「悔しい」という感情を成長につなげる

 まず、不合格に対処するためには、ネガティブな感情を乗り越えていく必要があります。不合格になれば当然、落ちて悔しい・悲しいといった感情が沸き起こります。自信喪失もあるかもしれません。では、これらにどう対処したらよいのでしょうか。

 仮に、不合格になったお子さんが「悔しい」と感じているのであれば、それは今後に向けて良いことです。悔しいという感情は「自分にできたはずのことをしていなかった」ことへの反省ですから、きっと次に生かしてくれるでしょう。

 むしろこうした悔しさをバネにしてもらうために、実力ギリギリの学校を受験して気持ちを引き締めさせるのは、受験戦略上アリなやり方です。不合格を願うわけではないのですが、不合格もいとわないということですね。もし実際に不合格になってしまったら、そこから得られる2つの「教訓」に注目しましょう。

 まずは1つ目は「本番でこういうことをしてはいけない」という教訓。例えば時間配分の失敗や計算ミスなどです。1月受験の不合格からこうした教訓を得て、2月に生かした子はこれまでにもたくさんいます。

 そして2つ目は、「本番までにこういう準備をしておかなければいけない」という教訓。要するに、勉強不足に対しての反省ですね。こちらもやはり教訓を踏まえて最後に猛勉強し、結果的に2月の本番で合格をつかみ取った子はたくさんいます。こうした子たちは「1月に不合格になったおかげで2月に合格できた」と、あとになって振り返っていました。

 1つの客観的な事実を主観的にどう評価するのか、どのような価値を持たせるのか、これは人それぞれです。何ごともそういうものですよね。事実を再評価し、ポジティブに捉え直すこと。これは「リフレーミング」という重要なテクニックです。

「悲しい」という感情には切り替えのサポートを

 そして、「悔しい」とは別の「悲しい」気持ちに対しては、気持ちを切り替えるサポートが必要です。悲しい気持ちは、そのあとプラスに働くことがあまりありません。

 1月受験で不合格となり、ここから2月の本番で勝負をしなければいけない中で、悲しい気持ちに引きずられて勉強が手につかないようでは困ります。2月だったらなおさらで、2月1日・2日あたりで不合格をもらって、まだそのあとに戦いが残っている場合には、悲しいという感情は次の合格のために邪魔になります。気持ちを早く立て直せた子から、次の戦いで勝利に近づくことができます。

 そこで、気持ちを立て直すために、親子で知っておいてほしいことがあります。それは、「『悲しまないで』は不可能だ」ということです。これは人間の脳の仕組みの問題です。

「シロクマのことを考えないで」という有名な心理学実験があります。その名の通り、被験者たちに「シロクマのことを考えないように」と指示をします。しかし被験者たちは、考えないようにしようとすればするほどシロクマのことを考えてしまい、頭から離れなくなって疲弊していきます。

 人間の脳はあることを考えないようにしようとすると、逆にそのことを考えてしまうようにできているのです。

 ではどうすればいいのかというと、他のことを考えればよいのです。シロクマではなくキリンのことを考える。不合格になったことを考えるのではなく、次の受験で合格して喜ぶことを考える。こうしたことが、悲しみを引きずらないための効果的な対処法です。

 実際に私は生徒たちに「不合格になったのは、このあと合格して盛り上がるためだ!」と言って、その後の合格のほうに意識を向けさせています。どんな試練もハッピーエンドを盛り上げるためのスパイスだと伝えると、子どももポジティブに捉えやすくなりますね。

 自信喪失への対処法も同じです。結果に意識が向いてしまいがちですが、これまでの勉強の過程・積み重ねてきた努力に意識を向けさせましょう。そして、不合格は頭の良さの問題ではなく努力の質・量の至らなさの問題だから、そこは真摯に受け止めるというスタンスでいくことが大切ですね。

不合格も価値あるものに変えていこう

 不合格という結果は変えられない「事実」ですが、その結果をどう捉えるかは変えられる「評価」の問題です。すべての出来事には意味があると考えると、ものごとを肯定的に解釈しやすくなります。どう捉えることが子どもの成長につながるのか、これは私たち大人があらかじめよく考えておいて、上手に誘導していきたいものですね。受かっても落ちても、価値ある経験に変えていきましょう!