「勝者のゲーム」と資産運用入門

円高が急激に進行。ドル・円は137円台まで下落!要因は、米インフレ鈍化と日銀金融政策の是正観測。7月会合でYCC再修正なら、株式市場は一時的波乱も太田忠の勝者のポートフォリオ 第93回

2023年7月18日公開(2023年7月17日更新)
太田 忠
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

激しく動く為替相場。ドル・円レートは145円台から一気に137円台へ

 先週木曜日の夜間取引でドル・円レートは137円台前半まで円高・ドル安となり、先々週半ばまででの円安・ドル高局面から一気に景色が変わった。

 為替相場は相変わらずダイナミックに動いている。2022年初めのドル・円は116円台だったが、米連邦準備理事会(FRB)が同年3月にゼロ金利を解除してからは一気に円安・ドル高が進展。同年10月には151円台まで突入した。いわゆる日米金利格差の拡大でドルの魅力が高まる一方、通貨としての円が優位性を失うという構図だった。あまりにも急速な為替レートの変動に対し、政府と日銀は為替介入を実施。そこから大きな逆回転が起こり今年1月には127円台まで円高・ドル安となった。これを起点に再び円売り・ドル買いの流れとなり、今年4月に日銀の植田和男新総裁が誕生してからは一段の円売り・ドル買いの「植田トレード」が定着していた。ところが、6月30日につけた145円07銭をピークに一気に137円台まで急速な円高・ドル安の展開となっている。

 一番の要因は需給的な背景だ。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、短期的な投機筋の円売越額は2022年のピーク時を超え総額で1.5兆円となっており、5年半ぶりの高水準に膨らんでいた。植田総裁が大規模な金融緩和を続ける姿勢を示したことで、低金利の日本円を借りて外為市場で売り、高金利通貨で運用する「キャリー取引」が活発化していた。非常にわかりやすく、確実性の高い取引になっていた。しかしながら、先週に入って急速な逆回転が起こった。膨らんでいた円売りポジションが買い戻されたのである。

米国のインフレ鈍化は明確。利上げ「7月打ち止め」説再燃で市場活況

 わずか2週間で7円もの円高・ドル安には当然理由がある。そのひとつが米国のインフレ鈍化である。先週水曜日に米労働省は6月の消費者物価指数(CPI)を発表した。前年同月比3.0%上昇となり市場予想の同3.1%上昇を下回った。また、5月の4.0%から大幅に鈍化した。これで12カ月連続での上昇率の低下となり明確にインフレ鈍化のトレンドが出ている。一方、日本の5月のCPIは前年同月比で3.2%となっているため、驚くことに逆転現象すら出てきた。6月の市場予想は3.3%上昇のためインフレが加速する形である。欧米に出遅れた原材料高の価格転嫁が続いており、6月からの電気料金値上げなどの影響も出てくる。さらに先週木曜日に発表された6月の米国の卸売物価指数(PPI)も市場予想を下回り、インフレ鈍化が顕著である。長期金利も4.0%台から3.7%台へ一気に低下している。

 こうした状況を受けて、株式市場のマーケット参加者には大きな変化が見られる。それは「7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)が今回の利上げの最後になる」との認識だ。皆さんもご存知のように、FRBは6月のFOMCにおいて、年内にあと2回の利上げに動くシナリオを示した。FRBのパウエル議長らが引き締めに前向きなタカ派発言をしたことで「7月打ち止め説」はかなり揺らいでいたのである。7月25日から26日に開催される次回のFOMCでの0.25%の利上げシナリオは変わらないものの、CPIやPPIの発表を受けて、7月が年内最後の利上げとの見方が強まっているのだ。これを受けてS&P500指数ならびにナスダック指数は昨年4月以来の高値水準を付けており、米国市場は活気を取り戻してきている。日本の株式市場にとっても追い風である。

急速に強まっている日銀のYCC再修正観測。7月会合に向けて市場は警戒

 さらに重要なことがある。それは日銀の大規模金融緩和の是正観測がここへきて急速に強まっていることだ。これが冒頭に述べた為替市場にも大きな影響を落としている。日銀の内田眞一副総裁のインタビュー内容がいろいろと憶測を呼んでいる。

 内田副総裁が指摘したのは長期金利を誘導する「長短金利操作」(イールドカーブ・コントロール、YCC)による副作用、そして期待インフレの上昇による実質金利の低下である。これを受けて日本の債券市場では先週の水曜日に新発10年物国債利回りが0.475%となり、植田総裁による初会合があった4月28日以来の高水準を付けた。日銀がYCCの修正をおこなったのは2022年12月だ。黒田東彦前総裁によるフォワードガイダンスなしの突然のサプライズ・イベントとなり、株式市場全体の大幅安と同時に、金融株だけがスポット的に急騰するという状況を生み出した。「黒サンタ・ショック」と私は名付けたが、その可能性が再び高まっている。

