自由民主党は、参院選の公約として、「大胆な法人税減税」を挙げている。また、経済同友会は法人税率を25%に引き下げるべきだとした。
前回は、実際の企業を見ると負担率が非常に低い企業もあることを指摘した。その原因として、前回は受取配当の益金不算入措置について述べた。今回は繰越欠損について述べることとする。
リーマンショックで翌期繰越額が約20兆円増加
繰越欠損金制度は、当該年度の益金から控除しきれぬ損失が生じたとき、それを、将来の法人税計算において損金として用いることを許容するものだ。
企業会計においては、繰越欠損を企業にとってある種の資産とみなす処置(税効果会計)が取り入れられている。
繰り越すことのできる期間は、従来は7年間であったが、2012年4月から9年間になった。ただし、繰越控除前の所得の80%が限度とされた(中小法人は、従来どおり100%)。
受取配当の益金不算入措置の影響は年度によってあまり大きく変動しないのに対して、繰越欠損金の額は、経済情勢によって大きく変動する。とりわけ、リーマンショック後には、製造業において巨額の繰越欠損が生じた。
図表1に示すように、以前から、繰越欠損金の当期控除は10兆円台であり、翌期繰越額は、70兆円台でほぼ一定していた。
ところが、リーマンショックの影響で08年度に巨額の損失が発生し、この年度の翌期繰越額が90兆円を超えたのである。つまり、20兆円ほど増えたことになる。
その後、毎年度10兆円程度が取り崩されているが、繰越額は80兆円程度で不変だ。
2011年度においては、繰越欠損金の当期控除額は9兆7069億円で、翌期繰越額は76兆436億円となっている。