大学側の動き 「指定校推薦」枠が多すぎる?

「学校推薦型選抜(指定校制)」

 前編で見てきたとおり、「年内入試」で入学者が増えているのは、私立大学においては「指定校推薦」です。私立大学が「指定校推薦」を増やしている理由は2種類あります。

 一つは、大学によっては「指定校推薦」入学者のGPA(成績)が他の入試区分よりも高い傾向がみられることです。「指定校推薦」では、大学側が各高校に示す出願基準の中で「全体の学習成績の状況(評定平均)」を満たす必要がありますが、この基準をクリアするには高校1年生から全教科で一定レベル以上の成績でなければなりません。このような入学者は、高校1年生時から教科別の好き嫌いなくコツコツと努力してきており、大学入学後も継続して学び続け、好成績を取っている場合が多いのです。

 もう一つは、「一般選抜」で定員を充足することが難しい大学が、「指定校推薦」での入学者の比率を増やすことで充足を目指そうとしているためです。例えば、首都圏の有名女子大学であるA大学は6年間で「年内入試」の入学者の割合を大きく増やしましたが、人数ベースでみると「年内入試」での入学者数はほとんど変わっていません。しかし「一般選抜」での入学者数が大きく減ったため、「年内入試」の割合が増えていることがわかります。私立大学にはこのように「一般選抜」入学者数が大きく減少している大学が少なくないのです。この理由をもう少し詳しく見てみましょう。

A大学の入試区分別入学者の割合と入学者数

旺文社『大学の真の実力情報公開BOOK』2017年度用、および2023年度用をもとに東京個別指導学院が作成

「指定校推薦」の場合、合格者は必ず入学することが原則であり、大学側にとっては確実な入学者を確保できるというメリットがあります。一方で「一般選抜」のような併願可能な入試形式では、合格者の何名が入学手続きをしてくれるかは読めません。このため、指定する高校の数や人数を増やしたり、推薦基準を緩和したりする大学が出てきています。

「指定校推薦」の出願基準については、同じ大学でも高校ごとに異なる場合があるので統計的な数値は示せませんが、近年では出願基準である全体の学習成績の状況(評定平均)が5段階評価で「3.0以上」という大学は珍しくありません。中には「2.7以上」(「学習成績概評」がC段階以上)という大学や、評定基準を設けない大学すら出てきています。

評定平均と学習成績概評の関係

全体の学習成績の状況

(評定平均)

学習成績概評
5.0~4.3 A
4.2~3.5 B
3.4~2.7 C
2.6~1.9 D
1.8以下 E

東京個別指導学院が作成

 このように、多くの大学が指定校を拡大すれば、「指定校推薦」枠の総数が増え、供給過剰状態になっていきます。結果的に、高校側・受験生側は「指定校推薦」枠がある大学の中から比較検討・選択できるようになりました。大学側としては、「指定校推薦」枠を提供した人数分だけ高校が出願者を送ってくるわけではなくなり、より一層の指定校の拡大、推薦枠の拡大、基準の見直しなどを迫られることになります。

HPで「指定校推薦」枠の人数を
公表している首都圏の高校の例
高校名

指定校

推薦枠

卒業生

概数

京華女子高等学校 600 140
搜真女学校高等部 691 150
佼成学園女子高等学校 600 190
港北高等学校 400 310
共栄学園高等学校 550 220
東京立正高等学校 288 150

指定校推薦枠は各高校のHP、卒業生概数は晶文社『高校受験案内2024』をもとに東京個別指導学院が作成

 人気大学の一つである立教大学の異文化コミュニケーション学部では、2020~2023年度の「指定校推薦」での入学定員は5名ですが、2023年度の出願者は4.8倍にあたる24名が出願し、全員合格としました。*¹ 「指定校推薦」は大学と高校の信頼関係に基づく入試方式なので、想定以上に出願者が集まったからといって、大学側の都合だけでは不合格とすることはできないのです。

立教大学指定校推薦 出願者 合格者
2019年度 941 941
2020年度 1,001 1,001
2021年度 984 984
2022年度 943 943
2023年度 1,012 1,012

