希望者急増と裏腹に、現場は冷ややか
その解決策が「1日インターンシップ」だった
では、試しに新橋でも新宿でもどこでもいいのですが、サラリーマンを捕まえて、
「あなたの会社が学生を1週間、あなたの職場に行かせるので何でもいいから『就業体験』させるようですが」
と聞いてみましょう。ほぼ間違いなく、次のような反応が返ってきます。
「え?ただでさえ通常の仕事が忙しいのに、右も左も分からない学生を預かるの?1週間も?それ何の罰ゲーム?まさか会議室に閉じ込めておくわけにもいかないし、と言って得意先に連れて行くわけにもいかないしなあ。だって、学生でしょ?何言い出すか分からない連中だし。掃除とかコピー取りとか雑用じゃダメなの?え?そういうのじゃなくて企画とか商品開発とか学生が興味を持ちそうなことをやらせてくれ?それでちゃんと面倒を見ろ?うわー、うざい。そこまでやるなんて体が持つわけがない。どうしてもと言うなら、辞める!」
おやおや、えらく冷たい反応。でもこれがホンネです。
現場の社員が敬遠するようではインターンシップを導入したくても導入できません。実はインターンシップは3年生夏休みごろに実施することで企業名の宣伝にもなります。だからこそ、採用側は何とか実施したいという事情もあります。そこで採用担当者は嫌がる現場社員を説き伏せ、何とか少数の受け入れ枠を確保します。ところが、受け入れ枠があったとしてもそれで解決するわけではありません。
学生の間で「どうもインターンシップは行った方がいいらしい」と広まり、そうなると応募者数もうなぎのぼり。文部科学省の「実施状況調査」によると、2007年が6万5375人。2004年は5万2183人なので大幅に増加しています。しかも、正規科目にインターンシップを組み込んでいる大学などもあります。2005年には厚生労働省の調査研究会が「潜在的には参加学生数は12万人」と述べています。まして完全に定着した現在では12万人は軽く超えるでしょう。
ところが、どの企業も受け入れ枠は少数しか用意できません。当然ながら応募が殺到、選考の上で少数の学生は参加でき、多数の学生は参加できません。
すると、落ちた学生は落胆しますし、怒りもします。
「せっかく応募したのに落とすなんて」
「インターンシップで落ちるようだと、本選考でもどうせだめだろう…」
これでは、企業名の宣伝どころではありません。
ここで、2000年代前半に「現場の不満」「学生の不満」を一挙に解決したアイデアマンがいました。
「現場は1週間も受け入れできない、学生は参加したいのに参加できない。なら1日か2日にしてはどうか。学生にはビジネスゲームや現場社員の説明会、懇談会などで会社を知ってもらう。1日か2日、それも数時間程度なら現場の社員も文句ないし、多数の学生も受けいれることができる」
このアイデアマンがどなたかは、伝わっていませんが、実に名案です。
かくて1日インターンシップは2000年代後半、導入企業が相次ぎました。万事めでたし?そうでしょうか?
繰り返しますが、インターンシップは「就業体験」です。それが1週間どころかわずか1日で可能なのでしょうか?まず、無理でしょう。それなら「インターンシップ」という言い方自体に無理があるのですが…。
あるインターンシップサイトにはこうあります。
「あなたの将来のビジョンを明確にしていく支援をするものがインターンシップです。また、アメリカではさかんに行われており、ほとんどの学生が在学期間中に経験し、就職先選びやキャリアビジョンの構築に役立てています。」
その通りなんですが、アメリカでは長期間のインターンシップが主流、というか常識。それを1日で「将来のビジョン」が明確になるほど、日本の1日インターンシップは優れているのでしょうか?



