中学受験のための塾の選ぶ際のポイント

 中学受験で合格を勝ち取るためには、塾選びが重要です。塾選びでは、以下のポイントを確認してください。

志望校に合った授業や指導を受けられる塾か

 塾で提供されているコースやカリキュラムは多種多様で、志望校のレベルに合った塾を選ばないと、適切な指導を受けることができません。また、中学受験は高校受験と異なり、学校ごとに独自の問題が出題されるため、志望校に合った対策を受けられる塾を選ぶようにしましょう。

難関私立中学校を志望する場合

 難関私立中学校は、小学校の教科書レベルを超えた問題が出題されることが多く、問題数も多いため、ハイレベルな学力が求められます。学校ごとに基本問題と応用問題の割合が異なっていたり、記述問題の出題量が異なっていたりするのも特徴です。

 そのため、難関私立中学校を志望する場合は、予習型の塾で教科書内容を早期に終わらせ、応用問題や志望校別対策に充てる時間を十分に確保できる塾を選びましょう。また、学校ごとに出題傾向が異なることから、志望校別のコースがある塾を選ぶことも必須です。

中堅私立中学校を志望する場合

 中堅私立中学校を志望する場合でも、教科書レベルの学習だけでは太刀打ちできないことが多いので注意が必要です。「中堅」といっても、中学受験の偏差値50は、高校受験の偏差値60に匹敵する学力が必要です。

 よって、学校の復習だけではなく、志望校のレベルに合わせた対策をしてくれる塾を選ぶことが大切です。一方で、難関校に特化した塾を選んでしまうと、「難易度が高すぎる」「学習進度が早すぎる」という問題が起こってしまい、十分に学習内容を理解することができないので注意してください。

公立中高一貫校を志望する場合

 公立中高一貫校で出題される適性検査は、教科横断型の問題が出されるのが特徴です。私立中学で出題される教科別の問題とは性質が異なるため、各教科で身につけた知識を生かしつつ、思考力や表現力を総合的に発揮することが求められます。

 そのため、公立中高一貫校を受験する場合は、適性検査に特化した対策をしてもらえる塾を選ぶようにしてください。

授業形式|集団授業か、個別指導か、自立学習か

 塾には集団授業塾、個別指導塾、自立学習塾の3つのパターンがあります。どのタイプの塾にもメリットとデメリットがあるので、それぞれの特徴をよく理解して塾を選びましょう。

集団授業のメリット・デメリット

 集団授業には、志望校合格のためのカリキュラムが整っていることが多く、仲間と切磋琢磨しながら学習できるのがメリットです。また、大手の集団授業塾では志望校別の対策講座も充実しているため、難関校や公立中高一貫校を志望する生徒も安心です。

 一方で、わからないところがあってもカリキュラムはどんどん進んでしまいますし、クラス分けで下位のクラスに落ちると、モチベーションが下がってしまう恐れがあるなどのデメリットもあります。宿題量が多い塾もあり、「宿題をこなすだけで手いっぱいで、復習の時間を確保することができない」ということもあるので注意しましょう。

個別指導のメリット・デメリット

 個別指導のメリットは、生徒の学力や志望校に応じた指導を受けられるところです。オーダーメイドカリキュラムを提供している塾が多く、苦手な教科はじっくりと学習し、得意な教科はどんどん学習を進めることが可能です。また、家庭学習のサポートもしてくれるため、保護者の負担が比較的少ないのもメリットです。

 その反面、個々のペースに合わせることで、集団授業塾のようにカリキュラムが進まない恐れがあります。特に、復習型の塾や基礎学力の向上をねらいとする塾では、苦手克服や基礎的な学習に時間がかかって、志望校対策の時間を十分に確保できない可能性があります。

自立学習のメリット・デメリット

 自立学習型の塾は、生徒が「学び方」を身につけることができるのがメリットです。小学生のうちに学び方をきちんと身につけることで、中学・高校での学習にも役立ちます。また、学習計画や自習内容の管理をしてくれるので、何をどれだけやればよいかがわかりやすく、比較的授業料が安いところが多いのもメリットです。

 一方で、生徒の学習状況により、学習効果が左右されるというデメリットがあります。基本的には、参考書や映像授業を見て学習内容を理解できる程度の学力が必要ですし、わからないことは進んで質問できる性格であることも大切です。また、宿題をきちんとやる、外部模試を受けるなど、前向きに学習する意欲も重要です。

サポート|質問対応や授業振替などの制度は充実しているか

 塾のサポート体制が整っていると、安心して子どもを通わせることができます。

 質問対応ができるかを確認する際には、「授業前に宿題に関する質問ができるか」「授業後に講師に質問できるか」「自習室でチューターに質問できるか」など、どのタイミングで誰に質問できるのかを確認してください。わからないことをそのままにしない体制が整っていることが大切です。

 また、授業を欠席した場合の対応についても確認しておきましょう。集団授業塾では基本的に振替授業はありませんが、映像授業でフォローしてくれる場合があります。個別指導塾は無料で振替をしてくれることが多いので、「前日までの連絡に限る」などの適用条件をチェックしておきましょう。

 その他にも、定期的な面談、入退室がわかる管理システム、自習室の利用、モチベーション管理など、多様なサポートが受けられる塾だと安心です。

環境|授業やクラスの雰囲気、学習環境は合っているか

 授業、クラス、講師、校舎・教室の雰囲気など、学習環境が良好であることも大切です。クラス全体に進んで学ぼうという雰囲気があると、子どももモチベーションが上がりやすくなります。特に個別指導塾では講師との相性が大切ですので、生徒の学習状況や性格をよく理解して、適切なサポートをしてくれる講師を選ぶようにしましょう。

