30日死亡率で有意差
外国人医師はより質の高い医療を提供

 混乱が広がるなか、ハーバード公衆衛生大学院の津川友介氏は「外国人医師の入国を阻む政策はアメリカ人の健康に悪影響を及ぼす可能性がある」と断言する。その根拠は先日、津川氏らのチームがBMJ(英国医師会誌)に報告した調査研究だ。

つがわ・ゆうすけ ハーバード公衆衛生大学院(医療政策管理学)研究員。東北大学医学部卒業後、聖路加国際病院、世界銀行を経て現職。ハーバード公衆衛生大学院でMPH(公衆衛生学修士号)、ハーバード大学で医療政策学のPh.D.を取得。専門は医療政策学、医療経済学。ブログ「医療政策学×医療経済学」において医療政策におけるエビデンスを発信している

 今回、津川氏らは、米国でメディケアの利用者(65歳以上の高齢者)を対象に、急性期病院時の入院データ約120万件と担当医約4万4000人の診療データを解析。海外で医学教育を受けた後、米国で医師免許を取得して働いている医師(以下、外国人医師)と米国で医学教育を受けた医師(以下、米国人医師)とで、入院後30日以内の死亡率を比較した。

 その結果、入院日から30日以内の死亡率は外国人医師11.2%、米国人医師11.6%で、外国人医師が担当した患者の30日死亡率は統計学的に有意に低いことが示されたのだ。これは患者の重症度や診療している病院などをすべて補正した後の比較である。

 これが事実なら、外国人医師が診療することで250人を診療するごとに、米国人医師が担当した場合に亡くなったかもしれない1人の生命を救っている計算になる。

 しかも外国人医師の担当については、入院の原因となった病気のほかにも複数の病気を抱え世帯年収が低くいなど、悪条件が重なる患者の比率が高く、より重症の患者を診ていたと推測される。もし患者の重症度に関するもっと詳細なデータがあった場合、外国人医師の治療成績は米国人医師をさらに上回る可能性すらあるのだ。