共通テスト「数学IIB」がセンター試験的発想では対処困難な理由【大学入試2022】前日の事件を受けて、共通テスト会場は厳戒態勢に(東京大学駒場キャンパス/2022年1月16日)

前回は、第2回大学入学共通テストで出題された数学I・数学Aについて見た。今回は、数学II・数学Bについて考えてみたい、こちらも第1回に比べて大きく平均点が下がっており、受験生の悲鳴めいた怨嗟の声がSNS上を駆け巡った。なぜ受験生はこちらでも得点できなかったのか。その背景にある事情を、今回も大学入試と中学受験の双方に通じている石田浩一先生と一緒に解明していこう。(ダイヤモンド社教育情報)

数学IIBも平均点が大幅ダウン

――前回は、第2回大学入学共通テストの数学I・数学A(数学IA)について見ました。今回は、数学II・数学B(数学IIB)について考えてみたいと思います。まず、両者の結果について、どのようにお考えですか。

石田 数学IAは、大問4問で70分に対して、数学IIBは60分間で4つの大問を解きます。昨年の第1回は全体的にセンター試験的な問題も多く、何とかなった部分もありました。ところが今年は、会話文をはじめ、設問の理解に時間がかかる問題が増えたため難化したと思われます。

 計算に入るまでの過程が長く、これに慣れていないと難しかったでしょう。この点について現場の先生からは、「こんな問題は教科書に載っていない」という声も出ているようです。確かに教科書や問題集にあるのは、数学的に定式化された問題で、そこにたどり着くまでが問われるような問題はあまりありません。

 しかしながら、現状においても授業展開の工夫で対応することはできると思います。「これはこう解く」といった1つの解き方だけを覚えさせるような授業では対応できません。例えば、1つの問題について複数の解法を考えたり、背後にある数学的な事象を深く探ったりする授業が必要だったと思います。新しい入試に、教育現場が対応できていなかった場合、受験生は大変だったと思います。

――第2回の今年は、いわゆる「太郎さん・花子さん問題」の出題数も増えました。

石田 こうした会話文のある問題が昨年の1問から今年は3問に増えました。長い条件文の中から、必要な情報を読み出すことが求められる問題もあり、数学IAと同様に、数学IIBも共通テストの目指す方向性がよりはっきりと打ち出された出題となりました。

――数学IAは平均点が19.72点も落ち込みましたが、数学IIBも59.93点から43.06点へと16.87点ダウンしています。

石田 問題も5ページ増えています。旧来のセンター試験と似通った出題だった昨年と同様だと考えて、この新傾向に対応できなかった受験生には難しかったと思います。

――ここからは、第2回の数学IIBの問題を具体的に見ていきたいと思います。数学IAと同様、第1問と第2問は必答で、第3問から第5問のうち2問を選択する方式でした。