90年代に近畿圏から一般入試の多様化が進む

 93年度から18歳人口は徐々に減っていくものの、大学と短大を合わせた進学率は、その後年々上昇し続けている。直近の23年度を見ると、18歳人口は110万人、高卒者は97万人といずれも92年度の半分強程度だが、進学者数は67万人、進学率は61%を超えた(2~3ページ表参照)。

 このように、高校卒業後に大学・短大に進学する人の割合は近年大きく増えている。また、従来多くの私立大学は複数学部の併願を認めており、特に昨今は学部併願の受験料割引制度など、各大学とも併願者を増やす工夫に余念がない。少子化が進んでも、人気上位大学の志願者数が40年前と比べて桁違いに減らない背景には、これらの要因があると考えられる。

 25年度志願者数トップの千葉工業大学も、21年度から実施している「大学入学共通テスト利用入試」の受験料免除(無償化)の効果は大きかったと思われる。

 ただ、同大学は08年度に志願者数が1万人を割って9877人に、順位は55位までダウンしたところからのV字回復だけに、入試方法の工夫以外でも、大学の本分である学問研究への努力の積み重ねがしのばれる。「ロボット」や「宇宙開発」分野に象徴されるように、教育・研究活動の強化を続け、その成果が受験生や保護者、高校教員の支持を獲得してきたといえるだろう。

 再び93年度に目を向けると、この年、近畿大学が第3位に初登場している。大学入試センター試験がスタートしたのは90年、それまでの共通一次試験とは異なり、私立大学の入試でも利用が可能となった。センター試験の得点があれば、どの地方に住んでいる受験生でも日本中の大学に出願できる。

 また、西日本、特に近畿圏の大学は、「地方入試」をはじめ、試験日の自由選択制など、この時期すでに一般入試の多様化を推し進めていた。古くから「出張入試」を行ってきた立命館大学は、95年以降トップ3の常連大学になっている。こうして、首都圏以外の大学も志願者数ランキング争いに加わるようになった。

 一方、明治大学は、07年に同一試験で複数の学部を受験できる「全学部統一入試」をスタートしたことと相まって、10年には早稲田大学を追い落とし首位に躍り出る。近畿圏の大学に続いて首都圏の大学でも、次第に一般入試の多様化が進んでいった。

 近畿大学が再び第3位に登場するのは、初登場から20年後の13年だ。この年は、東京・銀座に養殖魚専門料理店「近畿大学 水産研究所」が開店した年でもある。「実学教育」を掲げる近畿大学にとって、マグロの完全養殖は紛れもなく研究の成果。学問のアドバンテージを奇襲でアピールする大学広報のお手本と考えることができる。もちろん、マグロだけが要因ではないが、14年には同大学が志願者数トップとなり、以来、24年までトップは近畿大学の指定席となっていた。