解決策は、大きくするか少なくするか
授業中は「授業に関係ない物を机の上には載せない」ことを徹底する文化が学校にはあります。ところが、授業に必要な物すら机上に載せきれないような場合、どのように対応したらいいのでしょうか。
解決策はいくつか考えられます。まず、机を大きくすること。先ほど触れたように、新しく導入される机の天板は2割以上広くなっています。問題は教室にそれが収まりきるかにあります。
前文部科学相の萩生田光一氏は、小学校での35人学級を打ち出しました。単純に1つのクラスの人数を減らせば対応はできます。ただ、既存の教室を利用している中高では、そう簡単にはいきません。中学になると部活も忙しくなり学校に持ち込む荷物も多くなりますし、体も大きくなっているので、どうしても圧迫感があります。それに、そのような少人数での教育を現実に行っている学校はそれほど多くはありません。
新しく校舎を建築できるような私立校であれば教室の児童生徒1人当たりの面積を考えて対応することもできますが、多くの学校にとっての解決策となるのは、机の上に載せる物を少なくすることです。教科書をデジタル化して、情報端末だけを載せるようにすることも解決策の一つです。
教員が電子黒板やプロジェクターを使って授業を行う例は、ちらほら見られるようになってきました。それでも、生徒と情報機器を介して双方向でやりとりできている学校はまだ少ないです。デジタル化された教科書や資料集はほんの一部でしか配布されていない状況ですから、残念ながら「少なくする」対応策では一般化まではほど遠いといえます。
学校の校舎は遠目にもすぐに分かります。規格化されているからです。教室の南側は窓、北側は廊下、西側に教壇と黒板が配置されるので、教員は東側に座る児童生徒に語りかけるわけです。
高度成長期から半世紀を経て、当時建てられた校舎が老朽化しています。耐震改修でブレース(筋交い)を入れて補強、なんとか冷房も入れて使用していますが、いずれ限界が訪れます。一方で、少子化に伴い小中学校の統廃合が進んでいます。公立高校も例外ではありません。
ここ数年の間に新築された私立中高一貫校の校舎は、海城にしても開成にしても、規格化された校舎・教室とはだいぶ内容が異なっています。これからの教育に合致することを考えているからです。
東京五輪大会関連の建築ラッシュのあおりで、どの学校も建築費の高騰に悩まされました。キャンパス再開発の工期を見直さざるを得ない大学もありましたし、私立中高でも校舎の建て替えを最近終えたところ、これから取り掛かるところが増えています。