統合的・発展的に考える姿勢
――まずは、第1問から見ていきたいと思います。
石田 第1問の〔1〕は、平面図形と式、三角関数という複数の単元にまたがる問題でした。会話文の中で2通りの解法が提示され、まずそれぞれの解法の正しい手順が問われています。その上で計算して数値を出すのですが、2通りの解法のうちどちらを選ぶかの判断が必要になります。実は、三角関数による解法の方が計算量は少ないので、こちらを選べると解答時間を短縮できました。「定式化された問題が処理できるか」より「対象をどのように定式化するか」「その過程を比較考察できるか」といった点が問われています。普段から、複数の解法を常に考え、比較する姿勢を持っているか、が問われているといえます。
――いろいろな解き方を身に付けているかを問う設問なのですね。
石田 指数・対数関数を扱った第1問の〔2〕は、(1)と(2)が対数の定義の理解を問う基本問題です。しかし(3)からが問題で、与えられた太郎さんの考察を理解し、その方針に沿って考えることが求められています。自分で自然に考えた方法で答えを出すのではなく、他の人がどう考えたかを理解する必要があるのです。この太郎さんの考察の理解が、単に表面的に文面を読んでいるだけでは大変だった。自分の手元でグラフを書きながら理解する姿勢がないと難しいでしょう。読解力を試される問題です。
さらに(4)では、(3)の結果を具体的な問題に適用することが求められています。これもまた、問題を考察して得られた結果を「統合的・発展的に考え問題を解決する」という共通テスト数学の目指す方向性がよく表れた問題といえるでしょう。
――第2問の〔1〕は微分法ですね。
石田 ここでも、共通テストの目指す方向性がよく表れていたと思います。(1)は関数が表すグラフを選ぶもので、定性的な把握ができているかを問う問題でした。定量的なものではなく定性的なものを問う、という点は共通テストの特徴の1つです。定性的な問いは本質を理解していないと答えられません。この問題も基本問題なのですが、数式とグラフとを常に結び付けて理解するという姿勢が身に付いていないと戸惑ってしまいます。
(2)のポイントは、3次関数のグラフと直線が接するときには、連立したときの3次方程式に“重解”が現れるという見方ができているかにありました。「接線といったら微分だ」のように手法を表面的に暗記していたのでは対応できません。日常の演習などで単に答えを出すだけでなく、解法を振り返って深める姿勢を持っていないと、スムーズには解けなかったと思います。
(3)は、方程式の解の個数と定数との関係についての論理を問う問題です。数学Iで学ぶ必要条件・十分条件に関係する内容なのですが、この論理に関する理解は数学全体で常に問題となるものです。そういった点について日頃から意識できていないと、ここで手が止まってしまったでしょう。