「QE3が死んだ」と考えるのは早計
米国の場合、次に重要な日程としては8月の末にワイオミング州ジャクソン・ホールで開催される経済シンポジウムでのバーナンキ議長の発言があります。
このジャクソン・ホールでのシンポジウムでは、過去に連邦準備制度理事会の重要な方針変更が打ち出されることが多かったため、注目されます。
先週金曜日の7月の非農業部門雇用者数の発表で、+16.3万人と予想を上回るいい数字が出たので「これでQE3が遠のいたのではないか?」という声も一部にはあります。

しかし過去の実績を見るとジャクソン・ホールでの会合の直前に発表された経済指標は、余り影響を与えていないことが指摘されています。
したがって今回の雇用統計で「QE3が死んだ」と結論付けるのは早計だと思います。
なお次回の連邦公開市場委員会は9月12日と13日です。
ドラギECB総裁は金利伝達メカニズムの機能不全に言及
先週、ECBのマリオ・ドラギ総裁は「ユーロを守るためには、できることは何でもやる」と発言したにもかかわらず国債買い入れプログラムの発表を見送りました。
このため「話が違う」と感じた投資家も多かったことと思います。
しかし欧州の場合、アメリカと違って新しい経済政策を打ち出そうとすれば、事前に根回しを必要とする関係部署(たとえばドイツのブンデスバンク)が多いのです。だから機動的に動けない面があります。投資家はその点を加味する必要があります。
ドラギ総裁は欧州財政危機問題の影響で、金利伝達(トランスファー)メカニズムが上手く作動しなくなっている点を指摘しました。これは重要なポイントです。
金利伝達メカニズムとは、中央銀行(この場合、ECB)が政策金利を利下げすれば、それに呼応するかたちで市中の長期金利も下がってこなければいけないという理論を指します。
ところが、下のスペインやイタリア国債の5年債金利のグラフに見られるように、投資家がそれらのマーケットに不安を抱いているときは、ちゃんと長期金利が下がってくれない現象が起きる場合があります。

それは言いかえれば中央銀行の利下げが「空回り」していることを意味します。
そのような状況では、ただ利下げするだけでは問題国の借入コストの低減はできません。
ECBが直接、市場でスペイン国債やイタリア国債を購入し、それらの価格を支える必要があるのは、そのためです。
このような問題点をドラギ総裁が明快に市場参加者に対して意思表示している以上、ECBはある程度具体的な長期金利のターゲットを想定して、金利水準の是正に遅かれ早かれ乗り出してくると考えるべきでしょう。
それは投資家のスタンスとして、ここで弱気になってはいけないことを意味します。



