英国が中国製原子炉の導入で合意
TPPから外れた両国の思惑が合致
10月21日、中国の習近平国家主席は英国のキャメロン首相と会談し、同国南東部で計画している原子力発電所に、中国製の原子炉を導入することで合意した。中国製の原子炉の導入は先進国では初めてであり、多くの専門家から驚きを持って受け止められた。
当該原発プロジェクト企業には、中国広核集団(CGN)が66.5%を出資することになっており、原子炉の建設及びその後の運営までのほとんどを中国企業が担うことになる。
それに対しては英国内から、「安全性に疑問がある」「国の根幹を担う事業分野を中国企業に任せてよいのか」などの批判的な声が上がっている。
今回の合意の背景には、海外からの投資資金を使って国内経済の活性化を図りたい英国のキャメロン政権の思惑と、世界のインフラ投資を狙う中国の戦略が上手くマッチしたことがある。
中国は国内に大きな過剰生産能力を抱えていることもあり、鉄鋼やセメントなどの基礎資材を海外に輸出して、国内経済を下支えすることが必要になっている。そのためには、世界のインフラ投資を着実に掴んでおきたいはずだ。
一方、TPPの基本合意によって、環太平洋の12ヵ国が関税率の引き下げやビジネスルールの統一に動き始めた。TPPから取り残された中国としては、同様にTPPから外れている欧州諸国に近づいて、対TPPで相応のポジションを確保することが必要になる。
その意味では、中国の意図は明確だ。見逃せないポイントは、英国やドイツなど欧州の主要国が、それを歓迎するスタンスを取っていることだ。
今後、中国をめぐる情勢は一段と複雑化するだろう。わが国としても、世界情勢の変化に敏感に対応できる体制を作っておくことが必要だ。