フィリピン 2020年6月2日

【緊急レポート】新型コロナウイルス感染で2カ月以上続く
フィリピン・マニラ首都圏封鎖(Lock Down)【前編】

元・フィリピン退職庁(PRA)ジャパンデスクで、現在は「退職者のためのなんでも相談所」を運営する、フィリピン在住20年以上の志賀さんが、3月から続くマニラ首都圏封鎖の状況をレポートします。

 2020年3月15日、新型コロナウイルスの感染防止策として、マニラ首都圏、ルソン島、そしてほとんどフィリピン全域の封鎖(Lock Down)がスタートした。このようなことは前代未聞の出来事で、世界中がパニックに陥っており、聖域だと思っていた南国フィリピンも例外ではなかった。

 マニラ首都圏をはじめフィリピン全土の空路、陸路、海路による移動の禁止、学級閉鎖はもとより行政機関の機能停止、民間事務所、食料などの必需品以外の生産工場の停止、イベント・娯楽施設の閉鎖、食料・医薬品以外の商店の営業禁止、一般人(特に60歳以上と21歳未満)の外出禁止など、徹底したもので、庶民はひたすら耐えるしかなかった。

 さらにすべての外国人の入国についても、フィリピン人の配偶者、外国政府関係者、航空便のクルー以外は禁止され、入国者はすべて14日間隔離するという、フィリピンそのものの完璧な封鎖といえるものだ。

 結局、封鎖は5月31日までの2ヵ月半におよび6月1日から緩和されたものの、引き続き日本の非常事態宣言程度の規制が継続し、さらに外国人の入国も引き続き制限される。完全に解除されるのは大分先のようで、経済社会生活の停滞と庶民の生活の不便は計り知れないものがある。

 外国人の退職ビザのお手伝いをするという商売柄、外国人の入国制限、マニラ首都圏の封鎖、行政機関の機能停止という状況は、私にとって、まさに死活問題である。当面、すべての活動が凍結されることになってしまったわけだが、今日に至る経緯を振り返ってみた。

2月早々、退職ビザ取得申請に「コロナ陰性」証明書が必要に

 1月12日(日)に発生したマニラ郊外の観光地タガイタイのタアル火山噴火の記事が下火になって、新型コロナウイルスの記事が一面をにぎわせはじめた矢先の2月3日(月)のこと。日本人の退職ビザの申請をしている最中に、PRA(フィリピン退職庁)のスタッフがざわついて、「PRAトップからの指示で、すべてのビザ申請者はクワランティン(検疫所)から『新型コロナウイルス感染に陰性である』という証明書をもらってこなければ申請を受け付けない」というのだ。

 そして翌日、別のアメリカ人申請者とともに検疫所に向おうとしていると、PRAのスタッフから電話があって、新たに通達が出て今度は、「中国、香港、マカオ経由でフィリピンに来た申請者についてのみ、申請拒否の対象とする」と告げられた。
 
 ひと安心と、ほっと胸をなでおろした。まさに朝令暮改も甚だしいところだが、新型コロナウイルスの世界的感染状況に対して、国家の中枢がどう対処していいのかわからず混乱しているためであろう。

中国人の退職ビザ申請者が途絶えて閑古鳥が鳴いているPRA(フィリピン退職庁)の受付 【撮影/志賀和民】

 中国、香港、マカオ経由での入国は制限され、さらに台湾が含まれるとか含まれないとか、当方としては中国からの申請者が激減して、返ってスムーズに手続きが進んでありがたい、などと気楽に構えていた。 

 日本ではクルーズ船がどうとか、北海道で感染者が急増とか、話題になっていたが、フィリピンでは帰国者の数人に感染者が出たくらいで、所詮インフルエンザと同類の新型コロナも南国では自然消滅するものと高を括っていた。

 ところが、韓国、イタリア、イランなどで感染者が急増しているという状況で、世界的に警戒心が強まり、3月になって当方の業務にも多大なる影響を及ぼすことになった。 

3月に入ると事態は急展開。朝令暮改の通達が次々と

 3月9日(月)の週から事態があわただしく展開していった。

 10日(火)から週末まで、学校閉鎖で、子どもたちが学校に行かない。その少し前に、日本でも全国的に学級閉鎖となっていたが、何でマニラでと違和感を覚えた。さらに子どもたちはショッピングモールなどを訪れてはいけないというお達しがでているという。

 この週末にはマニラ首都圏が封鎖されるかもしれないという噂を耳にして、息子一家は嫁の実家(マニラ北方100km)に避難した。一方、私の仕事の相棒のフィリピン人は水と食料の買い出しに走った。

 12日(木)未明、大統領の「マニラ首都圏封鎖」の発令にいたった。これを知ったのは翌朝のフィリピン大使館からの情報で、すべての行政機関は機能停止するというただならぬ状況だった。

 3月13日(金)早朝、SRRV(退職ビザ)申請を直前に控えていた退職者の一家とPRAに赴いた。前日の通達によると、申請は郵送で受け付けるというものだったが、「この通達は大統領の封鎖発令前に発行されたもので、変更されると思うが、どう変更されるかわからない」というので、当方としてもどうしたものか思案のしようもない。

 退職者一家にとっては、すみやかに申請できるのか、あるいは申請まで封鎖期限の1カ月も待たなければならないのか、という切実なものだ。とりあえず、いざという時のために預かっていたパスポートを退職者に返却しておいた。

3月13日、PRAは一切の業務を停止、帰国できない申請者も

 その日の内にPRAの営業部長からメールが入った。内容は「PRAは一切の業務を停止する」という悲劇的なものだった。これにより件の退職者一家はすみやかに帰国するという決断を下した。

 3月4日(水)に、封鎖直前に滑り込みセーフで申請したご家族がいた。当初は、うまくやったと思っていたのだが、封鎖、そしてPRAの業務停止により申請書類も棚上げとなってしまい、いつビザが発効されるか見当もつかない。

 そのため、一時帰国を希望したが、パスポートをPRAに預けているので、帰国できない。しかもPRAは閉鎖中なので、パスポートを取り返すこともできない。その結果、PRAの機能回復まで、3カ月近い足止めを食らうという羽目に陥ってしまった。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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