今回の公表された試作問題をみると、制限時間が延びていない科目も分量が多くなっており、どの科目も時間に追われることが想定されます。さらに、共通テスト全体の時間が延びているため、集中力を持続させる体力勝負にもなりそうです。

 そのため、模試や同じ時間帯で練習するなどして、新課程のスケジュールに慣れておくと良いでしょう。試作問題からみる科目ごとの詳しい変更点は次回のコラムで詳しくお伝えしようと思います。

「情報Ⅰ」の登場で国公立大学の選抜方法はどうなるか?

情報の試作問題
情報Ⅰの試作問題 出典:大学入試センター

「情報Ⅰ」が教科に加わり、国公立大学の出題科目がどうなるか心配になっている人も多いでしょう。ここでは一般選抜の受験方式を確認していきます。今まで通り、国公立大学は共通テストと大学独自の2次試験の合算で合否が決まります。

 まず共通テストの科目について説明します。基本的に国立大学は情報Ⅰを含めた6教科8科目が必要科目となります。文系は英語リーディングとリスニング、数ⅠA、数ⅡBC、国語、理科基礎、地歴・公民から2科目選択、情報Ⅰが基本の型です。理系は英語リーディングとリスニング、数ⅠA、数ⅡBC、国語、理科が2科目、地歴・公民が1科目、情報Ⅰになります。

文系基本型 科目

6教科8科目

1000点

外国語

英語RL

200
数学 数ⅠA
数ⅡBC

100

100

国語 国語 200
理科(理科基礎) 物基
化基
生基
地基

2つ選択で1科目

100

地歴・公民 地理
日本史
世界史
地歴公
倫理
政経

2つ選択で2科目

200

情報 情報Ⅰ 100
理系基本型 科目

6教科8科目

1000点

外国語

英語RL

200
数学 数ⅠA
数ⅡBC

100

100

国語 国語 200
理科(理科基礎) 物理
化学
生物
地学

2つ選択で2科目

200

地歴・公民 地理
日本史
世界史
地歴公
倫理
政経

1つ選択で1科目

100

情報 情報Ⅰ 100

※理科は理科基礎や理科から選択できる場合もある
※地歴公は旧帝大などの難関大で選択できないところもある

 河合塾が2023年6月上旬に情報Ⅰの取り扱いを調査しています。それによると、97%の国立大学で情報Ⅰを必須としています。その一方、公立大学は44%に留まるようです。多くの大学で必須としているものの、他の科目に比べて、配点が低い大学が55%と、科目増加を配慮している大学もあります。

  国立大学 公立大学
必須 97% 44%
他教科との選択 3% 40%
利用しない 0.1% 16%

※参照:河合塾 国公立大 共通テスト「情報Ⅰ」の設定状況
※河合塾調べ、公表164大学の前期日程募集区分で集計

情報Ⅰの配点比

配点比が低い 55%
素点利用 37%
配点比が高い 8%

※参照:河合塾 国公立大 共通テスト「情報Ⅰ」の設定状況
※河合塾調べ、公表85大学のうち、6教科8科目を課す前期日程の募集区分で集計

 共通テストで必要な科目については、河合塾によると、国立大学では情報を含めた6教科8科目が8割以上ですが、公立大学は23%となっています。必要な科目は大学によって差があるので、志望する大学の募集要項を早くから確認することが大切です。

2025年度入試 国公⽴大学 共通テスト教科・科⽬数

  国立大学 公立大学
6教科8科目 83% 23%
7科目 11% 15%
6科目 3% 17%
5科目 0.4% 17%
4科目 0.4% 10%
3科目以下 2% 18%

※参照:河合塾 2025年度新課程入試科目 分析速報
※2025年度⼊試の数値は2023年3⽉15⽇現在、河合塾調べ
※前期⽇程で集計(⼤学公表の募集区分に基づき作成)

全員浪人回避!?高校3年生は浪人するとどうなる?

