政治の混迷、経済の停滞、難しい外交の舵取り、加えて、中長期的にのしかかる重い政策課題――少子高齢化対応、財政再建、競争力の復活・強化――昨今のわが国を取り巻く環境をあれこれと数え上げると、多くの人は、日本の将来について、ともすれば悲観的になってしまいがちだと言われている。これに対して、筆者は、日本の将来について、原則として、先行きは明るいと考えている。今回は、その根拠を述べてみよう。
本格的な構造改革は、
まだ、全く着手されていない
政治の混迷振りは、確かに呆れるばかりの状況ではある。しかし、前回のコラムでも指摘したように、この国は、本格的な政権交代をまだ1回しか経験していない。極論すれば、本当の民主主義がようやく始まったばかりなのだ。
1票の格差をなくして一人一票を実現し、インターネット投票を導入する等、若い世代の政治参画を促せば、スタート台が低い分だけ、これからの政治には大いに期待が持てる。政治家のダイバーシティを実現するためには、例えば、女性と若者の候補者数が50%を超えなければ政党交付金を削減する等、工夫の余地もまだいくらでもある。加えて、企業等を休職して立候補ができる(落選すれば戻れる)、世襲を法律で禁止する等、政界への参入障壁を低くする知恵も、いくらでも出せるだろう。
要するに、この国は、政治の抜本的な構造改革について、まだ本格的な手を何も打っていないのだ。対策を打たずして、どうして早々と諦めることなどできようか。
経済も同じである。大雑把にいえば、GDP≒人口×生産性 であるから、中長期的には、人口を必死で増やす政策を総動員することが望ましい。例えば、出生率を上げるためには、シラク3原則に象徴されるフランスの政策を、そのまま借りてくればいい。しかし、この点についても、わが国では、まだほとんど着手されていない。
また、即戦力としての良質な労働力を求めるのであれば、アメリカのように、世界中から優秀な学生を集めることが、一番手っ取り早いと思われるが、その決め手となる大学改革(秋入学の実施、競争力の向上等)も、まだ緒に就いたばかりである。