写真:インバウンド,スーツケース写真はイメージです Photo:PIXTA

最近、東京・大阪などの都市部では中国語を耳にする機会が明らかに増えた。観光客として日本に来るだけでなく、日本で長期滞在し、移住する中国人が増えているのだ。その一方で、SNSでは「中国人は日本が嫌いなんじゃないのか」「なのに、なぜ移住してくるのか?」といった声もよく見かける。
実際、在留外国人は増え続けており、2025年末には約412万人と過去最多を更新した。そのうち中国人は約93万人と、国別で最多を占めている。しかし興味深いのは、日本にやってきて、暮らしてみた中国人の中に、今度は「住んでみると息苦しい」「自由がない」と感じて、日本を離れる人たちも出てきていることだ。日本は中国人にとって、どんな国に見えているのか。(日中福祉プランニング代表 王 青)

日本に移住した中国人が、別の国へ移り始めている?

 近年、日本へ移住する中国人が急増している。「潤日」という言葉が広がったことも、その流れを象徴している。背景にあったのは、中国政府によるゼロコロナ政策への反発だった。厳しい移動制限のなかで、「もっと自由な場所へ移りたい」と考える人が増え、日本はその有力な移住先のひとつになった。

 アメリカや欧州に比べて移住のハードルが低く、地理的にも近い。治安が良く、街が清潔で、空気もきれい。そうしたイメージもあって、富裕層から中間層まで幅広い層の中国人が日本を目指した。もともと旅行先として日本に好印象を持っていた人が多かったことも大きい。

 だが、実際に暮らし始めると、旅行中には見えなかった違和感に直面する人もいる。「日本に移住したのは本当に正解だったのか」と迷い始め、別の国へ移る選択をする人も出てきた。日本に憧れて移住したはずの人たちは、なぜ日本を離れようとしているのか。

 3月初旬、日本に8年間住んだ中国人男性が、家族で日本を離れ、カナダへ移住する決断をした理由をXに投稿した。「8年間日本に住み、なぜ私たち家族は日本から引き上げることを選んだのか」と題したその投稿は、中国語圏だけでなく日本でも大きな反響を呼んだ。

 投稿したのは、「老沙」というアカウント名の男性だ。彼は「日本を離れるのはビザの問題ではない。妻は日本人だ」と前置きしたうえで、こう書いた。

「多くの人に『日本はこんなに安全で便利なのに、なぜ離れるの?』と聞かれます。確かに日本には魅力的なところがたくさんありますし、8年間住んできて、日本が悪いと言いたいわけではありません。ただ、私たち家族にとっては、だんだん合わない部分が増えてきたと感じただけです。あくまで個人の体験として、正直な気持ちを共有したいと思います」

 彼の言葉は、日本社会のどこに違和感を覚えたのかを端的に表していた。