構造変化と機能分化が鮮明となる「2030年の大学」新築された明治大和泉キャンパス(東京・杉並区)では、小さな階段教室など、ディスカッション可能なサイズの教室が多数設置されている 写真提供:後藤健夫

短期集中連載「2030年の大学入試」。4回目は、新型コロナ禍により“パンドラの箱”が開いたことで、大学の構造が変わり、2030年に向けて大学の機能分化が進んでいく様子を考えてみたい。グローバル型(G)とローカル型(L)に大学が分かれていくという議論がかつてあった。実際、「2:8の法則」に沿うように、やがて大学の機能が分化していくことになるだろう。(ダイヤモンド社教育情報)

コロナ禍が進めた構造変革

 前回は、これからの大学入試における「偏差値」について考えてみた。「偏差値」に依存して自らの進学先を選ぶことができた時代は、悩むことが少なく、ある意味幸せであった。「偏差値」に、入学できそうな大学の序列化がはっきりとしていたからである。

 3年目となる新型コロナ禍で大学のあり方が大きく変わろうとしている。さらに、産業構造の転換や国際情勢が、日本の大学に変革を求めている。5年、10年先から現在を振り返ると、この数年間が時代の変わり目だったことが改めて実感できるようになるはずだ。2030年に向けて、大学の姿はいかに変わっていくのだろうか。

 コロナ禍でキャンパスが閉鎖され、授業のオンライン化がいや応なしに導入された大学では、学生の学習環境を整えるために端末機器購入の補助金を支給したりした。携帯電話会社も、無料でパケット容量を拡大するなど対応を迫られた。授業も、動画配信されるようになった。特に大教室で講じられてきたような一方通行な授業は、ビデオ化してオンデマンドで視聴することもたやすい。

 こうして授業が動画配信となり、ビデオ会議システムによる少人数でのディスカッションなどが行われることで、学生たちは気が付いてしまった。単位を取得するため、わざわざ満員電車に長い時間揺られてキャンパスに行かなくても、一方的な講義は動画を倍速再生すれば、時間も短縮されて効率的となることに。“パンドラの箱”が開いたのだ。

 22年度に入ってからコロナ感染が落ち着き、大学での授業が再開されたが、感染予防で席間距離を保つため、教室定員の3分の1程度しか入室させられない。大学側は、小教室の授業を中教室へ、中教室の授業は大教室へと、教室のサイズ変更で対応した。しかし、従来、大教室で行われていた授業は代替の教室がなく、オンライン授業のままである。

 いま、学生の時間割には、オンライン授業とキャンパスでのリアルな対面授業とが混在している。大学側も、学内にオンラインで受講できる場所を確保したり、リアルの対面授業もオンライン配信をする“ハイフレックスの授業”をしたり、苦労が多い。ハイフレックスの授業とは、学生が授業の形態(オンラインか、リアルな対面か)を選べるような自由度の増したハイブリッド型の授業と考えていただければよい。

 これに加えて、就職活動における企業面接もオンライン化している。学内にオンラインで面接を受けられるベースを設ける必要も出てきた。こうしたさまざまな施設関連投資により、当初計画よりもこの数年の支出が増えている大学は少なくないようだ。

 さらに、ロシアのウクライナ侵攻にともなう燃料資源不足と円安による価格高騰は、光熱費の支出を倍増させている。使用しない教室は極力電気を消したり、熱効率の悪い昔の教室や大教室の利用を減らしたりと、大学としては従来の節電に加えて新たにできることはあまりないが、それでも努力しなければならない状況に置かれている。

 学費の値上げを検討せざるを得なくなっている大学もあるようだ。これは私立中高にも起こりうることであり、すでに保護者会でのお願いを始めたところもあると聞いている。