ある人は落ち込むでしょうし、ある人は外に出るのさえ怖くなるかもしれません。ある人はカラオケに行くでしょうし、ある人はヤケ酒を飲むかもしれません。あるいは、ある人は落ちた企業を逆恨みするかもしれませんし、またある人は就活のシステムに対して腹を立てるでしょう。
どれが正解でどれが不正解というわけではありません。
ただ、落ち込むだけでは前に進みませんし、それは逆恨みや腹立ちも同様です。
自分が不必要、と言われるのは何も就活学生に限りません。社会人でも同様です。そして、もっともはっきり言われるのがプロ野球選手です。
選手としてもっとも活躍できるのは20代後半から30代前半にかけて。30代に入ると、常に「若返り」論によって若手選手にレギュラーの座を奪われる危険にさらされます。そしてあるとき、若手選手の活躍によって、引退、あるいはトレードに出されるのです。
1986年のシーズンオフ、星野仙一が中日監督に就任しました。星野監督はそれまで中軸を打っていた大島康徳をトレードに出します。齢、36歳。中日一筋17年の代表的な選手ですが、36歳という年齢から言って選手生命の限界が近づいていました。それならトレードに出して、若手に活躍の場を。これが星野監督の発想です。
これに対して、大島選手は球団や星野監督を逆恨みしたのでしょうか?それともヤケ酒を飲んだのでしょうか?
彼は日本ハムがトレードの引受先となったとき、こんなセリフを残しています。
「球団が本当に必要だと思ったら、トレードには出さないよ。だけど相手球団も本当に必要だと思わなければ、トレードしてくれとはいわないよ」
これほど割り切った、それでいてトレードの本質を言い表したセリフはありません。中日が不要と言ったのは残念だった、でも日本ハムが引き受けた以上はそこで頑張るのが筋じゃないか。大島選手はそう考えたのでしょう。36歳で移籍したにもかかわらず日本ハムでは7年間も在籍。さらに3年目には2000本安打を達成しました。現役引退後は日本ハム監督、WBC打撃コーチなどを歴任、現在は野球評論家として活躍しています。
大島氏のコメントは、トレードだけにとどまらず、就活や社会人生活についても全く同じことが言える、私はそう考えます。
「人生には3つの坂がある。あんな坂、こんな坂、ま『さか』」
などと言います。
就活で失敗続きだと、落ち込まない学生はいません。仕事で失敗続きの社会人だって落ち込みます。
ですが、失敗が続くこととその人の価値が減じるかどうかは別問題。
大島氏のコメントを昔からよく言われる言葉に言い換えると、
「捨てる神あれば、拾う神あり」
落ち込むことがあっても、気楽に構えて行けばいいのではないでしょうか。
私も秋に本連載の書籍化『ルポ・なぜ9割は就活に疲れるのか』と大学関連の新書執筆にしばらくは専念します。と言って、いらんことを言う口が閉じるわけでもありません。読者の方はご安心を。それでは、長らくのご愛読、ありがとうございました。



