なぜ通信学習のZ会が教室なのか

教室の様子(提供:Z会エデュース)
教室の様子(提供:Z会エデュース)

 Z会というと通信教育の老舗として知名度が高いが、実は40年前から教室を運営している。通信教育講座の生徒の間に「最後の仕上げだけは直接教わりたい」「苦手な科目は講師から指導を受けたい」「通信教育とリアル授業を併用したい」というニーズが起こり、それに応えて1985年、高校入試対策の教室を渋谷に立ち上げた。当初は通信教育講座の教材を使って授業をしていたが、今は教室用のオリジナルテキストを使用する。

授業は少人数制を徹底

「生徒の変化に対応し、最近では一人ひとりの生徒をより丁寧に見るようにしています。指導歴が長い講師が多いので、すべての生徒の様子を見ながら授業ができます」(Z会エデュース 代表取締役社長 高畠尚弘さん)

 1クラスは10~20人程度で、生徒数が20人以上になると学力別にクラスを分割する。徹底した少人数制授業を行い、一人ひとりに目が行き届く指導を実現。授業は90分で、週1~3回の通塾が基本。生徒は自宅学習で予習・復習を進め、授業で深く学ぶスタイルだ。

 教材は独自の入試分析に基づき、基礎から応用まで段階的に学べるように作られている。また、毎週「復習シート」という宿題が出される。応用問題・記述問題を中心に構成され、講師が丁寧に添削し、生徒の理解度を把握しながら個別フィードバックを行う。

 オンライン映像授業も提供され、欠席時の振替受講や自宅学習にも対応。全国どこでも同じ高品質な指導が受けられる。なお、振替授業はリアル授業でも可能だ。つまり、いつもとは違う講師の授業を受けることになる。

どの授業でも同じ内容、同じクオリティの授業が受けられるように実力のある講師を配置し、統一したカリキュラム・教材で授業を行っています」(高畠さん)

 講座は、難関国私立高校向けの本科「最難関国私高校受験コース(V)」や公立トップ校向けの本科「公立・私立上位高校受験コース(K)」など、志望校や学力に応じて選択可能。中3では「志望校別特訓」や「神奈川県公立特色検査対策特訓」など、特定の入試に対応した講座も充実している。

「量より質」のテキスト

 Z会の高校入試対策のテキストを見ると、他塾に比べてボリュームが少ないことに気づく。理由は「量より質」の方針で、やみくもに多くの問題を扱わないからだ。厳選された良問を中心にテキストを構成する。良問を学んでいくことで、難関高校の入試で求められる思考力・記述力を養っていく。

 数学では解法を暗記させるのではなく、本質的な理解をさせるように導く。証明や途中式の記述を重視し、国語では文章の要旨を捉える読解力や論述力を養う。授業では、「なぜその視点から解いていくのか」を解説する。そして、授業で学んだことを復習シート(宿題)でアウトプットし、問題を解く力を鍛えていく。例えば、数学の図形問題では「補助線をなぜそう引くのか」を説明し、理科では実験映像を用いて現象の仕組みを視覚的に理解させる。

「難関高校は大学受験を見据えて、記述力がある生徒を求めます。そのため、記述力を伸ばすべく、授業も宿題も記述問題が中心になります。自分で考えたことを表現する力は、今の学習指導要領でも重視されており、大学受験でも力が発揮できるような指導を意識しています」(高畠さん)

 教科書には要点が書かれているため、予習をしてくるように指示する場合もある。予習をすることで授業の効率が上がり、学習も効果的になっていく。

 また、AI学習アプリ「atama+」も導入。基礎で抜け落ちているところをチェックし、その部分の復習もできる。

理知的な指導をするベテラン教師

 老舗塾だけあり、ベテランの講師が多数在籍している。いわゆるスパルタ指導ではなく、穏やかかつ理知的な指導をする講師が多い。難関対策の塾は男子生徒が多くなりがちだが、Z会進学教室(首都圏)中学生は女子率が高いのも特徴だ。落ち着いた環境で授業が受けられることも、女子率の高さに関係しているのかもしれない。

厳選された指導力の高い講師のみが教壇に立つため、教室の数を一気に増やすことはできません」(高畠さん)

 教室を増やすと講師も増員することになって、どうしても講師の質が安定しなくなるからだ。拡大路線ではなく、質の高い指導を優先している。

内申点を取るためのフォローは?

 高校入試対策の塾には2種類ある。内申点を上げることを目的にする「内申点重視」塾と、学力を高めることを目指す「学力重視」塾だ。一般的な公立高校や私立推薦では内申点が重視されるため、内申点を高めて受験をクリアしようとする生徒もいる。その場合は内申点を高めることに注力する塾に通うケースが多い。一方で、公立難関校は学力を求めるし、私立難関校は内申点を加味しない学校も多いため、入試を突破するためには学力を高める必要がある。

 Z会進学教室(首都圏)中学生は難関公立対策を得意とし、都立日比谷高校や西高校といった難関都立を目指す生徒が多い。そのため、学力を上げる指導に重点を置きつつも、内申点を上げるために定期テスト対策用のワーク(宿題)も提供している。このワークは中学の教科書に沿ったものである。

 また「定期テスト対策自体は授業であまり行わないのですが、どのように対策していくべきかについては丁寧に教えます。学力上位校も、以前に比べて学習法がわからないという生徒は増えているので、自立的な学習姿勢を求めながらも、生徒任せにしすぎないことが大切だと考えています」(高畠さん)とのことだ。

部活動との両立する生徒が多い

 難関高校対策の塾は拘束時間が長いことが一般的だが、Z会進学教室(首都圏)中学生は比較的短く、土日のみで通えるコースもある。中学2年では1回目の授業が19時30分からスタートで、90分で週3回。日曜日に集中して授業を受けても4時間30分。平日の授業のスタートは遅めなので、部活動との両立がしやすい。そのため、部活動を続けながら難関高校を目指す生徒が多い。

公立中高一貫校を目指す小学生向けコース

 公立中高一貫校を目指す小学生向けのコースは小学6年からスタート。中学の範囲の先取りをどんどん進めるのではなく、小学校での学習をしっかり定着させていく方針だ。算数の「比や割合」など、抜け落ちやすい部分を補完していく。塾に通うのが初めての生徒が多いので、ノートの取り方も丁寧に指導を行っている。

自習室では質問にも適宜対応

講師と生徒の様子(提供:Z会エデュース)
講師と生徒の様子(提供:Z会エデュース)

 Z会進学教室(首都圏)中学生の渋谷教室を訪れたが、木目を基調とした落ち着いた雰囲気であり、自習室も大きな窓に面していて開放感がある。

 教室は御茶ノ水教室、渋谷教室、自由が丘教室、新宿教室、成城教室、池袋教室、大泉学園教室、三鷹教室、立川教室、調布教室、府中教室、八王子教室、横浜教室、大宮教室。自習室では質問にも適宜対応している。

Z会進学教室(首都圏)中学生に合う生徒・合わない生徒

 通信学習が発祥の塾なので、家庭での学習を大切にする。授業の前に予習を求めることもある。そのため、一人での学習が得意な生徒には向いていると言えよう。反対に塾で長時間、仲間と一緒に勉強するほうが適している生徒には合わないこともあろう。