塾選びに迷う3人のママ
Aさん:内科医をしています。長男が近所の中小塾に通っていますが、小学4年から別の塾に入れようかと考えています。私は公立出身で中学受験の経験がないので、まったく事情がわかっていません。
Bさん:埼玉のパート主婦です。2人子どもがいて、下の男子の塾選びで悩んでいます。来年から仕事に本格復帰するので、なるべく親の手がかからない塾を探しています。大学時代に中学受験の家庭教師をしていましたが、その頃とは中学受験も全然変化していますから。
Cさん:都内在住の共働き会社員夫婦です。夫婦で中学受験を経験しています。女の子は高校受験の選択肢が少ないから中学受験をさせます。本人が医師になりたいというので、豊島岡か広尾の医進・サイエンスコースを希望しています。
「全統小を受験させたら偏差値60が出た」
司会:Aさんのお子さんはすでに塾に通っているそうですが、どうして4年から塾を変えたいのですか?
Aさん:私はシングルマザーなので、学童代わりに近所の塾に通わせていたんです。高校受験対策や中学の授業の先取りをするという塾で、中学受験は「一応対応します」って感じでした。
もともと中学受験をさせるつもりはなかったんですが、子どもが友達に付き合って全国統一小学生テストを受けたら、偏差値60くらい出たんです。それで本人がやる気になったので、中学受験をさせることになりました。
Bさん:中学受験の塾に通っていないのに偏差値60はすごいですね。うちは長女が日能研から中堅の女子校に進学しました。日能研の大宮校は行き届いていて素晴らしかったんですが、下の子は勉強が得意なタイプなのと、負けず嫌いなので難関対策の塾に通わせようかと。
Cさん:うちの娘は低学年からエルカミノに通っています。エルカミノはやはり算数に強い塾です。女子なので、そこまで算数で高度なことは不要だと思い、他の塾に入り直す予定です。ただ、SAPIXやグノーブルは男子御三家対策に強い塾だと思うので、どうしようかと悩んでいます。
Bさん:四谷大塚や早稲田アカデミーもそうですよ。今の「予習シリーズ(四谷大塚制作のテキスト。中学受験生の約半分が使用し、早稲田アカデミーなど大手塾も採用)」は男子御三家をターゲットにしていますよね。
SAPIXか早稲田アカデミーかの選択がトレンド?
Aさん:そこ、私みたいな情報弱者にはわからなくて。男子御三家の合格実績はSAPIXが圧倒的ですよね。早稲田アカデミーの合格実績は、志望校別対策を受講しているSAPIX生が多いとも聞きます。
Cさん:他の塾と併用して早稲田アカデミーに通っていた「準・早稲アカ生」の合格実績が伸びているそうです。たぶん今、高学歴ママはバリバリ働いているので、面倒見がよくて、難関対策ができる早稲田アカデミーを選ぶんですよ。知っている女医ママもSAPIXに入れるのかと思ったら、地元の早稲田アカデミーに通わせています。送り迎えができないから、子どもが徒歩で通えることが第一条件だって。
Bさん:ただ、早稲田アカデミーは大手塾なので、面倒見がいいといっても限界があると思います。それは日能研も同じです。
司会:共働きが主流の時代、面倒見のよさを求めるんですね。
Aさん:私はZ会エクタスが気になっています。職場の先輩女医の息子はZ会エクタスに通って、御三家に合格しました。サイトを見たら、栄光ゼミナールがやっている御三家専門ブランドなんですね。なぜZ会が付くのかというと、栄光ゼミナールはZ会ホールディングス傘下とのこと。情報量が多くてついていけない(笑)。
Bさん:Z会エクタスは入塾するのがまず大変ですし、仮に入塾できても小学4年の末に進級テストがあって、合格しないと5年からは別の塾に行くことになります。
Aさん:厳しい塾なんですね。先輩は「面倒見がいいから入れた」って話していました。
Cさん:栄光ゼミナールの塾なので手厚いと思います。栄光ゼミナールは中野に桜蔭・女子学院対策専門の「最難関女子中学受験専門館」という塾を作りました。そこはさらにきめ細かく見てくれると聞いたんですが、ちょっとわが家からは通えないし、それ以前に入塾テストのハードルが非常に高くてなかなか入れないそうです。フォトンに通っていた女の子が入塾テストに落ちたって。
算数先取り塾「フォトン」の存在感
Aさん:フォトンってなんですか?