高校3年生が浪人するとどうなる
出典:pixta

 共通テストの内容がこれほど大きく変わると、現在の受験生である高校3年生・既卒生が浪人するとどうなるかは非常に心配な点だと思います。結論から言うと、経過措置があるので基本的には新課程の学習していない内容を受験することはありません。しかし、経過措置のない科目の中でも英語・国語と、新たに追加された情報は対策が必要となってきます。

経過措置がある科目

  • 数学(数学ⅡBは70分に変更)
  • 地歴・公民
  • 情報

経過措置のない科目

  • 英語
  • 国語(現代文110点古文・漢文90点、90分に変更)
  • 理科(必要に応じて旧課程の問題を選択可)

 経過措置があるのは数学、地歴・公民、情報の3教科です。経過措置があるといっても、もともと受験科目になかった情報は大きな負担になることが考えられます。なお、受験者数が1万人に満たない場合も、『情報Ⅰ』と『旧情報(仮)』は得点調整の対象となります。

 経過措置がないのは英語、国語、理科の3教科です。理科はほぼ時間割の変更だけですので安心して大丈夫でしょう。しかし、英語と国語に関しては、浪人すると上記で説明した新傾向に対応する必要があります。

浪人すると対応が必要な内容

英語R

試作問題の大問1つの長文語彙数が過去最多の約1300語。

おそらく今までよりも語彙数が増加するため、読解速度を上げる必要あり。

ライティングを意識した新傾向の問題構成への対応が求められる。

国語

新しく第3問に入る図やグラフを読み取る現代文の対策。

試作問題を見る限り、今までのペース配分では対応できなくなるため、特に古文と漢文のスピード強化が求められる。

情報

志望校次第で、今まで勉強していなかった「旧情報」の対応を求められる。

旧情報の範囲は「社会と情報」と「情報の科学」の内容。

共通部分の必答問題とそれぞれに対応した問題から選択する形式。

 時間割の変更もあります。まず1日目の文系科目からみていきましょう。経過措置だと、現行から大きな変化がなく国語が10分増えただけです。

2025年1日目 経過措置 試験時間割(イメージ)

1科目受験
10:40-11:40(60)

2科目受験
9:30-11:40(60×2)

地歴・公民
「世界史A」「世界史B」
「日本史A」「日本史B」
「地理A」「地理B」
「現代社会」「倫理」
「政治・経済」「倫理、政治・経済」
13:00-14:30(90) 「国語」
15:20-16:40(80) 「英語」リーディング
17:20-18:20(60) 「英語」リスニング

※参考:大学入試センター

 2日目の理系科目です。2025年の経過措置の時間割では、新課程の時間と同じく理科基礎と理科が同じ時間になり、午前中にまとまります。数学が午後からになり、最後に情報と続きます。経過措置の受験者も数ⅡBは70分へと増加する点には注意が必要です。

2025年2日目 経過措置 試験時間割(イメージ)

1科目受験
10:40-11:40(60)

2科目受験
9:30-11:40(60×2)

理科①
「物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎」
「物理」「化学」「生物」「地学」
13:00-14:10(70) 「数学Ⅰ」「数学ⅠA」
15:00-16:10(70)

「数学Ⅱ」「数学ⅡB」「簿記・会計」

「情報関係基礎」

17:00-18:00(60) 「旧情報(仮)」

※参考:大学入試センター

 新課程では英語と国語で傾向の変化があると想定されるため、浪人した場合には対策が必要となるでしょう。また、多くの国立大学では「旧情報(仮)」も必須科目となります。経過措置はあるといえど、ある程度の負担はありますので、共通テストを使う人は今年合格できるように頑張っていただければと思います。

まとめ

 このように形式だけみても、これまでの共通テストと大きく変わっていることがわかります。保護者の方が受験していたセンター試験の時代と比べても別物になってきていると感じられるでしょう。

 さらに問題の中身も、知識の習得を求めていたセンター試験とは大きく異なっています。そのため、保護者の方には自分の受験の経験や固定観念を一度置いて、受験の制度や対策方法の情報を新たに収集していただきたいです。

 繰り返しになりますが、今回のような「新課程入試元年」は情報力勝負です。お子様だけでなく、保護者の方の力が受験の結果を左右するという意識を持っていきましょう。

 次回は試作問題からみた、具体的な各科目の変化についてお伝えします。

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