元・フィリピン退職庁(PRA)ジャパンデスクで、現在は「退職者のためのなんでも相談所」を運営する、フィリピン在住20年以上の志賀さんが、自身が新型コロナに感染し、後遺症に悩まされた現実と、ワクチン接種の状況をレポートします。
同居する大家族の女主人から家庭内感染が広がった
私はいまフィリピン人の大家族といっしょに暮らしているのだが、3月20日過ぎ、マニラ首都圏の感染が急拡大したおり、女主人のジェーンから陽性を告げられた。
我が家では唯一彼女が買い物などの外出可能で、他の者はこの1年、クリニック以外は外出できない、まさに自宅軟禁状態だった。
直後、私は具合が悪くなり、10歳の彼女の長男は高熱、2人のメイドのうち1人は入院するはめになった。
検査の結果、国家警察幹部の夫が陰性だった他は全員陽性。ただし幼児2人とメイドの1人は無症状だった。長男の高熱は1日で下がり、ジェーンもほとんど無症状だったが、市の指示にしたがって1週間ほど部屋にこもって自主隔離をした。

問題は私で、今年で74歳になるが、幸いなことに熱はないが、トイレに行くだけで息が切れて、まさに肺炎の症状だ。嗅覚や味覚は正常だが、食欲がなく、上向きでベッドに横たわっているしか術がない。
往診してくれた医者からは、重症化したら入院するよう告げられたが、マニラの主要病院のベッドは満杯で数十人の順番待ちだ。なんとか入院できたとしても保険制度がお粗末なフィリピンでは、症状によって入院費は数十万円から数百万円の自己負担で、コロナよりもかえって恐ろしい。

幸い3週間程度で症状も治まってきて、検査も陰性となった。しかし、家の階段の上り下りも息が切れて容易ではなく、ほとんど体力がなくなっている。いわゆるコロナ後遺症で、この状態が回復するには数カ月かかるそうだ。
さらに2週間養生して、1日1~2時間なら在宅執務が可能になったものの、血栓ができやすくなっていて、脳梗塞や心筋梗塞などの致命傷になりかねないので、デスクワークは最長1時間に限定するよういわれている。いまは無理しないで、回復を待つことにしている。

しかし、まさか1年もの間、自宅隔離生活をしていた私自身がコロナに罹病するとは思いもよらなかった。庶民を無差別に攻撃して健康のみならず生活の糧まで、何もかもを奪い去るコロナの恐ろしさを痛感した。
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