新課程共通テスト国語の概要
2025年新課程共通テスト国語について簡単にまとめると、下記のようになります。制限時間や配点、出題形式に大きな変化が出ました。センター試験時代から長年続いてきた評論文、小説、古文、漢文の大問4問(制限時間80分)から変更になります。今回の新課程共通テストの変更点の中でも、大きな衝撃があった科目だと言えます。
制限時間や配点 | 国語(80分→90分 200点) |
---|---|
出題形式 | 大問が1題増え、近代的な文章が3題(論理的な文章・文学的な文章・実用的な文章)、古典が2題(古文・漢文)出題される。 |
内容 | 題材を通した要約、説明、論述、話し合いなどの言語活動を重視する。大問につき1つの文章ではなく、異なる種類や分野の文章などを組み合わせた複数の題材を検討する。グラフや図の読み取りも出題される可能性がある。 |
※参考:大学入試センター
新課程共通テスト国語の問題作成方針
まず国語の問題作成方針から重要な箇所をお伝えします。
①言語を手掛かりとしながら、文章から得られた情報を多面的・多角的な視点から解釈したり、目的や場面等に応じて文章を書いたりする力などを求める。
②問題の作成にあたっては、大問ごとに一つの題材で問題を作成するだけでなく、異なる種類や分野の文章などを組み合わせた、複数の題材による問題を含めて検討する。
③新学習指導要領「現代の国語」「言語文化」は新たな大問を追加し、より多様な文章を扱う。
言葉による記録、要約、説明、論述、話し合い等の言語活動を重視して、目的や場面に応じて必要な情報と情報の関係を的確に理解する力や、さまざまな文章の内容を把握したり、適切に解釈したりする力等も含め多様な資質・能力を評価できるようにする。
④各大問では、引き続き近代以降の文章(論理的な文章や実用的な文章、文学的な文章)、古典(古文、漢文)を題材として,試験時間(90 分)との関係に留意しつつ、それぞれの題材の意義や特質を一層生かした出題となるよう工夫する。
※参考:大学入試センター 令和7年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テストの 出題教科・科目の問題作成方針に関する検討の方向性について
①②は従来の作成方針で、こちらを引き続き重視しつつ、③④の新しい問題作成方針が検討されています。③では新学習指導要領「現代の国語」「言語文化」で、「新たな大問を追加し、より多様な文章を扱う」とあります。後ほど紹介しますが、試作問題を見ると、今までの国語のイメージが壊れるほどの大きな変化だと感じるでしょう。
2025年新課程共通テスト国語の制限時間や問題構成について
新学習指導要領「現代の国語」「言語文化」の内容で、現代の生活に関わる題材について図やグラフを読み取る問題が追加されます。
大きな変更点は、従来の評論文・小説・古文・漢文の大問4題で各50点、合計200点、制限時間80分だったものが、この新傾向の図やグラフを読み取る問題が第3問に入り、評論文45点、小説45点、図やグラフの読み取り20点、古文45点、漢文45点の合計200点、制限時間90分に変更されます。試験時間が10分増えましたが、大問が1問増えたため、時間的にも厳しくなることが予測されます。
従来の共通テスト 国語制限時間80分 |
2025年新課程共通テスト 国語制限時間90分 |
||||
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問題 | 出題 | 配点 | 問題 | 出題 | 配点 |
第1問 | 評論文 | 50 | 第1問 | 評論文 | 45 |
第2問 | 小説 | 50 | 第2問 | 小説 | 45 |
第3問 | 古文 | 50 | 第3問 | 図やグラフ | 20 |
第4問 | 漢文 | 50 | 第4問 | 古文 | 45 |
第5問 | 漢文 | 45 | |||
合計 | 200 | 合計 | 200 |
※参考:大学入試センター
2025年新課程共通テスト国語の試作問題
それではここから、現在公表されている試作問題の内容を見ていきましょう。新学習指導要領「現代の国語」「言語文化」の内容について、第3問(図やグラフ)で「第A問」「第B問」の2種類の試作問題が公表されました。
- 第A問(配点 20 点)「気候変動が健康に与える影響」
