激しく動く為替相場。ドル・円レートは145円台から一気に137円台へ
先週木曜日の夜間取引でドル・円レートは137円台前半まで円高・ドル安となり、先々週半ばまででの円安・ドル高局面から一気に景色が変わった。
為替相場は相変わらずダイナミックに動いている。2022年初めのドル・円は116円台だったが、米連邦準備理事会(FRB)が同年3月にゼロ金利を解除してからは一気に円安・ドル高が進展。同年10月には151円台まで突入した。いわゆる日米金利格差の拡大でドルの魅力が高まる一方、通貨としての円が優位性を失うという構図だった。あまりにも急速な為替レートの変動に対し、政府と日銀は為替介入を実施。そこから大きな逆回転が起こり今年1月には127円台まで円高・ドル安となった。これを起点に再び円売り・ドル買いの流れとなり、今年4月に日銀の植田和男新総裁が誕生してからは一段の円売り・ドル買いの「植田トレード」が定着していた。ところが、6月30日につけた145円07銭をピークに一気に137円台まで急速な円高・ドル安の展開となっている。
一番の要因は需給的な背景だ。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、短期的な投機筋の円売越額は2022年のピーク時を超え総額で1.5兆円となっており、5年半ぶりの高水準に膨らんでいた。植田総裁が大規模な金融緩和を続ける姿勢を示したことで、低金利の日本円を借りて外為市場で売り、高金利通貨で運用する「キャリー取引」が活発化していた。非常にわかりやすく、確実性の高い取引になっていた。しかしながら、先週に入って急速な逆回転が起こった。膨らんでいた円売りポジションが買い戻されたのである。
米国のインフレ鈍化は明確。利上げ「7月打ち止め」説再燃で市場活況
わずか2週間で7円もの円高・ドル安には当然理由がある。そのひとつが米国のインフレ鈍化である。先週水曜日に米労働省は6月の消費者物価指数(CPI)を発表した。前年同月比3.0%上昇となり市場予想の同3.1%上昇を下回った。また、5月の4.0%から大幅に鈍化した。これで12カ月連続での上昇率の低下となり明確にインフレ鈍化のトレンドが出ている。一方、日本の5月のCPIは前年同月比で3.2%となっているため、驚くことに逆転現象すら出てきた。6月の市場予想は3.3%上昇のためインフレが加速する形である。欧米に出遅れた原材料高の価格転嫁が続いており、6月からの電気料金値上げなどの影響も出てくる。さらに先週木曜日に発表された6月の米国の卸売物価指数(PPI)も市場予想を下回り、インフレ鈍化が顕著である。長期金利も4.0%台から3.7%台へ一気に低下している。
こうした状況を受けて、株式市場のマーケット参加者には大きな変化が見られる。それは「7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)が今回の利上げの最後になる」との認識だ。皆さんもご存知のように、FRBは6月のFOMCにおいて、年内にあと2回の利上げに動くシナリオを示した。FRBのパウエル議長らが引き締めに前向きなタカ派発言をしたことで「7月打ち止め説」はかなり揺らいでいたのである。7月25日から26日に開催される次回のFOMCでの0.25%の利上げシナリオは変わらないものの、CPIやPPIの発表を受けて、7月が年内最後の利上げとの見方が強まっているのだ。これを受けてS&P500指数ならびにナスダック指数は昨年4月以来の高値水準を付けており、米国市場は活気を取り戻してきている。日本の株式市場にとっても追い風である。
急速に強まっている日銀のYCC再修正観測。7月会合に向けて市場は警戒
さらに重要なことがある。それは日銀の大規模金融緩和の是正観測がここへきて急速に強まっていることだ。これが冒頭に述べた為替市場にも大きな影響を落としている。日銀の内田眞一副総裁のインタビュー内容がいろいろと憶測を呼んでいる。
内田副総裁が指摘したのは長期金利を誘導する「長短金利操作」(イールドカーブ・コントロール、YCC)による副作用、そして期待インフレの上昇による実質金利の低下である。これを受けて日本の債券市場では先週の水曜日に新発10年物国債利回りが0.475%となり、植田総裁による初会合があった4月28日以来の高水準を付けた。日銀がYCCの修正をおこなったのは2022年12月だ。黒田東彦前総裁によるフォワードガイダンスなしの突然のサプライズ・イベントとなり、株式市場全体の大幅安と同時に、金融株だけがスポット的に急騰するという状況を生み出した。「黒サンタ・ショック」と私は名付けたが、その可能性が再び高まっている。
YCC再修正なら株式市場は調整も。金融正常化への道であり逆風ではない
とは言うものの日銀は、FRBや欧州中央銀行(ECB)のような急速な金融引き締め政策を取る必要はない。日本の場合はあくまでもマイナス金利からの脱却、すなわち「金融正常化」に向けたステップを踏むわけであり、これは日本経済にとってはプラスだ。株式市場全体の大幅安は一時的なものだ。以前のコラムでも述べたが、金利のない世の中では経済は活性化しない。それはもうこの10年来我々が体験してきたことである。「ゼロ金利、給料横ばい、増税、希望のない社会…」は十分すぎるほど味わった。金融正常化は日本市場にとって逆風ではない。とても重要な点だ。
もちろん日銀が7月27日~28日の金融政策決定会合で金融政策の修正に動かなければ、為替は再び円安・ドル高となり、株式市場の一時的な大幅安は起こらない可能性が高い。だが、いずれ年内には金融政策の是正がおこなわれる可能性は極めて高いと考えた方がよい。その時になって急にジタバタしないようにしたいものである。
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
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