ゴミ山は宝の山。電気や雇用も生み出される

 しかし、ケソン市あるいはバランガイ・パヤタスはなぜこのような、環境破壊の元凶のような巨大なゴミ山を受け入れたのだろうか。

 相棒のジェーンの話によると、市はここから発生するメタンガスを利用して発電をしているそうで、地域住民の電気料金は無料だそうだ。また、このゴミ山のおかげで相当数の雇用が発生し、まさに宝の山であり、バランガイとしても多いにメリットがあるそうだ。

 ゴミ山の周囲の道路沿いはスコーター(貧民街)となっており、ゴミ拾いを専業とする人たちがゴミと一緒に暮らしている。彼らにとってはゴミは生きる糧だから、けっしてないがしろにはできないのだ。

斜面と道路の間に作られたスコーター(不法占拠)で人々は暮らす【撮影/志賀和民】
一見、住まいとゴミ置き場が区別できない【撮影/志賀和民】

 ゴミの投棄においても工学というものがあり、ちゃんと計画しておかないと将来に大いなる禍根を残す。それはメタンガスの発生と地下水の汚染だ。

 メタンガスは埋め立て後、長い間発生しつづけて火災を引き起こすと同時に、悪臭を放つ。さらにガスの発生により地盤が陥没する恐れもある。そのためにはガス抜きのパイプを埋め込んでおく必要があるそうだ。

有用ゴミの仮置き場も崩れそうだ【撮影/志賀和民】
数分おきにやってくるゴミ収集車で、山は見る見るうちに高くなっていく【撮影/志賀和民】

 また、ゴミを通り抜けた雨水は地下水として周辺の土壌を汚染する。そのためこの地下水を封じ込める対策が必要だ。ADBの話によると、このゴミ山はこれらの対策がなんらなされておらず、将来、さらに大きな環境問題を引き起こすことになるだろうとの話だった。

 そんなことはお構いなく、次から次へと車がやってきてゴミを投棄し続け、その山は日に日に高くなっていく。周辺の人はこんな環境とはいえ、ゴミがあってこそ暮らしていくための術があるわけで、けっしてここを離れようなどとは思わないようだ。

いずれここにも、大きなゴミの山が築かれるようとしている【撮影/志賀和民】
こんな劣悪な環境の中でも子ども達は明るい【撮影/志賀和民】
「ゴミの街」という以外に形容のしようのない街だった【撮影/志賀和民】

(文・撮影/志賀和民)

著者紹介:志賀和民(しが・かずたみ)
東京出身。東北大学大学院修了後、日揮(株)入社。シンガポールにをかわきりに海外勤務を歴任。1989年日揮関連会社社長に就任しフィリピンに移住。2007年4月PASCO(サロン・デ・パスコ)取締役。
 

 

TOP