子どもの勉強を見ている3人のパパ

 Aさん:都内の会社員夫婦です。娘が早稲田アカデミーに通っています。第一志望は吉祥女子なんですが、富士見もいい学校なので、僕は富士見に入れたいと思っています。僕も軽く中学受験をしましたが、公立中学に進学しました。

 Bさん:公務員をやっています。自分も中学受験をして、男子校から東大に進学しました。息子がSAPIXに通っています。下に娘がいて、公文式に通わせています。

 Cさん:エンジニアです。子どもを近所の中小チェーンの塾に通わせています。高校受験がメインで、ついでに中学受験の対策もやっているような塾で、早稲田アカデミーやSAPIXみたいな大手とは全然違うと思います。

子どもの勉強の面倒を見るようになったきっかけは?

 司会:お子さんの中学受験のフォローをすることになったきっかけは?

 Cさん:うちは妻が営業職で毎日出社して、都内の客先を回っています。残業も多くて、夜いないことが多いんです。そうなると、リモートワークで時間の融通が利く僕が、子どもの勉強の面倒を見ることになっちゃうんですよ。

 Bさん:地元の塾は面倒見がいいから、親がやることは少ないのでは?

 Cさん:それが予想外に息子の偏差値が上がってしまって、渋幕を受験することになって、勉強量が半端じゃないんですよ。塾も渋幕の合格実績を出したいから面倒を見てくれますが、他の子とは違う宿題が出て、これが難しくて到底一人ではできません。

 Bさん:おお、渋幕を受けるんですね、すごい。

 Cさん:記念受験ですけれどね。塾からは目標は高い方がいいと言われました。

 Aさん:優秀だなあ。うちは妻が家事担当なので、幼い頃から勉強は僕の係です。年長から公文式に通っていますが、それも僕が宿題をやらせていました。家から徒歩圏内の早稲田アカデミー(小規模校舎)に通っているため、2クラスしかありません。なので、別にそんなに勉強が得意でもないのに上のクラスにいるから勉強が大変です。

 Bさん:僕と妻は職場で知り合って結婚しました。家事は分担していましたが、妻が「私は中学受験をしてないからよくわからない。あなたは経験者なんだからやってね」と言うので、中学受験の面倒は自分が見ることになりました。ただ、家事負担は減っていなくて不満です(笑)。ちなみに息子のSAPIX偏差値は53ぐらいで、校舎でも真ん中ぐらい。アルファベットクラスのボリュゾ(ボリュームゾーン)民です。

塾でママ達とうまくやっていける?

 司会:周りにも中学受験のフォローをされているお父様はいますか?

 Bさん:保護者会や塾のお迎えの際にグループLINEでつながった人たちは、僕以外は全員ママですね。ただ、保護者会や塾のお迎えはママがやっているけれど、家での宿題の管理はパパがやっているというパターンはあります。SAPIXは授業が終わるのが比較的早いから、ママがお迎えにくるようです。僕はたまにお迎えにいける程度で、息子は同じマンションの子と一緒に帰ってくることが多いですね。

 Cさん:うちは妻が車通勤なので、帰りに塾に寄って、子どもをピックアップして連れて帰ってきます。でも、宿題の管理は僕がやります。

 Aさん:うちは近所の校舎なので、子どもは一人で通っています。友達もみんなそんな感じみたいですね。同じマンションの子と、コンビニでガリガリ君を買って食べながら帰ってきます。僕は保護者会でママたちと仲よくなる感じではありませんね(笑)。Bさんはコミュニケーション能力あって女性受けがよさそうだから、ママの中に入っても平気そうだ。

 Bさん:女性受けは特によくないですが、異性のほうが当たり障りのない会話で済むから楽ですよ。男同士だと嫉妬やマウントが入ってくることもありませんか? 僕の勤務先の仕事でパッとしない男性が娘を桜蔭に入れたのが自慢で、僕らに中学受験の話題をずっと振ってくるのが苦手です。

 Cさん:ああ、Xやブロガーによくいるタイプですね。そこまでのめり込んでいる人はリアルでは見たことがないですが、うちの塾の保護者会には僕以外にもパパがいますね。みんな同じ小学校の子の親同士なので、顔見知りですから適度に和気あいあいとやっています。

 近隣にSAPIXや早稲田アカデミーがあるので、ガチ勢はそっちに行って、うちの子の塾に来るのはのんびりしている層だからかもです。ただ、うちの息子は馬鹿なので「渋幕を受ける!」と塾で言っちゃったみたいなんです。それでママたちに「SAPIXに転塾しないの?」と探りを入れられて困りました。

