11月1日、CSRの国際標準規格である「ISO26000」が発行された(正確に言えば、企業など組織の社会的責任(SR)に関する国際標準規格)。これで、世界の企業はますますCSRに力を入れて取り組まなければならない状況になると思われる。

 ということで、今回はCSRのあり方について提案してみたい。といっても「ISO26000」の話ではない。この話はあまりに実務家向けに過ぎるし、より実践的な話をした方が読者の皆様のお役にたてると思うからだ。

CSR活動に
社員をもっと巻き込むには?

 筆者は数多くの企業からCSRに関するご相談をいただいているが、業種や会社の規模はさまざまなれど、悩みの内容はだいたい共通している。その最たるものが社内コミュニケーションだ。社員がCSRに関心がない、自社のCSR活動についてまったく知らない、どうすればCSR活動に社員をもっと巻き込めるだろうか? といった悩みだ。

 これに対する筆者の答えは決まっている。社内コミュニケーションを活発化したければ、社外コミュニケーションを大きくするべし、という回答である。つまり、世間で話題になったり、存在感が大きくなるようなCSR活動を行えば、社内の人間も自然と関心を持つし、意識も変わってくるということだ。

 これを商品の話に置き換えれば理解しやすいだろう。世間で話題になって、ニュース番組でも取り上げられるような大ヒット商品が生まれれば、社内の人間も活気づいて直接関係の無い部署の社員も意識が変わる。

 昔、倒産の危機にあったある自動車メーカーが起死回生の大ヒット商品を生み出した。すると、官僚的と評されていた社員の意識が変わり、工場の守衛さんまでがサービス精神に目覚め、工場見学に来た人たちを率先して案内するようになったという。やはり、世間での話題は社員に誇りとやる気を与え、意識と行動を変えるのだ。

 CSRも同様で、世間がまったく知らないような活動に社員に興味を持てと言っても無理がある。特に大企業の場合、数多くの活動を行なっているのはよいのだが、総花的すぎて何をやりたいのかよく分からないケースが多い。CSRも事業仕分けしろとまでは言わないが、フラッグシップとなるような活動を決め、社外との大きなコミュニケーションを行なうことが必要だ。どのような企業でも「わが社の主力商品はこれです」というものがあるが、CSRにおいてもフラッグシップは必要なのだ。

「ピンクリボン」のような
認知度の高いキャンペーンに参加

 フラッグシップとなる活動をどのように構築するかは、いろいろと方法があるが、「連合型キャンペーン」が最も有効ではないかと筆者は考えている。世間に話題を提供するという意味では、最も対費用効果が高いからだ。

 なにしろ、時代は大連合の時代である。「ISO26000」にしても、これまでのCSRの流れを無視した覇権主義的な規格ではない。さまざまな基準、ガイドラインがあり、協調して世界を変えていこうというのが、大きなトレンドになっている(*)。

*参考記事:
ECO JAPAN連載「ISO26000で変わる企業、変わる社会」10月20日記事『CSRを取り巻く新しいトレンド』関正雄[著]

 企業やNPO/NGOも大連合の時代に入っている。その最先端にあるのが「ピンクリボン」活動だろう。ご存じの方も多いと思うが、これは乳がん撲滅を目的として乳がん検診を促すなどの啓発キャンペーンである。世界的規模の運動だが、日本でも数多くの企業、NPO、メディアが参加しており、10月には大々的なキャンペーンを展開している。