センター試験からの大きな転換
――第2回大学入学共通テストの数学が終わった直後から、SNS上では「隣の女子受験生が泣きだした」「問題用紙を破っている人がいる」といった悲痛な書き込みが相次ぎました。なぜこのような事態になってしまったとお考えですか。
石田 2021年の第1回共通テストは,大学入試センター試験の問題からの急激な変更をある程度避けたのか、旧来の勉強法でもある程度対処できるものでした。
ところが22年の第2回は、センター試験風の数学からの決別を宣言したかのような出題となりました。これまでの試行調査(プレテスト)問題で示されていた、共通テストが目指す方向性が明確に表れた問題だったことが、こうした“難しさ”の要因だったと思います。
――どのように異なっていたのでしょうか。
石田 従来のセンター試験では、「定式化された問題を正確に速く解く」ことで対策がある程度可能でした(内容をよく分析すると実はそうではないのですが、そうであるかのように思われていた、というのが本当のところだと思います)。それに対して今回の共通テストでは、「いかにして定式化された問題にたどり着くか」が主として問われていました。
この点は,以前から文部科学省下での高大接続に関する議論の場で繰り返し表明されてきたことで、その延長上に第2回の出題はあるといえます。教育の現場が、こうした転換に対応しきれていなかったことが、過去最低レベルの平均点となってしまった主要な原因ではないかと私は考えています。
――新しい学習指導要領にも掲げられた方向への転換ですね。
石田 具体的な問題から数学的事象を抽出することや、数学的活動を振り返って本質を取り出し、普遍化したり具体化したりすることは、東京大や京都大といった難関大の2次試験での数学では、従来から求められてきたものです。
第2回のテストで示されたような、数学を「単なる計算で終わらせない」という方向性は理解できますし、そうした方向に進むべきであるとも思います。とはいえ、この理念と現実の教育現場の間に乖離(かいり)が存在することもまた事実です。平均点が低すぎたことはおそらく問題になるでしょう。しかしながら、今回明確になった基本的な方向性は、これからも継続するのではないでしょうか。
――では、実際の数学I・数学A(数学IA)の問題を、中学受験とのつながりも含めて、見ていきたいと思います。