28日未明、日銀がYCC修正を議論するリーク記事が出て円高株安が進行
日銀、金利操作を柔軟運用 上限0.5%容認案 ―。
先週金曜日未明の午前2時。日経電子版で日銀の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)に関する容認案が同日午前から開かれる7月の日銀金融政策決定会合で議論されるとのリーク記事が出された。
これに為替市場は激しく反応。発表前のドル・円相場は141円ちょうどのレベルで動いていたが、見る見るうちに円高・ドル安となり138円台後半まで進行した。また、1897年6月以来となる126年ぶりの14連騰記録がかかっていたNYダウは125ドル高から急に下げ足を早めて237ドル安の3万5282ドルで終了。結局13連騰で終わってしまった。とはいえ、13連騰でも1987年1月以来36年半ぶりの記録であるため、十分凄いことに変わりないのだが…。
前代未聞のスピードで行われた米国の利上げもいよいよ最終局面に突入
日銀の実際の動きを点検する前にまずは先週水曜日に結果が出た7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を見てみよう。シナリオ通り0.25%の利上げが発表され、政策金利は5.25%~5.50%へ引き上げられた。リーマン・ショック前のピーク水準を0.25%上回り、ドットコムバブルの崩壊前だった2001年3月以来の高水準である。しかも2022年3月のゼロ金利解除以降、きわめて短期間で5.25%に及ぶ引き上げスピードは前代未聞といってよいほどの事態である。
公表された声明文において今回の0.25%の利上げについて「これまでの累積した利上げ効果や影響が経済に広がるまでの時間差を考慮する」という前回会合までの表現を踏襲した上で「追加の情報や、それが金融政策に与える示唆について検証を続ける」との文言が出された。前回6月のFOMCでは「今後2回の追加利上げ」の可能性を示唆していたが、今回7月FOMC後の米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の会見では「次回9月は利上げの可能性もあるし、据え置く可能性もある」とコメント。FRBはすでに経済のソフトランディングをかなり確信しているようであり、インフレ鈍化傾向も顕著なため、マーケット参加者の多くが考えているように今回の利上げが最後となる可能性が出てきている。仮に、あと1回利上げされたとしても「これで最後だ!」という明確なメッセージとして受け止められるため、米国の利上げはいよいよ最終局面に来たと考えてよいだろう。
今回のYCC修正は、国債の大量購入で金利を抑え込む歪んだ構図を解消か
一方、我らが日銀である。YCC修正と言えば、2022年12月に黒田東彦前総裁がフォワードガイダンスなしに突然行った「長期金利の上限を従来の0.25%程度から0.5%程度に拡大」を皆さんは思い出されるだろう。「市場機能の改善を図るため」を名目にしたものだったが、その後実際に行われたのは、上限の0.5%を超える前に国債を大量に買い入れて金利を抑え込むという極めていびつな構図だった。リーク記事の修正案は「0.5%の上限を維持した上で市場動向によっては0.5%を超えることを認め、国債購入が過度に膨らまないようにする」であった。
では実際、どういう内容が決定されたのか? 結果は事前報道通りの内容で、長期金利の上限は0.5%をメドとしたうえで、市場動向に応じて0.5%を一定程度超えることを容認するというものだ。とは言え具体的な上限は1.0%。すなわち指値オペの利回りを従来の0.5%から1.0%に引き上げた。国債の大量購入で金利を抑え込む従来の政策運営を柔軟にし、市場の歪みを和らげる狙いである。
発表直後の株式市場は乱高下したが、妥当な判断であり日本経済に追い風
今回の政策変更はかなり市場に配慮した結論だと思う。金利そのものを大きく修正せずに市場のゆがみを和らげるのは市場と日銀にとってウィン・ウィンの結果をもたらすものだからだ。発表を受けて日経平均は一時500円近く上昇、ところがその後は850円も下落して切り返すという非常にボラティリティの大きな展開となった。ドル・円も同じく発表直後の1分間で何と3円もの乱高下を演じるという変動ぶりだった。外国為替証拠金(FX)のトレードをおこなっている投資家には容易に対応できない悪夢のような時間だったことは想像に難くない。
7月18日のコラム「7月に日銀のYCC再修正の可能性高が高まる」で記した通り、YCCの再修正で株式市場は一時的には調整するかもしれないが、これは金融正常化への道であり逆風ではない。日銀はFRBや欧州中央銀行(ECB)のような急速な金融引き締め政策を取るわけではない。日本の場合はあくまでもマイナス金利からの脱却、すなわち「金融正常化」に向けたステップを踏むわけであり、これは日本経済にとってはプラスだ。金利のない世の中では経済は活性化しない。それはもうこの10年来我々が体験してきたことである。「ゼロ金利、給料横ばい、増税、希望のない社会…」は十分すぎるほど味わった。金融正常化は日本市場にとって逆風ではない。これは、とても重要な点である。
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
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