマウスピースと称される国営新華社通信は東京発で立て続けに記事を配信した。同日の午後から夜にかけて(北京時間)、新華社のウェブページを見ていたが、ヘッドラインに近い目立つ位置で3本の関連記事を確認することができた。

“日本の天皇が生前退位の意向を流露、安倍首相は真剣に考慮すると表示”

“真相 明仁天皇の‘退位’談話にはどのような言外の意が含まれているか”

“日本の天皇が‘生前退位’する可能性はどれくらいあるか?”

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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