- 第B問(配点 20 点)「言葉遣いへの自覚」のレポートについて
従来の評論文、小説、古文、漢文については特に言及がなかったため、問題形式に大きな変更はないと思われます。今回は公表された新傾向の第3問について説明していきます。
「現代の国語」「言語文化」試作問題 第A問
まず第A問についてです。試作問題を見て衝撃的だったのが、国語なのに横書きであり、資料もかなりの量がある点です。これは今までの現代文と、大きく内容が異なることが形式からもわかります。
第A問では、気候変動と人間の健康についてレポートを作成する場面での問題です。気候変動が健康に与える影響について、調べた資料を見て問題に答えていきます。資料として文章2つ、図1つ、グラフ3つを読み取ります。国公立大学の二次試験の総合問題であったような、グラフや図表の読み取り問題に近い形式ですが、この量の資料を読み取る問題はなかなか珍しいです。
【資料Ⅰ】
- 文章と図:環境省の資料から作成された気候・自然的要素と気候変動による影響の図(フローチャート形式)および健康分野における気候変動の影響についての文章
- グラフ1:日本の年平均気温偏差の経年変化
- グラフ2:日本の年降水量偏差の経年変化
- グラフ3:台風の発生数及び日本への接近数
【資料Ⅱ】
- 文章:気候変動の影響と適応策についての文章
【資料Ⅰ】は気候・自然の変化によってどのような影響が起こるかを示した図とその文章、またそれに関連する気象庁の平均気温、降水量、台風の発生と接近数を表したグラフ、【資料Ⅱ】は地球温暖化への適応策について説明した文章です。これらの文章や図表を正確に読み取る力や、レポートを作成する中で資料を正しく解釈し、レポートの目次の内容や構成について分析したり検討したりする力を問う内容になっています。
各問を詳しく見ていきます。
問1(ⅰ)(ⅱ) は【資料Ⅰ】の異なる形式で表現された文章と図を正しく読み取り、違いを理解したり、図について正しく認識できたりしているかを問う問題でした。
問2はアからエの4文について【資料Ⅰ】と【資料Ⅱ】から正誤、判断できないの3択から選ぶ問題。見慣れない形式の問題で、多くの資料を見ないといけないのに加え、「判断できない」という選択肢があることで難しく感じる内容になっています。解いてみると、一つ判断がつけば選択肢が限られるので確認する資料も少なく、慣れれば難しくはない内容ですが、初見では時間が取られると思います。
問3(ⅰ)(ⅱ)は、資料をもとに高校生が作成したレポートの目次についての問題です。(ⅰ)は【資料Ⅱ】の論理展開から目次に入れる内容を考えます。(ⅱ) が特徴的な問題で、レポートに関して級友に助言をもらって、その助言が正しいかどうかを判断します。内容一致の形式ですが、いわゆるよくある内容一致問題ではなく、改善点の指摘として間違っているものを選ばないといけない点が新しく、今までの現代文ではなかなか見ることのなかった問題だと思います。
問題番号 (配点) |
設問 | 解答番号 | 正解 | 配点 |
---|---|---|---|---|
第A問 (20) |
1 | 1 | 1 | 3 |
2 | 2 | 3 | ||
2 | 3 | 3 | 5 | |
3 | 4 | 3 | 4 | |
5 | 2 | 5 |
配点は問2と問3(ⅱ) が5点と高くなっています。2問とも多くの資料に目を通す必要があり、時間のかかる問題です。
「現代の国語」「言語文化」試作問題 第B問
続いて第B問です。第A問と同じく資料を読み取り設問に答える形式です。第A問と比べ、資料のグラフや図が減り、文章中心になっています。設問の形式も第A問とは異なる傾向になっています。
第B問は、日本語独特の言葉遣いに関するレポートを作成する場面での問題です。はじめにまとめられたレポートがあり、その後に資料として調査結果のグラフと、「役割語」について説明した文章が2つ展開されています。第A問と比べると読みやすく、全体を把握しやすい内容になっています。
【資料Ⅰ】
- 調査のグラフ:性別による言葉遣いの違い
【資料Ⅱ】
- 文章:役割語の定義
【資料Ⅲ】
- 文章:役割語の習得時期
【資料Ⅰ】は性別による言葉遣いの違いについての調査結果のグラフです。「このバスに乗ればいいのよね?」これは男女どちらの話し方で、実際に使うかどうかといったアンケート結果です。【資料Ⅱ】は役割語の定義について書かれている文章、【資料Ⅲ】も役割語の習得時期について書かれている文章です。
