中学受験のための塾の選ぶ際のポイント

 中学受験で合格を勝ち取るためには、塾選びが重要です。塾選びでは、以下のポイントを確認してください。

志望校に合った授業や指導を受けられる塾か

 塾で提供されているコースやカリキュラムは多種多様で、志望校のレベルに合った塾を選ばないと、適切な指導を受けることができません。また、中学受験は高校受験と異なり、学校ごとに独自の問題が出題されるため、志望校に合った対策を受けられる塾を選ぶようにしましょう。

難関私立中学校を志望する場合

 難関私立中学校は、小学校の教科書レベルを超えた問題が出題されることが多く、問題数も多いため、ハイレベルな学力が求められます。学校ごとに基本問題と応用問題の割合が異なっていたり、記述問題の出題量が異なっていたりするのも特徴です。

 そのため、難関私立中学校を志望する場合は、予習型の塾で教科書内容を早期に終わらせ、応用問題や志望校別対策に充てる時間を十分に確保できる塾を選びましょう。また、学校ごとに出題傾向が異なることから、志望校別のコースがある塾を選ぶことも必須です。

中堅私立中学校を志望する場合

 中堅私立中学校を志望する場合でも、教科書レベルの学習だけでは太刀打ちできないことが多いので注意が必要です。「中堅」といっても、中学受験の偏差値50は、高校受験の偏差値60に匹敵する学力が必要です。

 よって、学校の復習だけではなく、志望校のレベルに合わせた対策をしてくれる塾を選ぶことが大切です。一方で、難関校に特化した塾を選んでしまうと、「難易度が高すぎる」「学習進度が早すぎる」という問題が起こってしまい、十分に学習内容を理解することができないので注意してください。

公立中高一貫校を志望する場合

 公立中高一貫校で出題される適性検査は、教科横断型の問題が出されるのが特徴です。私立中学で出題される教科別の問題とは性質が異なるため、各教科で身につけた知識を生かしつつ、思考力や表現力を総合的に発揮することが求められます。

 そのため、公立中高一貫校を受験する場合は、適性検査に特化した対策をしてもらえる塾を選ぶようにしてください。

授業形式|集団授業か、個別指導か、自立学習か

 塾には集団授業塾、個別指導塾、自立学習塾の3つのパターンがあります。どのタイプの塾にもメリットとデメリットがあるので、それぞれの特徴をよく理解して塾を選びましょう。

集団授業のメリット・デメリット

 集団授業には、志望校合格のためのカリキュラムが整っていることが多く、仲間と切磋琢磨しながら学習できるのがメリットです。また、大手の集団授業塾では志望校別の対策講座も充実しているため、難関校や公立中高一貫校を志望する生徒も安心です。

 一方で、わからないところがあってもカリキュラムはどんどん進んでしまいますし、クラス分けで下位のクラスに落ちると、モチベーションが下がってしまう恐れがあるなどのデメリットもあります。宿題量が多い塾もあり、「宿題をこなすだけで手いっぱいで、復習の時間を確保することができない」ということもあるので注意しましょう。

個別指導のメリット・デメリット

 個別指導のメリットは、生徒の学力や志望校に応じた指導を受けられるところです。オーダーメイドカリキュラムを提供している塾が多く、苦手な教科はじっくりと学習し、得意な教科はどんどん学習を進めることが可能です。また、家庭学習のサポートもしてくれるため、保護者の負担が比較的少ないのもメリットです。

 その反面、個々のペースに合わせることで、集団授業塾のようにカリキュラムが進まない恐れがあります。特に、復習型の塾や基礎学力の向上をねらいとする塾では、苦手克服や基礎的な学習に時間がかかって、志望校対策の時間を十分に確保できない可能性があります。

自立学習のメリット・デメリット

 自立学習型の塾は、生徒が「学び方」を身につけることができるのがメリットです。小学生のうちに学び方をきちんと身につけることで、中学・高校での学習にも役立ちます。また、学習計画や自習内容の管理をしてくれるので、何をどれだけやればよいかがわかりやすく、比較的授業料が安いところが多いのもメリットです。