合格実績|志望中学への合格実績は豊富か

 合格実績も塾選びの大切な指標になります。志望中学への合格実績が多いと、その学校への合格に導くノウハウが整っている塾だと解釈できます。合格実績を見る場合、合格率を調べることも大切です。どれくらいの偏差値帯の生徒が何人受験して、合格率はどの程度だったのかがわかると、子どもが志望校に合格できるかどうかの目安になります。

 ただし、難関校への合格実績が多い塾では、中堅校に特化した対策授業を提供していないことがあるので注意しましょう。自分の学力と志望校に合わせて、目標とする偏差値帯の合格実績が豊富であることが重要です。

立地|通いやすい場所や安全な場所にあるか

 塾の立地も塾選びでは大切な要素です。通塾に時間がかかると子どもの負担になるので、通いやすい場所にある塾を探すのがおすすめです。子どもが一人で通塾する場合は、塾までの道が安全であることを確認してください。車での送迎を想定している場合は、塾や塾の周辺に駐車場があるところを選ぶとよいでしょう。

 大手進学塾では志望校対策の授業を、通常授業とは別の校舎で行うこともあります。どの校舎でどの志望校対策を行っているのかを確認しておくと安心です。

中学受験のための塾に関するよくある質問

 中学受験についてよくある質問をまとめました。

集団授業塾と個別指導塾のどちらがおすすめ?

 どちらにもメリット・デメリットがあるため、上記のポイントに加えて、子どもの学力や性格に合わせて選ぶことが大切です。集団授業塾も個別指導塾もそれぞれに特徴がありますので、体験授業を受けたり、入塾説明会に参加したりして、子どもに合った塾を選びましょう。

中学受験のために、いつ頃から塾に通うべき?

 大手進学塾では、小4(多くは小3の2月)から受験用のカリキュラムが始まります。したがって、小4がひとつのタイミングだと言えます。もちろん、小5や小6で通い始める生徒もいますが、入塾が遅くなると難関中学に入るのが難しくなるかもしれません。いずれにしても、塾に通い始める時期に「早すぎる」ということはありませんので、中学受験をするなら早期に入塾を検討するのがよいでしょう。

入塾前に体験授業を受けるべき?

 体験授業には必ず行くべきです。体験授業を受けることで塾の雰囲気がわかりますし、カリキュラムや料金の詳細を教えてもらうことができます。一度入塾すると、塾を変えるのはなかなか難しいものです。いくつかの塾の体験授業を受け、子どもが行きたいと思えて、保護者も安心して任せられるような塾を選ぶようにしてください。

入塾テストは難しいの? 無理しても上位クラスに入るべき?

 学校のテストと入塾テストでは、入塾テストのほうが難易度が高いのが一般的です。なぜなら、出題範囲が広く、教科書よりもレベルの高い問題を扱っていることが多いからです。

 ただし、入塾テストは現在の学習状況を把握するために行うものなので、満点を取らなければいけないわけではありません。学校で習ったことが十分に身についていれば、入塾できる可能性があります。

 上位クラスに入るべきかどうかは、志望校によって変わります。何としても難関校を目指すなら、上位クラスに入るべきです。上位クラスには、同じ目標を持ったレベルの高いライバルが集まります。切磋琢磨しながら学習するので、志望校合格により近づけるはずです。また集団授業塾では、志望校対策の授業が取れるかどうかも成績に左右されますので、上位クラスに入ることが必須です。

 実力相応の学校を目指すなら、無理して上位クラスに入る必要はありません。しかし、多くの子どもは上位クラスを目指して学習に励みますので、上位クラスを目指さないからといって気を緩めないことも大切です。

中学受験に向けて、塾には週何回くらい通うもの?

 4教科受験をするなら、週3回が塾に通う目安(高学年の場合)です。ただし、休日に「月例テスト」「志望校対策講座」などが入ることがあるので、週4回になることもあります。また、通塾日以外にも自宅で宿題をしたり、過去問を解いたりするため、通塾日数以上にハードな生活を送ることになります。

 もちろん、受験科目が少なければ通塾回数も少なくなりますし、同じような出題傾向の学校を受験すれば効率よく学習できますので、こうした受験戦略が大事になります。

まとめ|中学受験におすすめの塾

 中学受験で志望校に合格するためには、塾選びが非常に重要です。本記事で紹介した塾の特徴や塾選びのポイントを参考に、子どもの学力や性格、志望校に合った塾を選ぶようにしましょう。

 ほとんどの塾では無料の体験授業が受けられます。複数の塾の体験授業を受けてから、親子で納得した上で塾を決めるようにしてください。

監修:鈴木孝一氏のワンポイントアドバイス

 中学受験といえば、SAPIXや日能研のような集団塾を思い浮かべる方が多いかと思います。しかし集団塾だけで満足いく結果が得られるのは、上位10%の成績上位の子だけです。

 最初はほとんどの中学受験生が集団塾に入塾すると思いますが、成績が低迷してきた場合は個別指導塾へ転塾したり併用することで、より成績向上が見込める子が多いのが現実です。

 苦手科目を上手くフォローしてくれたり、失われた自信を取り戻させてくれる良い先生を見つけましょう。