資料をレポートに引用する中で、グラフを適切に解釈したり、文章を要約したりする力や、主張を理解してもらうためにレポートに何を補足したらよいか、目的に応じて内容や構成を考える力を問う内容になっています。図やグラフより文章が多い分、現代文の読解テクニック(抽象・具体、因果関係、対比)が随所で問われています。
各問を詳しく見ていきます。
問1は【レポート】の展開を踏まえて【資料Ⅰ】のデータを正しく理解する問題です。選択肢はデータから読み取れる内容になっていて、その中でレポートの展開に当てはまる選択肢を選ぶ必要があります。
問2では【資料Ⅱ】と【資料Ⅲ】で説明されている「役割語」についての説明の要約を選ぶ問題。問1と同様、書いてあることを選ぶのではなく、空欄前後の展開的に、資料のどの部分が求められているかを考えて選択できるかが重要になります。
問3は【資料Ⅱ】と【資料Ⅲ】の「役割語」について理解し、具体例を選ぶ問題。適当でないものを1つ選びます。今までのセンター試験や共通テストでは、具体例がすでに文章に載せられていて、筆者側にとっては主張に説得力を持たせるもの、私たち読み手としては理解を深めるための材料だったので、「具体例が文中に書いてあるどこの主張をわかりやすくするためのものなのか」がわかればよかったのですが、この形式だと「役割語」という言葉の定義と文章において、伝えたい主張の本質を理解して、そこに添えるのに適切な具体例、不適切な具体例を判断しなければいけない、つまり私たちが筆者側の目線に立つことを要求している点が、今までと違って新しい内容になっています。
問4はまとめたレポートの論拠が不十分なため、補足する内容を2つ選ぶ問題。レポートの構成を把握し、どれを追加したら主張が理解されるかを選びます。この問題は第B問で配点が5点ずつと最も高い問題でした。
問題番号 (配点) |
設問 | 解答番号 | 正解 | 配点 |
---|---|---|---|---|
第B問 (20) |
1 | 1 | 2 | 4 |
2 | 2 | 3 | 3 | |
3 | 3 | 3 | 3 | |
4 | 4-5 | 2-4 |
10 (各5) |
2025年新課程共通テスト国語のまとめ
試作問題を見ていただき、現代文なのに横書きだったり、図やグラフの量が多かったりと、驚きが多い問題だと感じられたと思います。今回の新しい試作問題では、問題作成方針に関する検討の方向性に「言語活動の過程を重視する」と記載されているように、「それぞれの文や段落、図やグラフ、資料などが何のために存在するのか」を考えないと正解が選べないし、素早く解答できないという点が新しいと思いました。
本文全体を論理的に追うことで「こういう内容の具体例がここには欲しい!」とか「資料はこういう内容であるべきだ!」という予測、つまり言語活動における発信者側の目線や考えに立って意図や過程を理解することが、スピードや正確性を上げていくのに必要になるでしょう。形式慣れだけでは解決しきれないような問題になっていると感じます。
しかし、新しい問題は評論文に比べると文章の難易度は易しいため、得意になる人も出てくるでしょう。設問数は5問で現行問題の半数くらいで、語数も少ないですが、図やグラフの読み取り対策がなかなかできず、解答に時間がかかるでしょう。そのため、新傾向の第3問以外の大問の解答速度を上げておく必要があります。しかし、評論文や小説の解答速度を上げるのにも限界があるため、特に古文・漢文の対策をしておくのがおすすめです。
共通テスト国語で高得点を取る人は、古文・漢文は取れることを前提に、現代文で安定して点数を取っています。今回、現代文の割合が増えたことで恩恵を受ける人も多いと思います。例えば、古文・漢文の配点が下がって暗記の割合が減ったことは、国語に多くの勉強時間をかけづらい国公立理系や、漢文が不要だった私立文系の生徒には良い影響も出るでしょう。
しかし逆に、新しい形式への対策が特に必要になることや、過去問や参考書が少ないため、慣れるのが難しいというデメリットもあります。通常の評論文の参考書では、この資料の量に出会えることもなかなか少ないため、共通テスト対策の参考書や模試形式の実践問題集で、早めに対策をしていくのをおすすめします。