 一方で、生徒の学習状況により、学習効果が左右されるというデメリットがあります。基本的には、参考書や映像授業を見て学習内容を理解できる程度の学力が必要ですし、わからないことは進んで質問できる性格であることも大切です。また、宿題をきちんとやる、外部模試を受けるなど、前向きに学習する意欲も重要です。

サポート|質問対応や授業振替などの制度は充実しているか

 塾のサポート体制が整っていると、安心して子どもを通わせることができます。

 質問対応ができるかを確認する際には、「授業前に宿題に関する質問ができるか」「授業後に講師に質問できるか」「自習室でチューターに質問できるか」など、どのタイミングで誰に質問できるのかを確認してください。わからないことをそのままにしない体制が整っていることが大切です。

 また、授業を欠席した場合の対応についても確認しておきましょう。集団授業塾では基本的に振替授業はありませんが、映像授業でフォローしてくれる場合があります。個別指導塾は無料で振替をしてくれることが多いので、「前日までの連絡に限る」などの適用条件をチェックしておきましょう。

 その他にも、定期的な面談、入退室がわかる管理システム、自習室の利用、モチベーション管理など、多様なサポートが受けられる塾だと安心です。

環境|授業やクラスの雰囲気、学習環境は合っているか

 授業、クラス、講師、校舎・教室の雰囲気など、学習環境が良好であることも大切です。クラス全体に進んで学ぼうという雰囲気があると、子どももモチベーションが上がりやすくなります。特に個別指導塾では講師との相性が大切ですので、生徒の学習状況や性格をよく理解して、適切なサポートをしてくれる講師を選ぶようにしましょう。

合格実績|志望中学への合格実績は豊富か

 合格実績も塾選びの大切な指標になります。志望中学への合格実績が多いと、その学校への合格に導くノウハウが整っている塾だと解釈できます。合格実績を見る場合、合格率を調べることも大切です。どれくらいの偏差値帯の生徒が何人受験して、合格率はどの程度だったのかがわかると、子どもが志望校に合格できるかどうかの目安になります。

 ただし、難関校への合格実績が多い塾では、中堅校に特化した対策授業を提供していないことがあるので注意しましょう。自分の学力と志望校に合わせて、目標とする偏差値帯の合格実績が豊富であることが重要です。

立地|通いやすい場所や安全な場所にあるか

 塾の立地も塾選びでは大切な要素です。通塾に時間がかかると子どもの負担になるので、通いやすい場所にある塾を探すのがおすすめです。子どもが一人で通塾する場合は、塾までの道が安全であることを確認してください。車での送迎を想定している場合は、塾や塾の周辺に駐車場があるところを選ぶとよいでしょう。

 大手進学塾では志望校対策の授業を、通常授業とは別の校舎で行うこともあります。どの校舎でどの志望校対策を行っているのかを確認しておくと安心です。

中学受験の大手四大塾とは

 中学受験塾には、「四大塾」と呼ばれる大手塾があります。難関校への合格実績が豊富なこと、志望校別のカリキュラムがあることなどから、人気を博しています。

SAPIX

 SAPIXは、「御三家」と呼ばれる最難関中学への合格実績が圧倒的に豊富な塾です。テキスト(デイリーサピックス、デイリーサポート)を当日に配布する独特のスタイルで授業を行い、事前に予習ができない仕組みになっています。授業の内容もハイレベルでハイスピードなため、初見の問題にも対応できる思考力がないと、授業についていくことすら難しいことがあります。また、テキストが毎回配布されるSAPIXには通年のテキストがなく、教材の管理が大変という声もよく聞きます。

 クラスは、塾内テストの結果による学力別の編成になっています。クラス替えが頻繁に行われるため、競争心の強い生徒にとっては適した環境だと言えます。一方、カリキュラムは上位クラスと下位クラスで変わらないので、勉強が苦手な生徒は授業についていくのもままならない状況になりかねません。

 SAPIXの授業についていくために、個別指導塾や家庭教師を併用している生徒もいます。また、SAPIXは料金が比較的高いので、経済的な負担が大きくなる可能性もあります。

