株価上昇によるキャピタルゲイン(値上がり益)と、配当や優待などのインカムゲイン――株式投資で利益を得ると言えば、通常この2つだが、実は保有中の株で利益を得る3つめの方法がある。それが「貸株サービス」だ。
保有中の株式を貸し出して、最大で5%の金利を受け取れる!
「貸株サービス」は、簡単に言うと投資家が保有している株式を証券会社に貸し出して、その代わりに所定の貸株金利を受け取れるというサービスだ。証券会社側は、投資家から貸し出された株を機関投資家が参加する「貸株市場」に貸し出すことで金利を得る。
しかし、「そんなサービスは知らない」という人も少なくないかもしれない。それもそのはず、このサービスを提供しているネット証券は、SBI証券、カブドットコム証券、マネックス証券の3社だけ(※1)だからだ。
※1 松井証券には「預株制度」という似たサービスがあるが、こちらは松井証券に貸し出した株に逆日歩が発生した場合にのみ「預株料」が受け取れるというもの。上記3社の貸株サービスとは内容が異なるため、今回の記事では取り上げていない。
では、具体的にはどんな銘柄を貸し出せて、どの程度の金利を受け取れるのだろうか。サービスの概要をまとめてみた。
| <貸株サービスのあるネット証券> | |||
| 証券会社名 | SBI証券 | カブドットコム証券 | マネックス証券 |
| 主な貸株金利 | 0.1%、0.4%、0.5%、プレミアム金利(最大5.0%) | 0.1%、0.5%、 ボーナス銘柄(最大5.0%) |
0.1%、 ボーナス金利 (最大0.5%) |
| 主な貸株金利 | 3745銘柄 (貸出非対象銘柄を除く国内金融商品取引所上場銘柄 |
約3500銘柄 (自社が指定する銘柄) |
一部非対象銘柄を除く 全銘柄 |
| 信用取引口座 との併用 |
○ | ○ | × |
| 株主優待自動取得 サービス |
あり | あり |
あり |
| 備考 | FX株券担保サービス、証券担保ローン利用の場合は貸株サービスを利用できない |
信用保証金、先物オプション証拠金、FX証拠金に差し入れている銘柄は貸株サービスを利用できない | 配当金の「自動取得サービス」を利用した場合は、「通常の貸株金利-0.05%」を適用 |
| ※12月18日現在 | |||
表を見てわかる通り、3社ともほとんどの銘柄で利用可能だ。金利は最低でも0.1%。また、各社とも金利が上乗せになる銘柄があり、最大金利はSBI証券とカブドットコム証券ではなんと5%! どの銘柄にいくらの貸株金利がつくのかは、各社のサイトで確認できる(ログイン前でも一部の銘柄については公表されている)。
たとえば、1株1000円の銘柄を100株保有している場合、株価が動かないとしたら1年間に受け取れる金利は下記の通り。
●金利0.1%の場合 1000円×100株×0.1%=100円
●金利0.5%の場合 1000円×100株×0.5%=500円
●金利5%の場合 1000円×100株×5%=5000円
ちなみに、メガバンクの普通預金金利は0.02%、定期預金1年物は0.025%(12月18日現在)だ。比べるまでもないが、最も低い貸株金利0.1%であっても、定期預金の4倍の金利になる。5%の銘柄なら、定期預金金利の200倍だ!しかも、保有中の株なので、新たな現金も必要ナシ。これは使わないともったいない。
貸株利用中でも売却は自由、優待や配当も受け取れる!
株を貸し出していると、売却する前に何らかの手続きがいるのではと思う人もいるだろう。しかし、そこは特に気にする必要なく、通常と同じように売却注文を出して、自由に売却できる。
一方、株主優待や配当を受け取るには、少々手続きが必要だ。
配当の場合は、証券会社に株を貸し出したままでも、配当そのものは受け取れないが配当相当額が証券会社から総合口座に入金される。しかし、株主優待の場合は、名義が証券会社のままでは受け取れない。
そこで、優待銘柄については、3社とも権利日前になると一時的に貸株サービスから外して名義をもとに戻すという「優待自動取得サービス」を提供している。この方法なら、優待ももらえるし、優待と配当の権利日が同じであれば通常通り配当も受け取れる。また、マネックス証券では配当に関しても権利日前に一時的に貸株から外す「配当金自動取得サービス」を別途用意している。
さらに、3社とも基本的には「貸し出す」「貸し出さない」を銘柄ごとに設定できるので、確実に優待を獲得したい、あるいは必ず株主総会に出て議決権を行使したいという銘柄に関しては、貸株サービスから外しておくことも可能だ。
SBI証券とカブドットコム証券は、信用取引との併用も可能!
信用取引口座を開設している場合の対応は、証券会社によって異なる。
マネックス証券は信用取引との併用は不可、カブドットコム証券は以前から併用可能だった。そして、これまで併用不可だったSBI証券は、今年12月14日から信用取引との併用が可能になり、貸株サービスの使い勝手が向上した。
信用取引と併用する場合には、信用保証金として使われている株式(代用有価証券)については、貸株に出すことはできない。そのため、SBI証券もカブドットコム証券も、銘柄ごとに代用有価証券にするか、貸株に出すかを選べるようになっている。ただし、貸株に出すと信用保証金が不足する場合は、貸株サービスを利用できない。
なお、名義を書き換えるという貸株サービスの仕組み上、3社ともNISA口座で保有する株式については貸株は利用できない。
デメリット・リスクはあるか? しっかり理解しておこう!
持っている株を預けるだけでお金がもらえて、自由に売却可能で、優待や配当ももらえる。いいことづくめのようだが、貸株サービスにデメリットやリスクは何もないのだろうか。
デメリットと言えるものとしては、優待の「長期保有優遇」や急な新設・変更には弱いことが挙げられる。
前述の通り、株主優待銘柄については権利確定の時期だけ自動的に貸株を解除するサービスを利用できる。ただ、「同じ株主番号で○期以上保有」といった条件がある場合は、株主優待自動取得サービスを利用しても条件を満たすことはできない。長期保有優遇制度のある優待銘柄の場合は、最初から貸株に出さないほうが無難だ。
また、株主優待自動取得サービスのもとになっている優待情報は1カ月ごとに見直されているが、急な新設や変更には対応できない可能性があり、新設銘柄については初回の優待をもらえないこともあり得る。
リスクは、貸出先のネット証券が破たんした場合。貸株サービスは無担保の「消費貸借契約」のため、破たんすると貸し出した株券を取り戻せない可能性もある。もちろん、大手ネット証券が突然破たんするようなことはないが、リスクはしっかり理解しておきたい。
最後に税金だが、貸株サービスで得た金利と配当金相当額は雑所得となり、他の所得と合算して課税される。合計所得額によっては確定申告が必要になる場合もあるので、こちらもよく覚えておこう。
貸株サービスを利用すれば、売るに売れない「塩漬け株」でも利益を生み出せる。他社口座の人でも「株式移管」によって貸株サービスの利用が可能になるので、塩漬け株に限らず長期保有している株がある人は、一度検討してみる価値はあるかもしれない。



