連載『悶える職場』では、これまで苦渋の生活を強いられている会社員の生々しい姿を紹介しながら、ブラック企業の現場が抱える深い闇について検証してきた。今回は趣向を変えて、個人事業主の「悶える職場」を紹介しよう。
紹介するのは、生活苦に喘ぐベテラン漫画家・神田森莉(かんだ・もり)さんだ。筆者の前連載『シュリンク業界で生き残れるか?』にもご登場いただいた。本人の了解を得た上で、実名でお伝えする。
以前はヒット作を描き続けた神田さんだが、ここ10年間は仕事が少なくなり、収入が減っている。彼は「鬼のような営業」をしつつ、カード会社から借金することで当面、足りない生活費を補った。漫画を描き続け、何とか一定のペースで返済をするが、やはり収入が追いつかない。そこでまた借りる。自己破産や清算せざるを得ない悪循環に陥っていることを自覚していたが、どうすることもできなかったという。
これは企業の社員にとっても、「遠い話」ではない。不況で給与や賞与を大幅にカットされた中小企業の社員や、長時間労働のあげく残業代の支払いを受けられないブラック企業の社員の中には、低収入に耐えられずに借金を積み重ね、首が回らなくなった人も少なくないと聞く。
また、すでにリストラで職を失い、自分で事業を始めた人にとっては、身につまされる話だろう。同じくリストラに遭い、再就職を考えている人も、なかなか職が決まらずに失業期間が長引けば、やはり借金に頼らざるを得なくなる。
まさに一寸先は闇であり、いつあなたもこうした状況に追い込まれるとも限らないのだ。この漫画家の姿から、生き残るための指針を読み取ってほしい。
売れっ子ホラー漫画家は
なぜ借金苦に悶えているのか?
「漫画家としてのプライドや意地は、なかったのですか?」
「それはない……。あの状況ではもう、返せないと思ったから」
「なんとか、ならなかったのですか?」
「仕方がないよ。収入が少なく、どうすることもできないから……。もう、あのカードでお金を借りることはできないのかもしれないけど」