 「復習を徹底させる」という指導方針で、家庭学習用の課題が多くなっているため塾以外でもストイックに勉強に向かう姿勢が求められます。

日能研

 日能研は、大手四大塾の中で最大規模の塾で、全国に約160の教室を展開しています。首都圏には、日能研が運営する「本部系」と、日能研関東が運営する「関東系」の2つの日能研が存在します。それぞれ運営法人が異なるため、受講できるコースや授業の質も異なります。関東系はいわゆる中学受験塾で、宿題や副教材もしっかりとあります。一方の本部系は自主性を大切にする塾で、強制的な宿題はありませんが、「栄冠への道」という家庭学習用の教材が用意されています。

 日能研は、中堅校から難関校までを目指す幅広いレベルの生徒に対応しています。大手四大塾の中では中堅校の合格実績が多いため、中堅校を志望している生徒に向いている塾だと言えます。カリキュラムの進度は他の塾に比べるとゆっくりなので、丁寧な授業が期待できるでしょう。また、「シカクいアタマをマルくする。」のキャッチコピーが示しているように、知識詰め込み型ではなく、思考力重視の指導をしているのもポイントです。出題意図を捉えた入試分析で、生徒の考える力を育てます。

 日能研の料金は、大手四大塾の中では比較的低価格になっています。

四谷大塚

 四谷大塚は、早稲田アカデミー準拠のカリキュラムやテキスト「予習シリーズ」に定評がある塾です。「予習シリーズ」は受験に必要な内容を体系的に学べるテキストで、四谷大塚は大手四大塾の中で唯一、予習主義の塾になっています。自宅でしっかりと予習をしてから塾の授業を受けることで、学習が定着しやすくなります。自宅で予習する際には映像教材「予習ナビ」を使うこともできるので、テキストを読んで理解するのが苦手な生徒はこちらを活用しています。

 四谷大塚は入塾テストの合格率が約50%で、約半数しか入塾できません。しかし、合格するまで何度でもチャレンジできるように配慮されています。学習ペースは比較的ゆっくりで、予習と復習を着実に行いやすくなっています。また、幅広いレベルの受験対策をしてくれるので、中堅校や難関校を目指す生徒はもちろん、地道に実力を伸ばしていきたい生徒にも向いている塾だと言えます。

 大手四大塾の中では料金も比較的低価格になっています。

早稲田アカデミー

 早稲田アカデミーは、早稲田・慶應の附属中への合格実績が多い塾です。いわゆる体育会系の「熱血指導」でお馴染みで、好みが別れる塾と言えるかもしれません。

 早稲田アカデミーは、面倒見のよさに定評があります。例えば、叱咤激励することでモチベーションを上げてくれたり、宿題をしてこない生徒を自習室に残して勉強させたり、保護者にも定期的に電話連絡があったりと、成績を上げるために細かく対応してくれます。

 また、「小6 NN志望校別コース(NN特訓)」にも定評があります。NN特訓では、各中学の入試を分析している講師がテキストの作成や授業を一貫して担当してくれるため、志望校に特化した質の高い授業が受けられます。「NN」は「何がなんでも」の略称で、ここからも早稲田アカデミーの熱血さが伝わってきます。

 早稲田アカデミーは四谷大塚の準拠塾であり、四谷大塚のカリキュラムとテキスト(「予習シリーズ」)を使用して学習を進めるのも特徴です。「予習シリーズ」の他にも、早稲田アカデミーオリジナルの「練成問題集」「マスターテキスト」なども併用することで、基礎の習得から難関校対策まで、幅広く対策することができます。また、「予習シリーズ」を使っていますが、早稲田アカデミーは復習主義の塾です。

中学受験の大手塾以外を検討したほうがいい人とは

学力の基礎が身についていない生徒

 大手塾では授業がハイペースで進むので、学力の基礎が身についていないと授業についていけません。また、苦手な教科がある生徒も、大手塾では復習の時間が十分に取れないことがあるため、大手塾以外の学習塾でしっかりと基礎を身につけるのがよいでしょう。そもそも学力の基礎が身についていない生徒は、大手塾の入塾テストに合格できない可能性があります。大手塾に入るにあたっては、しっかりと基礎を身につけておくことが大切です。

