今回の「残業代ゼロ合意」への流れができる時も、政府側から働き掛けがあったという見方がある。3月末から事務局レベルで政府と調整が始まっていたことは、神津会長も認めている。
そのころ、働き方改革実現会議で、連合が求めた「罰則付きの残業時間規制」が決まり、それを盛り込んだ労働基準法改正案が国会に提出されることになった。
こうした中で、2年近くたなざらしのままの「高プロ」創設の労基法改正案と、「罰則付き残業規制」を入れた労基法改正案が「一本化」されそうだとの懸念が語られるようになったという。
「法案が一本化されたら対応が難しい。高プロは反対だが、残業時間の上限規制は導入したい。いまの状況では政府が一本化した法案を強行採決しようと思えば、やれる。それなら、高プロの修正を求めて、話し合いで取とれるものは取ろう」
逢見事務局長を中心に「高プロ容認」の現実路線の考えが強まったという。
だがもともと、罰則付きで長時間労働を抑えようという制度と、「残業代ゼロ」で長時間労働を助長しかねない制度を一緒に認めようというのは、水と油の話だった。
しかも国会審議すら始まっていない段階で「条件付き容認」に転じれば、組織内外の強い批判を浴びることは十分、予想できた。
連合の威信も傷つけることになったドタバタの混乱を招いた原因は、執行部の甘い見通しだった。
「どこかで妥協は必要かもしれないが、政府と、労働者の権利や利益を守る連合とは立場が違う。表で戦うポーズをとって、裏では妥協するならともかく、表も裏も政府寄りになったのでは、労働組合の存在価値がなくなる」と関係者の一人は吐き捨てる。
『責任論』くすぶる中、会長続投
「残業代ゼロ」は労政審で仕切り直し
一方で混乱があったとはいえ、連合内には土壇場での「決断」を評価する声もある。
27日の中央執行委員会終了後、連合北海道の会長は記者団に、「組織や現場で率直に意見をぶつけ合って反映する形で引き留めたのは、結果的には良かった」と語った。
「執行部の責任論」がくすぶる中で、8月1日、連合は、神津会長の続投(留任)と、「残業代ゼロ」容認を主導した逢見氏を会長代行にする人事を内定、立て直しを図る構えだ。
だが今回のドタバタを経て、連合に「芯」が通ったのかどうか。
札幌で会見があった翌日、塩崎恭久前厚生労働大臣は、高プロの導入と残業時間の上限規制の法案を一本化する方針を正式に表明。一本化や修正の中身は、今後、労働政策審議会で議論される。
神津会長は労政審での対応について、「(一本化される)法案全体を見て、連合としての考え方をまとめたい」と、賛否の明言を避けている。
労政審でどのような議論を展開するのか、支持率急降下で求心力に陰りが出始めた安倍政権との距離をどうするのか、連合にとって次の正念場となる。
(ダイヤモンド・オンライン編集部)



