2022年度入試を巡る状況
――令和3年度大学入学共通テストの志願者数は53万5245人で、受験率は90.45%でした。2回目となる2022年1月に実施される令和4年度は出願が10月7日に締め切られました。志願者数は53万367人、前年比で1%ほどの減少となっています。
後藤 18歳人口が前年比で約2万人、率にして同2%の減少ですから必然的に減少するわけです。
安田 初めての共通テストとなった前回(2021年)は、新型コロナ対応で1月に本試験を2回実施して、追試験・再試験もありました。ところが、後藤さんおすすめの2回目の本試験はほとんど受験者がいませんでしたね。
後藤 高校の進路指導の素人化ですね。共通テスト利用型や国公立大をメインにする生徒のことを考えれば共通テストで高得点が必要です。共通テストになって出題傾向が変わるのだからそれを知って受験すれば精神的なゆとりもできますし、確実に有利になります。
現に業者模試の出題予想が外れてうまく得点できなかった受験生もいたわけです。高校の事務作業が煩雑になることを理由に生徒の志望に合わせて出願できなかったのはまったく生徒に寄り添っていないですね。生徒の志望を第一に考えられない指導は素人です。
共通テストに出願しても受験しなかった人がほぼ1割いました。国公立大全体では3.2%の受験生減です。これは共通テストの出願システムの問題が大きいですね。出願後に、総合型選抜や学校推薦型の選抜試験があるので、受験生は共通テストに出願して保険をかけておかないといけないです。これは大学入試全体のシステム設計の課題ですから、無駄な出費を抑えられるように文部科学省にいち早く対処してもらいたいところです。
安田 私立大は戦後最大の落ち込みとなる前年比12%減でした。コロナ禍の影響が大きく、大都市圏の大規模大学での定員厳格化や受験生の地元志向もあって、私大受験者が激減しています。私大の半分が定員割れという事態も前代未聞でした。
それでも、「4月から対面授業を再開します」と事前に発表していた大学の志願者は堅調でしたから、受験生が何を求めていたのかは明確だと思います。こういうところが、2021年度入試の特徴だったかと思います。
後藤 前年度に続いて、今年度も学校推薦型選抜や総合型選抜(旧AO)の入試に挑む受験生は多いようですね。私大の場合、1人の受験生が併願先としていくつも受けるので、実際の頭数以上に受験者数の減少は大きく出ます。
安田 数値は現時点では分かりませんが、各大学ともどんどん取っている印象です。
後藤 推薦型や総合型の受験者数が増えてきたことで、すっかり大学入試の意味合いが変わってきました。年内に合格を勝ち取ることが優先で、2月からの一般選抜入試は、さながら敗者復活戦のようになってきましたね。昔から指定校推薦で校内選抜に漏れた生徒にとっては敗者復活戦でしたが、ますますその色合いが強くなってきました。
安田 明治大で7割、早稲田大でも6割程度が一般選抜で、残りは付属・系属校からの内部推薦や学校推薦型、総合型といった一般選抜以外の入試で取っています。これだけ割合が増えてくると、一般選抜だけではリスクが大きくなりますね。これからは国公立大でも非一般選抜入試の比重が高まってくると思います。
――国立大学協会は、21年度をめどに30%を非一般選抜入試で、という目標を立てていましたが、平均すると20%にも届かず終わりました。3月に公表された「大学入試のあり方に関する検討会議」では、引き続きその数値を高めるよう努力するようにと記されていました。
安田 東京大だけは推薦枠が100人ですが、30%まではなかなかいかなくても、いずれ300人程度まで増やすのではと言われています。
後藤 東京大の一般選抜入試(募集人員2960人)の志願倍率は3.07倍です。そこから二次試験に向けて、共通テストでの第一段階の選抜、つまり足切りがあります。
これに対して、1校あたりの応募基準を緩和した学校推薦型選抜入試(募集人員100人)では、21年度の志願倍率が2.67倍となり、それまで募集人員の7割程度だった合格者合計が92人と初めて9割を超えました。
安田 2022年度から「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」に変わりますが、ここの時間で学ぶことが、国公立大学の推薦の要件にマッチします。これで受かる人が増えた。都立など公立高校でも学校推薦型の推薦要件を満たしやすくなってきたと思います。