競争することでモチベーションが落ちる生徒

 大手塾は、塾内テストの結果でクラスが上がったり下がったりします。競争心をあおってモチベーションが上がる生徒はよいのですが、このような環境にストレスを感じたり、クラスが下がることでやる気をなくしてしまうような生徒は、クラス替えのない塾を検討するとよいでしょう。

高望みをしない生徒

 偏差値50前後の中学を志望校にしていて、今の実力で十分合格できそうなら、わざわざ大手塾に通う必要はありません。受験校選びでは、偏差値の高さだけでなく、「その中学で何を学びたいのか」というビジョンをしっかりと持つことが大切です。もし今の実力で十分合格できそうな中学を目指すなら、大手塾はオーバースペックになるかもしれません。

他の習い事と両立したい生徒

 学習塾以外にも、夢や目標に向かって習い事を続けている生徒もいます。例えば、「ピアニストになりたいからピアノを継続する」「どうしても好きなサッカーだけは週1で続けたい」など、子どもの気持ちに配慮した選択が必要なこともあります。大手塾は通塾回数や宿題の量も多く、他の習い事との両立が難しくなるため、このような生徒は大手塾以外の塾を検討するのがよいでしょう。

自宅での学習管理が難しい生徒

 大手塾は宿題の量が多く、宿題以外にも苦手分野の対策が必要なことがあるため、自宅での学習が欠かせません。そのため、勉強を自己管理できない生徒や、保護者による家庭学習のサポートができない場合は、大手塾は合わないかもしれません。面倒見のよい大手塾もありますが、宿題や苦手克服をすべて任せきりにすることはできないので、自宅での学習管理が難しい生徒は大手塾以外の塾を検討しましょう。

近くに大手塾がない生徒

 自宅の周辺に大手塾がない場合も、大手塾以外の選択を検討しましょう。電車やバスを乗り継いで大手塾に通う方法もありますが、通塾に時間がかかると学習効率が悪くなり、子どもの負担も大きくなってしまいます。「近くの学習塾のほうが合っていた」ということもあるので、まずは通いやすい範囲にある学習塾を見つけてみてください。

塾選びでやりがちな失敗

大手だからという理由で選ぶ

 大手塾はネームバリューがあり、合格実績もあるので安心感があります。しかし、実際に授業を受ける校舎の講師の質や、合格実績が優れているとは限らないので注意が必要です。大手塾でも、どのような講師にどのような指導を受けられるのか確認することが大切です。

指導スタイルが合わない

 指導スタイルが合わないと、モチベーションが上がりませんし成績も伸び悩みます。集団塾と個人指導、対面とオンライン、熱血な講師と冷静な講師、予習型と復習型など、自分の学力や性格に合った指導スタイルの塾を選ぶようにしましょう。

体験授業を受けずに決める

 体験授業を受けることで、塾の雰囲気、授業の様子、講師との相性などを実際に確認することができます。体験授業を受けずに決めてしまうと「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねないので注意しましょう。

学習進度が合わない

 学習進度が合わないと、「授業についていけない」「難関校対策が間に合わない」という事態になることがあります。例えば、集団塾では2月が新年度への切り替わりのタイミングであることが多いので、そのタイミングで塾に入ると進度を調整しやすくなります。また、志望校に合わせたコース・カリキュラムを選ぶのも重要です。

料金を十分に確認しない

 塾では、季節講習、志望校対策講座、特別講座(苦手克服講座)、日曜特訓などさまざまな講座が開催されます。すべてを受講する必要はないものの、「受講しないと周りに置いていかれるのではないか」という不安感から全部受講したくなる人も多く、そうなると多額の料金がかかることになります。入塾する前に、卒塾までにかかるトータルの費用の概算を出してもらうようにしましょう。

通塾に時間がかかる

 どんなによい塾でも、通塾に時間がかかると勉強が非効率的になります。また、生徒にとっても塾が遠いとそれだけで負担になります。できるだけ通いやすい範囲にある塾を選ぶようにしましょう。

