2022年度の国公立大入試はどうなるのか

安田 2022年度入試ではいろいろな反動が出てくるはずです。共通テストは絶対に難しくなるといわれています。センター試験のときも、2年目は数学の平均点がぐっと下がった(数IIBは63.90から41.38に)影響で、国数英総合の平均点が407.92から348.59になっています(400点を超えたのは初回のみ)。だから共通テストでも難しくなるでしょう。そうなると、国公立大敬遠の動きにつながりますが、コロナ禍で地元志向が高まっていますから、どうなるかは不透明です。共通テストの平均点次第というところはありますね。

後藤 最初はたくさん受けてほしいし、成功したと言われたいから易しくするわけですね。さらにコロナ禍での授業の遅れなどへ対応もありました。こう考えると、2022年度の受験生は大変ですね。出題傾向は分かったのだからそれに向けて授業を変えられればいいんですが、新学習指導要領の先取り的な部分があるし、数学Iなどの共通テストの受験科目は履修済みで、今さら授業を変えられない。傾向が分かっても対策が難しいです。

安田 2022年入試の受験生は、高2だった2020年度にコロナ禍の直撃を受けています。受験対策だけでなく、オープンキャンパスにも行っていませんから、志望校の情報集めも大変です。総合型選抜や学校推薦型選抜を目指す受験生も、昨年はほぼ部活動などでは大会に出られませんでしたから、出願資格を大学がどうするのかにも注意が必要でしょう。

後藤 例えば物理は概念じゃないですか。概念は本を読んだだけでは分からない。これはある地方の進学校で起きた出来事ですが、物理と数学の模擬試験が終わった段階で、「できない」といって泣きだした子がいっぱいいた。理系のクラスでそれが起こった。それはそうですよね。

 コロナ禍で制約を受けた授業の中で、概念をきちんとつかめるような授業はできるわけがない。今、そのバックアップができているかどうかは大きいですよ。そこを丁寧にやった高校とやらなかった高校とで、理系に関しては2022年度の合格実績が変わってくるはずです。学習管理型の高校には履修範囲を終えるために2倍速の高速授業を展開したところもあるようですから概念を理解できなかった生徒は逆に追いつけなかったでしょう。このデジタル・トランスフォーメーション(DX)が叫ばれる時代に、理系志願者が減っちゃうのは困るんですよね。

 私大文系の中でも、共通テスト利用型で数学を課す大学はいくつもあります。でも、高校の進路指導の意識がまだ追いついていない。私大文系は3教科で勝負させる方針が強い。改めて理科や社会、数学をやれなんて言われても、受験生はちょっと大変だと思います。そろそろ私大文系専願3教科はやめたほうがいいですね。大学入学後に苦労すると思いますよ。既にそれなりの大学では入学後にデータサイエンスを学ばせるようになっていますしね。さらに卒業後の進路で苦労することになるでしょう。

安田 高2の時期にしっかり勉強していた子と、まだ1年以上あるからいいやと勉強しなかったぬるい子とでは差が出ますよね。2021年度の受験生でも休校期の過ごし方で入試結果に差が出たようです。個人だけでなく、学校として力を入れたところが伸びた可能性もあります。これは2022年度の受験生でも同じ傾向ではないでしょうか。

後藤 2021年度の受験生でも、休校期間で二極分化が起こっている。できる子は自分で勉強した。部活や学校行事に惑わされることなく勉強に専念できる。通学時間もないのだから。公立トップクラスの優秀な高校でも生徒の間で二極分化が生じたといいます。

安田 休校期間の3カ月ぐらいの差が後々響くわけですね。

後藤 ある高校生が、コロナが起きたときの自分の頑張りを評価してほしいと言っていました。学校推薦型や総合型でもそうですが、そこの差は結果として出てしまう。そして、今も緊急事態宣言やまん延防止措置が取られている地域がある。地域間で差が出るかもしれないですね。

 そして、まだあまり表には出ていないけれど、2021年度に募集定員割れする大学が増えています。これはこれからの少子化の進行によりさらに増えていきますよ。大学入試改革の完全実施といわれる2025年度入試の前年である2024年度まで18歳人口は減り続けます。

 志願者減を食い止めるためにどのような手を打ってくるか。その一方で、DXを標榜した社会では、数理・データサイエンス人材を求められていますが、その人材確保は高校までの教育が重要なんです。特に数学への抵抗感がないようにしてもらわないといけない。私立文系総合大学でも選抜試験で数学を課せないかと検討を始めた大学も出てきています。これは、18歳人口の減少への対応とは逆であり、受験生に負荷がかかる措置です。このあたりのバランスがどうなっていくのか。少し長い視点で見ていきたいところです。