YCC再修正なら株式市場は調整も。金融正常化への道であり逆風ではない

 とは言うものの日銀は、FRBや欧州中央銀行(ECB)のような急速な金融引き締め政策を取る必要はない。日本の場合はあくまでもマイナス金利からの脱却、すなわち「金融正常化」に向けたステップを踏むわけであり、これは日本経済にとってはプラスだ。株式市場全体の大幅安は一時的なものだ。以前のコラムでも述べたが、金利のない世の中では経済は活性化しない。それはもうこの10年来我々が体験してきたことである。「ゼロ金利、給料横ばい、増税、希望のない社会…」は十分すぎるほど味わった。金融正常化は日本市場にとって逆風ではない。とても重要な点だ。

 もちろん日銀が7月27日~28日の金融政策決定会合で金融政策の修正に動かなければ、為替は再び円安・ドル高となり、株式市場の一時的な大幅安は起こらない可能性が高い。だが、いずれ年内には金融政策の是正がおこなわれる可能性は極めて高いと考えた方がよい。その時になって急にジタバタしないようにしたいものである。

進撃を続ける「勝者のポートフォリオ」。より攻撃的な投資戦略を展開!

 さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。先週の日経平均はわずか3円上昇とほとんど変わらず。「勝者のポートフォリオ」は過去最高値更新ならず、年初来高値も1銘柄にとどまった。

 来たるべき金融相場に向けて「勝者のポートフォリオ」ではテンバガー(10倍株)候補の新興系グロース株を3銘柄組み入れ、着々と準備を進めている。一段と大きな投資成果を上げるために積極的な投資戦略を展開していきたい。なお、スペシャル講義でも7月下旬に「テンバガー銘柄への投資手法」の収録をおこなう予定である。

 快進撃を続けている「勝者のポートフォリオ」。毎日たくさんのお問い合わせ、ご入会をいただいており感謝に堪えない。随時入会できるので興味のある方はぜひ一度HPに立ち寄っていただきたい。株式市場にビッグチャンスが満ちている。

●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。

※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。

 

国内外で6年連続アナリストランキング1位を獲得した、
トップアナリスト&ファンドマネジャーが
個人投資家だからこそ勝てる

「勝者のポートフォリオ」を提示する、
資産運用メルマガ&サロンが登場!

老後を不安なく過ごすための資産を自助努力で作らざるを得ない時代には資産運用の知識は不可欠。「勝者のポートフォリオ」は、投資の考え方とポートフォリオの提案を行なうメルマガ&会員サービス週1回程度のメルマガ配信+ポートフォリオ提案とQ&Aも。登録後10日間は無料!

太田忠の勝者のポートフォリオ

10日間無料 詳細はこちら※外部サイトに移動します


「勝者のゲーム」と資産運用入門 バックナンバー

»もっと見る

太田忠の勝者のポートフォリオはこちら!
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

最強株主優待
人気投信をズバ斬り!
最新iDeCo入門

4月号2月20日発売
定価950円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[最強株主優待/投信格付]
◎巻頭特集
人気20銘柄の売買診断も!
最新決算でわかった2025年の大本命株28

●トランプ追い風株
●来期も好業績株
●好調の中小型株株
●配当を増額修正した株

◎第1特集
優待の達人25人が選んだ!
合計利回り30%超も!
最強株主優待ベスト150

桐谷さんの愛してやまない推し優待株
「優待+配当利回り」「最低投資額」2大ランキング
●多種多様なお店が並ぶ!外食
●押しグルメを探そう!食品
●家計の救世主!日用品
●いろんな買物に使える!百貨店・家電量販店
●化粧品や洋服でキレイに!美容・アパレル
●心躍る体験を!エンタメ・レジャー
●欲しいものが選べる!カタログ
●自由度が高い!金券・ポイント
●優待新設・廃止の最新ニュース
●優待弁護士が指南!優待株の失敗しない選び方
●女性優待ブロガー3人の座談会

◎第2特集
★★★の数を見るだけでOK!
人気投信をズバ斬り!
2年目NISAで買うべきは?
投信格付242【2025年春版】

2年目NISAの投信の選び方!
●コストの引下げアリ!インデックス型
●市場環境の変化が影響!アクティブ型
●株式比率の高い投信が好調!バランス型
●最高利回りは36%超!毎月分配型100

◎第3特集
手数料比較はもう古い!
大手ネット証券7社を徹底比較!
NISAで最強の証券会社セレクトガイド

基本サービスの充実度
ポイントのオトク度
●資産管理のしやすさ

【別冊付録】
今スグ始める?やめとくべき?
改正ポイントがわかる!最新iDeCo入門

iDeCoの何がスゴイ?
●受取のルールをマスター
●運用商品は何がオススメ?
●出口戦略こそ考えどころ
●手数料と買える投信で金融機関を選べ!


◎連載も充実!

◆目指せ!お金名人
◆おカネの本音!VOL.32
◆株入門マンガ恋する株式相場!
◆マンガどこから来てどこへ行くのか日本国


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報