サポート体制を確認しない

 授業やカリキュラム、料金について確認するのと同じように、サポート体制もきちんと確認しておきましょう。振替授業の有無、自習室の利用、質問対応、定期的な面談やカウンセリング、進路相談、入退塾システムなど、安心して通わせられるようなサポート体制が整っている塾を選ぶことが大切です。

塾を比較しない

 1つの塾の体験授業だけを受けて即決してしまうのは失敗の元です。入りたい塾が決まっていたとしても、いくつかの塾の体験授業や相談を受けてみることをおすすめします。複数の塾を比較することで、それぞれの塾のよさが見えてきますので、納得して塾を選ぶことができます。

中学受験塾の選び方・流れ

志望校や通塾の目的を明確にする

 まずは、志望校をどこにするか、塾には何のために通うのかをはっきりさせましょう。最難関校を目指すならSAPIXや早稲田アカデミーが第一候補になりますが、中堅校が第一志望ならそれらはオーバースペックになることがあります。

 個別指導塾を選ぶ場合は、苦手克服のために通うのか、個別指導塾だけで難関校を目指すのかにより、塾の選び方も変わってきます。また、通塾の目的をはっきりさせておくことも大切です。「できるだけ塾で学習を完結できるような、面倒見のよい塾に通わせたい」「家庭教師にサポートをお願いするからハイレベルな塾に通わせたい」など、塾に何を求めるのがベストなのかを考えておきましょう。

塾の情報を集める

 資料請求をしたりホームページをチェックしたりして、塾の情報を集めましょう。校舎は通塾可能な範囲にあるのか、指導形態はどうなっているのか、料金はどれくらいなのか、質問対応などのサポートはあるのかなど、さまざまな項目についてチェックしてください。

 特に保護者の送迎なしで子どもが通塾するなら、自宅から近い場所にある塾を選ぶのが安全です。また、自宅での学習サポートが難しい場合は、自習室が利用できて、講師やチューターに質問できる環境が整っている塾を選ぶのがおすすめです。

無料体験授業を受ける

 通わせたい塾をいくつか絞れたら、それぞれの塾の無料体験授業を受けてみましょう。塾の特徴や雰囲気の違いを知るためには、いくつかの体験授業を受けてみるのがおすすめです。

 塾の雰囲気はよいか、先生の対応は丁寧か、授業のレベルについていけそうかなど、親も子どもも納得できる塾を探しましょう。

学習相談(面談)を受ける

 無料体験授業や入塾テストと併せて、学習相談を受けられる塾が多くあります。学習相談では、塾の特徴や料金、講師、指導方針、コースの案内などを説明してもらえるので、今の学力でどのレベルの中学を目指せるのか、年間でどれくらいの料金がかかるのか、入塾後はどのクラスでスタートするのかなど、気になることは具体的に質問してみてください。

塾のメリット・デメリットを比較して入塾先を決める

 無料体験授業や学習相談を受けて情報収集ができたら、それぞれの塾のメリット・デメリットを比較してみましょう。

 例えば教室の雰囲気、志望校別対策、合格実績、料金、通塾スケジュール、自習室の利用、質問対応、家庭でのサポートが必要な量など、比較する項目と優先順位を決めて、それぞれの塾を比較するのがおすすめです。親子でしっかりと話し合って、納得した上で塾を選ぶことが大切です。

中学受験塾の料金・費用相場

 中学受験塾の料金は、週当たりの授業回数、受講する季節講習・志望校別講座の種類、教材費、テスト代などによって、総額が数十万円単位で違ってきます。 

 特に小6生になると授業料が高くなる上に、志望校別講座や日曜特訓などの特別講座も増えるため、総額が高くなりがちです。本格的に受験勉強が始まると「講座を取らない」という選択はしづらいため、しっかりと予算を見通しておくことが大切です。

集団塾の相場

 集団塾の相場は、小6生の場合100万円から140万円です。これに加え、志望校別対策講座や勉強合宿、模試代が別途かかることもあり、総額で150万円を超えることもあります。