 Bさん:記念受験でもすごいですよ、渋幕を受けるなんて。入試問題にクセがあるから対策も大変そうです。

SAPIXはやっぱりガチ勢が多い

 司会:渋幕は問題が特徴的ですよね。たぶん過去問をちゃんと解いて対策をしないと、入試は突破できないでしょう。

 Cさん:そうなんです。クセがありますよね。ただ、算数などは難易度でいうと御三家ほどではないから、うちの子でもまぐれで受かるかもという希望が持てます。

 Aさん:Bさんも渋幕は受験を検討されているんですか? 入試問題をご存じなところを見ると。

 Bさん:いえ、SAPIXの入試報告会の資料に渋幕の問題が載っていたので、興味を持って調べたんですよ。独特なので、対策をさせないと合格しないだろうなあって思いました。1月の渋幕に落ちた子が開成に受かるパターンがありますが、本命じゃないから過去問もやらなかったんだろうなあと。

 CさんやはりSAPIX生のパパは違いますね。勉強熱心だ。自分なんて渋幕の問題も軽くチェックした程度です。入試分析会なんてうちの塾にはないしなあ。保護者会で「今年の入試はどうだった」と話をするぐらいで。やっぱり大手塾はいろいろとサービスがありますね。

 Aさん早稲田アカデミーの入試分析会に行きましたが、割とパパも多かったですね。

 Bさん:SAPIXもそうですね。パパが割と多いです。パソコンを開いてメモしている方もいました。取り上げた入試問題をその場でみんなで解いたりして。

 Cさん:すごい! 熱心だ。そんな人たちが集まっているからSAPIXはあれだけの合格実績を上げるんですね。僕なんて渋幕の入試問題も見るだけで解いてませんから。

中学受験の算数、昔よりも難しすぎる?

 司会:そもそもBさんはどうしてSAPIXにされたんですか? 今、共働き家庭は面倒見のいい塾を選ぶトレンドですが。

 Bさん:僕の母校に息子を入れようと思ったんです。合格実績が高いのはSAPIXだし、テキストも優秀なので。

 Aさん:どちらの学校なんですか?

 Bさん:開成です。

 Cさん:なるほど。それだとSAPIXですよね。

 Bさん:本当は公立の中学に進学させたかったんですが、受験がないとゲームとYouTube三昧じゃないですか。だったら、塾に入れて勉強させるかって思って。学校が終わってから、電車に乗って塾に行ってくれれば学童代わりにもなりますし。あと、自分が受かったんだから、息子も開成なら受かるかなあと思いましたが、まあ無理ですね。本人は大学受験をしたくないと言うので、どこか付属校に入れる方針です。

 Aさん:うちも学童代わりになると思って入れたんですけどね。「予習シリーズ」が難しい。自分も実は中学受験をしていて、大学時代は家庭教師もやっていたんですけど、以前と比べて算数とかべらぼうに難しくなっていませんか?

 Bさん:そうです。社会の知識問題は僕らが受験した頃のほうが難しいですが、算数は今のほうがずっと難しい。算数って対策がしやすいから、塾がどんどん解けるように指導して、学校もそれに負けじと難しい問題を出す。いたちごっこになっちゃってるんですよ。僕も子どもに教えるために問題を解いていますけど、本当に難しいです。

仕事をしながら、子どもが一緒に宿題をできるのか?

 Cさん:すごいですね。僕は教えることはあまりしません。僕は公立出身だから中学受験の算数はわからないし。ただ、僕がリビングでパソコンを開いて、仕事をしている時に子どもも一緒に宿題をやっています。

 Aさん:Cさんこそ、すごいですよ。僕もリモートワークをしますけど、娘が横で勉強してくれるなんてありえないです。うちは『SPY×FAMILY』ごっこになっちゃいますね。劇中で小学校受験のために勉強させようとすると、アーニャが「いやーだー、アーニャ、勉強やだ!」って言うシーン。あれの真似をし出します。「ちょっとネタが古いよ」って妻が突っ込むんですけどね。

 Bさん:それが普通ですよ。うちの子も反抗期で駄目ですね。「宿題が終わったらゲーム機を出してやる」と言うと、雑に適当に済ませてしまうので意味ないですし。

 Cさん:うわ、うちの子も入試の直前に反抗期が来そうでちょっと怖いですね。今日はお話ができて楽しかったです。

 Aさん:僕もです。

 司会:本日はありがとうございました。

中学受験パパの座談会を終えて

 現在、中学受験をする家庭は共働きがメインだ。今回は、妻もフルタイムの正規雇用でバリバリ働いている家庭のパパに集まってもらった。家事は母親、勉強は父親というパターンが多く、家事や子育ても夫婦で協力し合っていることがよくわかった。

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