インハウス化によって
自社内の広告知見を増やしたい大手企業

 米国広告業界団体ANAが行った調査では、インハウスエージェンシー(=自社内のマーケティング企画・実行部門)を設置していると回答した企業は過半数に上る。自社内でメディアバイイング(広告枠の買い付け)を含む広告運用まで行う企業は少数であるが、運用・管理能力の装備や、その能力の拡大トレンドは顕著だ。P&Gなどのグローバル企業もインハウスエージェンシーを設置しているし、広告会社やマーケティングエージェンシーが広告主に協力してインハウスエージェンシーを組織化しているケースもある。

 当然ながら、広告費をたくさん使う広告主ほど“よりよい成果”を生み出したいと思っているし、自社内に知見をストックしたいと考えているのである。

 よりよい成果の定義は広告主によって異なる。共通しているのは、よい成果を生み出すために「ブランド施策(=認知・ファン育成)」と、「売上施策(=販売促進)」の2つがバランスよく組み合わされ、実行・運用体制が整っている戦略が必要、ということである(図2)

【図2】 ブランド施策と売上施策の関係

 普遍的に、戦略の実行可否を判断するのは広告主である。広告主の戦略パートナーとしてマーケティングエージェンシーを中心に置き、これをサポートしながら、具体的な戦術の実行・運用をするとスマートかもしれない。また、データが戦術を導き、戦略を担うとすれば、少なくとも、広告主はマーケティングエージェンシーと同じ目線で議論できる運用・管理能力が必要と言えるだろう。その意味でもインハウス化のトレンドは妥当と言えそうだ。

 つまり、広告主にとって広告枠の売買手数料を取るだけの“広告代理店”の存在は、もはや不要と言っても過言でないだろう。あなたが広告主企業のリーダーだとして、もし、広告の発注管理しかしていない宣伝部や事業部があったとすれば、体制を見直すチャンスかもしれない。

 もし、広告代理店に誰にも取って代わることができない仕事があるなら、タスクフォースでプロジェクトチームを作ってみるのもいい。その広告代理店にしか扱うことができない広告枠の買い付け、定量データをヒントにしつつもターゲットユーザーの心のスイッチを押すことができそうなクリエイティブを制作する役割に特化した参画要請である。

 広告主とパートナーが同じ目線で議論をしながら、定量評価が可能なゴールを目指すチームをつくることができれば、慣習や接待などの馴れ合い関係ではなく、関わる人も企業も成長することができる、本質的なマーケティングが可能なはずだ。

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ブランドができていないのに売上施策を行うと失敗する

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