 大手四大塾の中では比較的良心的な価格帯の日能研でも、年間で80万円程度かかります。ただし、これに加えて志望校別対策講座や季節講習などの費用がかかるため、100万円程度は見積もっておく必要があります。また、大手塾の授業についていくために個別指導塾や家庭教師を併用する家庭もあり、そうなると年額で250万円以上かかることもあります。

個別指導塾の相場

 個別指導塾の料金は、週当たりのコマ数、指導形態(1対1か1対2〜か)、講師(学生かプロか)、カリキュラム(難関校対策か苦手克服か)などによって変わります。小6生が週1コマ(月4コマ)の授業を受ける場合、10,000円〜15,000円程度が相場です。プロ講師の授業を1対2で受けた場合、年間で60万円(週1コマ)〜140万円(週3回)程度かかります。

 難関校対策のために1対1の大手個別指導塾(TOMAS、名門会など)に通う場合、「大手集団塾+家庭教師」の代替になり得ます。一方で授業料は高めで、大手個別指導塾だけで4教科の対策をすると、季節講習なども含めて200万円以上かかることも珍しくありません。

中学受験のための塾に関するよくある質問

 中学受験についてよくある質問をまとめました。

集団授業塾と個別指導塾のどちらがおすすめ?

 どちらにもメリット・デメリットがあるため、上記のポイントに加えて、子どもの学力や性格に合わせて選ぶことが大切です。集団授業塾も個別指導塾もそれぞれに特徴がありますので、体験授業を受けたり、入塾説明会に参加したりして、子どもに合った塾を選びましょう。

中学受験のために、いつ頃から塾に通うべき?

 大手進学塾では、小4(多くは小3の2月)から受験用のカリキュラムが始まります。したがって、小4がひとつのタイミングだと言えます。もちろん、小5や小6で通い始める生徒もいますが、入塾が遅くなると難関中学に入るのが難しくなるかもしれません。いずれにしても、塾に通い始める時期に「早すぎる」ということはありませんので、中学受験をするなら早期に入塾を検討するのがよいでしょう。

入塾前に体験授業を受けるべき?

 体験授業には必ず行くべきです。体験授業を受けることで塾の雰囲気がわかりますし、カリキュラムや料金の詳細を教えてもらうことができます。一度入塾すると、塾を変えるのはなかなか難しいものです。いくつかの塾の体験授業を受け、子どもが行きたいと思えて、保護者も安心して任せられるような塾を選ぶようにしてください。

入塾テストは難しいの? 無理しても上位クラスに入るべき?

 学校のテストと入塾テストでは、入塾テストのほうが難易度が高いのが一般的です。なぜなら、出題範囲が広く、教科書よりもレベルの高い問題を扱っていることが多いからです。

 ただし、入塾テストは現在の学習状況を把握するために行うものなので、満点を取らなければいけないわけではありません。学校で習ったことが十分に身についていれば、入塾できる可能性があります。

 上位クラスに入るべきかどうかは、志望校によって変わります。何としても難関校を目指すなら、上位クラスに入るべきです。上位クラスには、同じ目標を持ったレベルの高いライバルが集まります。切磋琢磨しながら学習するので、志望校合格により近づけるはずです。また集団授業塾では、志望校対策の授業が取れるかどうかも成績に左右されますので、上位クラスに入ることが必須です。

 実力相応の学校を目指すなら、無理して上位クラスに入る必要はありません。しかし、多くの子どもは上位クラスを目指して学習に励みますので、上位クラスを目指さないからといって気を緩めないことも大切です。

中学受験に向けて、塾には週何回くらい通うもの?

 4教科受験をするなら、週3回が塾に通う目安(高学年の場合)です。ただし、休日に「月例テスト」「志望校対策講座」などが入ることがあるので、週4回になることもあります。また、通塾日以外にも自宅で宿題をしたり、過去問を解いたりするため、通塾日数以上にハードな生活を送ることになります。

 もちろん、受験科目が少なければ通塾回数も少なくなりますし、同じような出題傾向の学校を受験すれば効率よく学習できますので、こうした受験戦略が大事になります。

大手四大塾を検討しているけど、どこがいいの?

