併願推薦の制度はあるものの、難関私立は非対応
――千葉県の高校入試の特徴はどんなところでしょうか。この何年間かでも変更が多いという印象がありますが。
望月:もともと千葉県の高校は、私立入試・県立入試ともに「前期日程」と「後期日程」の2回チャンスがありました。しかし、渋谷幕張の後期日程廃止を皮切りに、県内の私立高校が次々と後期日程を廃止し、2020年には県立入試も後期日程が廃止されました。
他の県ですと一般入試の前に、内申点をもとに私立の推薦入試で合格を得ておくことができます。例えば、神奈川ですと書類選考という入試があります。これは推薦と同様に、一般入試の前に内申点で合格が得られます。桐蔭学園の合格を先に得てから、一般入試で第一志望の公立や私立の高校を受験する生徒が早稲田アカデミーでも多いです。桐蔭は進学校として定評がありますから、学力上位層にとっては進学先として内容的に適切だと言えましょう。
同様に、千葉県にも併願推薦と呼ばれる、内申点を利用して合格を確保できる入試制度があります。従来であれば、前期日程と後期日程で2回チャンスがありましたが、後期日程廃止に伴い、この短い入試期間の中で、併願推薦で合格を確保するのか、あるいは一般入試に挑戦していくかの線引きが非常に難しくなりました。
千葉県内で併願推薦を実施している私立高校は、千葉日大一、国府台女子、二松学舎附属柏、千葉経済大学附属、日出学園、八千代松陰、東葉、千葉商大付属、市原中央などの中堅校です。公立中学はどこかの高校に進学させたいので、公立難関高校を受験する生徒たちにもこういった中堅校の推薦併願で合格を獲得させます。
一方で、千葉で入学難易度や大学合格実績が高い進学校――渋谷幕張、市川、日大習志野、専修大松戸、麗澤、成田、昭和学院秀英、芝浦工大柏、江戸川取手(茨城)などは併願推薦がなく、一般入試で受験をするしかありません。
後期日程の廃止によって、公立上位校の入試は難化傾向
これらの「併願推薦がない私立高校」の一般入試の中心は1月17日から1月20日で、公立高校の入試は2月20日、21日です。そのため、学力の高い生徒が一般入試で調子が悪くて実力が出せなくて、すべて残念な結果になると、併願推薦で合格を取っている中堅高校に進学することになります。
もちろん、中堅高校も教育の内容は優れていますが、学力にマッチした高校でないと授業やテストが合わないし、希望する大学の対策と学校のカリキュラムに差異が出てきます。3年後の大学受験を考えても、なるべく生徒の学力に合った高校に入学すべきです。
公立難関高校を受ける生徒たちは、なるべく自身の学力に合った高校に進学すべきですから、併願の計画を緻密に考える必要があるのが千葉の特徴ですね。
2020年までは、千葉の公立高校は2回入試がありましたが、2021年以降は1回になりました。結果、公立上位高校の倍率自体は下がっていますが、不合格者は増えています。2024年度入試ですと、公立上位3校(県立千葉、県立船橋、東葛飾)の不合格者は649名、上位10校では1,708名で、昨年度と比べても68名多いのです。公立上位高校は入試が厳しくなっているため、例えば私立の合格状況を見て、公立の受験校を変えるなどの戦略が重要です。
難関公立高校は学力検査重視の傾向にある
――一方で千葉の公立受験、特に上位高校は学力重視の傾向が強いと聞きますが。
望月:東京都の都立日比谷は1,000点満点のうち300点が内申点の評価ですから、内申点が高くないとなかなか受かりません。一方、千葉では、公立高校の上位層は内申点評価の割合が低いのです。
例えば、公立の難関高・県立千葉ですと、2020年度前期入試の内申点評価は0点で、5教科500点、作文5点で、学力検査の割合が99%でした。それが2021年度の変更で、内申点67.5点、5教科500点、作文10点で学力検査の割合が86.6%、2022年度は内申点が67.5点、学力検査(5教科)が500点、「思考力を問う問題」が100点で学力検査の割合が89.9%と学力重視です。これに加えて2023年度からは、まず上位80%を合格させた後に、ボーダーラインの20%の受験生は点数の計算方法を変えて、5教科の学力検査で合否を決める制度となっています。
これは他の公立上位高校も同じ傾向で、東葛飾の2019年度は内申点135点、学力検査(5教科)500点、作文60点で学力検査占有率は71.9%と、上位高校では比較的、学力検査の率が低かったのですが、2023年度は内申点67.5点、学力検査(5教科)500点、「思考力を問う問題」100点で学力検査の割合が89.9%と、学力重視になっています。県立船橋は普通科が88.3%、理数科が90.0%、佐倉は面接もありますが、学力検査の率が普通で83.7%、理数が86.0%と高くなっています。また、船橋東も調査書(内申)の点数が270点から155点と下がり、同じく学力重視になっています。
難易度が高い「思考力を問う問題」は、難関私立入試対策の延長にある
――今、「思考力を問う問題」というキーワードが出ました。2022年度から導入されたものですが、具体的にどのようなものなのでしょう。
望月:従来の5教科の学力検査以外にプラスして課すものです。神奈川県立で実施している特色検査のような、学科横断型の学力を問う問題というよりも、英語・数学・国語を1セット60分で解かせる出題となっています。共通問題より難易度が高いため、早稲田アカデミーとしては、難関私立入試対策の延長にあると考えています。
私立難関高校は容赦なく、中学のカリキュラムよりも高度な内容を問いますが、それらの対策をしっかりしていれば、千葉の思考力問題は解けると思います。千葉の私立ですと渋谷幕張や市川、昭和学院秀英といった難関私立高校の入試対策は、思考力問題の対策につながります。
特に数学は私立難関高校対策と通じる部分が多いですね。とはいえ、3教科の問題を60分という非常に短い時間で処理しなければならないため、時間配分もとりわけ重要になります。
――公立高校入試は欠席者も多いですが、これは私立を第一志望にする受験生が多いからですね。
望月:千葉は広いので地域性に差がありますが、交通網の発達で県外の私立高校へ進学するケースも多く見られます。最近ですと、早稲田アカデミーの流山おおたかの森校は開成に6人合格しています。そういった私立にせよ公立高校にせよ、学力重視であるのが千葉の特徴です。先に紹介した推薦併願がない私立難関高校は5教科入試が多く、3年度の大学受験では国立入試を意識しています。
早稲田アカデミーでは幅広い選択肢を生徒が得るために、5教科を勉強することを目指しています。入試に向けて学力を上げていく指導を追求しているので、千葉の高校入試とは相性がいいのです。受験校選びに関しても、豊富なデータや経験値からアドバイスができますから、講師一同、生徒の志望校合格に向けて全力でサポートをしています。