Bさん:フォトン算数クラブ。小学2年からの中学受験の算数塾です。入塾テストの倍率が5倍前後で滅多に入れないですよ。SAPIXの自由が丘校や白金高輪校の「αの上位クラス」には、フォトンの子がたくさんいます。
Aさん:うちの子が近所の小さな塾に通っている間に、熱心なご家庭の子はそんな塾に通っていたんですね。今回の座談会、難関校を狙うガチ受験勢の塾選びがテーマですが、果たしてわが家はガチなんでしょうか(笑)。
Bさん:わが家も同じですよ。低学年では公文の算数しかやってないですから。
Cさん:公文では今、どのあたりをやっているんですか?
Bさん:F教材です。小学6年相当なので大したことないです。
Aさん:ガチ受験じゃないですか。うわわ。私はここにいていいんでしょうか。
SAPIXよりエリート意識が強い塾も
司会:3人とも低学年から塾に通わせており、大変熱心ですよ。Bさんは面倒見のよさを求めるとおっしゃいましたが。
Bさん:まず、SAPIXやグノーブルはうちの家庭とは合わないと思います。できたら日能研と同等以上の面倒見のいい塾を求めています。夫は「君は家庭教師をやってたから勉強教えられるよね」と言っていますが、無理ですね。子ども2人を私立に通わせるためには稼がなければ。
Aさん:グノーブルってどうなんですか? Xでよく話題になっていますが。
Cさん:SAPIXよりも中学受験オタク向けの塾です。だから、Xで話題に上がるんですよ。通っている生徒やその保護者は「自分たちはSAPIXより上の塾に通っている」という意識を持っているケースが多いです。
Bさん:わかります。SAPIXが大衆化した中で、グノーブルはそうじゃないですからね。なんなんでしょうか、生徒や保護者に謎のエリート意識があるように私も感じます。エクタスやフォトンみたいに入塾テストのハードルが高いわけでもないのに、不思議ですよね。
ただ、自由が丘校や白金高輪校以外の校舎は、そんなに生徒がいないから少人数制だそうですし、国語のテキストは質の良い長文を扱い、国語が得意な子にとっては面白く取り組める内容だと思います。
テキストや授業の質はやはり「王者・SAPIX」
Aさん:テキストといえば、今、通っている塾の塾長が転塾先の相談に乗ってくれているんですが、やっぱりテキストはSAPIXが最高だと言っています。
Bさん:それは確かです。ただ、自習室がないし、質問も授業の後だけだし、別に個別指導に通わせることになってしまいそうです。そうなると早稲アカか、四谷大塚か。エクタスは大宮から撤退したので選択肢から抜けました。
Cさん:やっぱりSAPIXはテキストがいいんですね。SAPIXの冬の講習を受けさせてみようかな。近所に地元密着の個別指導塾があるんですが、SAPIXのフォローができるそうなんですよ。授業料が安くて評判もいいんです。
Aさん:うちは通える範囲に評判のいい四谷大塚の準拠塾があって、そこを検討しています。今、通っている塾の塾長はその塾を勧めながら、「でもテキストはSAPIXのほうがいいですよ」と話していました。
Cさん:Aさんのお子さんが今、通っていらっしゃる塾もよさげじゃないですか。中学受験の対策もしてくれるならそこでいいのでは? 小さな塾のよさもあるし。
Aさん:その塾の中学受験のテキストが「予習シリーズ」ではないんですよ。もっと易しいテキストです。塾長も「偏差値60以上の学校はうちでは対応できません」って。
Cさん:なんか味のある塾長ですね。私が中学受験をした時は個人塾に通って、塾長が一人ひとりを見てくれました。今はそういう塾が、少なくともうちから通える範囲にはなくて残念です。
司会:私も個人塾が減っていることは残念に思います。個人塾でも使っているテキストは「予習シリーズ」で、四谷大塚のテストを受けるから、実はカリキュラムに大手との差はないんですよね。
今日はありがとうございました。
難関校を狙うママ座談会を終えて
難関校受験の世界は「『予習シリーズ』か、SAPIXか」の選択であることがわかる。「予習シリーズ」を使用する塾はどこも難関対策を意識している。面倒見が非常によい個人塾が規模が小さいがために減ったことで、保護者たちの選択肢も狭まっており、塾選びの悩みは尽きないようだ。



 
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     
    