 それぞれに特徴があるので、子どもの学力や性格、志望校との相性、家庭のサポート力などを踏まえて検討することが大切です。

 SAPIXは、御三家をはじめとする最難関校を目指す生徒の第一候補になる塾です。授業はハイレベル・ハイスピードで宿題の量も多いので、学習を自己管理でき、親のサポートも十分にできる家庭に向いています。

 日能研は、中堅校から上位校を目指す生徒に合った塾です。基礎をきちんと指導してもらえるので、地道に学力を伸ばしていきたい生徒に向いています。一方、本部系の日能研は自主性を重んじるため、親のサポートがないと学力が伸び悩む可能性があります。

 四谷大塚は提携塾も多く、幅広いレベルの生徒に対応しています。

 早稲田アカデミーは、体育会系の指導スタイルで難関校を目指すのが特徴です。講師の檄により、やる気を喚起することができるタイプの生徒に向いています。

塾が合わないと感じたら転塾すべき?

 転塾をするべきかどうかは、目的やタイミングを見極めることが重要です。

 カリキュラムがゆっくりの塾からカリキュラムが速い塾に転塾する場合、学習の漏れが出てくる恐れがあるので注意しましょう。例えば、4年生や5年生の2月は大手塾で新しいカリキュラムが始まる時期なので、転塾しやすいタイミングです。

 また、「授業についていけない」という理由で転塾を検討しているなら、志望校を変更するか、個別指導塾と併用するかも含めて検討が必要です。

 転塾先で授業スタイルの違いに戸惑い、授業についていけないということにもなりかねないので注意が必要です。「講師との相性が合わない」「塾の雰囲気に馴染めない」などが理由の場合は、転塾しても思い通りの結果になるとは限りません。いずれの理由で転塾を検討する場合でも、事前に体験授業や学習相談を受けて、納得してから転塾するようにしましょう。

塾代が高すぎるのだけど、費用を抑える方法はある?

 費用を抑える方法として、受講する科目を絞る、季節講習や特別講座の受講は最小限にする、オンライン塾や通信教育で代用する、自治体の補助制度を利用するなどの方法が考えられます。しかし、費用を抑えた結果、志望校に合格できなくては意味がありませんので、バランスを見極めることが重要です。

塾に通っても成績がなかなか伸びないのはなぜ?

 どの生徒も努力をしているので、そう簡単に偏差値は上がりません。授業や宿題への取り組み方、モチベーション、親子の関わり方、塾との相性などを見直して、効果的に学習できる環境を整えてあげることが大切です。

家庭学習の時間はどう確保したらいいの?

 家庭学習の時間を確保するためには、スケジュール管理が重要です。まずは1日のスケジュールを見える化し、家庭学習をルーティン化することが有効です。例えば、朝学習で漢字と計算を30分、塾から帰宅後はすぐにその日の復習を1時間など、毎日同じスケジュールで行動できるようにしましょう。

 また、通塾の電車・バス内、入浴中、就寝前など、スキマ時間を活用して暗記系の学習をするのも効果的です。時間の確保と同時に、効率よく学習する方法も考えてみましょう。

まとめ|中学受験におすすめの塾

 中学受験で志望校に合格するためには、塾選びが非常に重要です。本記事で紹介した塾の特徴や塾選びのポイントを参考に、子どもの学力や性格、志望校に合った塾を選ぶようにしましょう。

 ほとんどの塾では無料の体験授業が受けられます。複数の塾の体験授業を受けてから、親子で納得した上で塾を決めるようにしてください。

監修:鈴木孝一氏のワンポイントアドバイス

 中学受験といえば、SAPIXや日能研のような集団塾を思い浮かべる方が多いかと思います。しかし集団塾だけで満足いく結果が得られるのは、上位10%の成績上位の子だけです。

 最初はほとんどの中学受験生が集団塾に入塾すると思いますが、成績が低迷してきた場合は個別指導塾へ転塾したり併用することで、より成績向上が見込める子が多いのが現実です。

 苦手科目を上手くフォローしてくれたり、失われた自信を取り戻させてくれる良い先生を見つけましょう。