2023年度

医学部指定校推薦

出願者 合格者
獨協医科大学 54 20
北里大学 84 35
埼玉医科大学 18 5
金沢医科大学 8 3

立教大学HPと各大学のHP掲載の2023年度入試結果から東京個別指導学院が作成

 大学側としては、「指定校推薦」であっても出願者が何名になるか完全に把握することはできないものの、出願者数≒入学者数として入学者数の見通しを立てることはできます。高校側・受験生側としても「指定校推薦」に出願した場合は、医学部を除けば、ほぼ入学ができるため、進学先を早期に確実に決めることができます。

 さらに、従来は「指定校推薦」枠を設けなかった高校に対して「指定校推薦」枠を提供する大学が増えてきており、受験生にとっても選択肢が増えるようになりました。このように見ていくと、「指定校推薦」は「大学」「高校」「受験生」それぞれにメリットがあることがわかります。

まとめ
・「学校推薦型選抜(指定校推薦制)」の増加:「指定校推薦」枠の総数の増加で、供給過剰気味
・「大学」「高校」「受験生」それぞれにメリットがあるから

「学校推薦型選抜(公募制)」

 特定の高校の生徒を対象としない「学校推薦型選抜(公募制)」でも、より多くの入学者を確保したいため、受験生を集めるための取り組みが進んでいます。「学校推薦型選抜」というと、1人1校に出願する「専願」というイメージを持つ保護者も少なくないと思います。ところが、現在の「公募制推薦」は、併願可能な大学の方が多数派なのです。*² さらにいえば、出願基準を緩和する大学や、入試日程を複数回設ける大学も出てきていますし、面接試験をオンラインで受験できるようにするなど、受験生が出願・受験しやすい制度を取り入れる大学も増えてきています。 

私立大学における公募制推薦入試の併願可否

文部科学省委託調査「大学入学者選抜の実態の把握及び分析等に関する調査研究 調査報告書」をもとに東京個別指導学院が作成

「総合型選抜」

「総合型選抜」は、各大学が定めるアドミッションポリシー(大学側が求める人物像をまとめたもの)に合う入学者を探すため、提出書類や面接、小論文などさまざまな試験を組み合わせて、一人ひとりを丁寧に評価する入試方式です。このように書くと、その大学だけを志望する受験生対象の入試方式のようにとらえる方もいるかもしれませんが、「専願を必須としない総合型選抜」を実施する私立大学は、首都圏だけでも100大学(専門職大学も含む)を超え、増加傾向にあります。

 選抜方法も、複数の方式を用意して、受験生のそれぞれの持ち味を活かせる方式を選択できる大学も出てきています。例えば、桜美林大学では2024年度の「総合型選抜」では従来よりも方式を増やし、3つの方式を設けています。*³ どの方式でも他大学との併願が可能で、かつ、受験機会が複数ある方式もあります。

桜美林大学の2024年度入学者「総合型選抜」
総合型選抜 各方式の特徴と有利な受験生 併願可否 受験機会
❶総合評価方式

部活動や委員会活動、ボランティア活動、地域での活動、

その他さまざまな経験で得た学びや経験を

「自己申告 「書」や「面接」でアピールしたいという受験生に有利。

2回
❷基礎学力方式

「自己申告書」を書いたり、 「面接」試験において自己表現をするよりも

高校での教科・科目の試験の方が実力 を発揮しやすい受験生に有利。

1回
❸深究入試(Spiral)

高校での「総合的な探究の時間」の授業が大好きだったり

自身や周囲を巻き込んで課題設定・課題解決のサイ クルを繰り返し

探究での成果で実力を発揮したい受験生に有利。

2回

桜美林大学HP記事をもとに東京個別指導学院が作成

 ❶は従来の「総合型選抜」(旧・AO入試)の標準的な方式ですが、❷は高校2年次修了までに学習する基礎・基本の内容の学力を重視する選抜です。❸は、新学習指導要領で重視されている「探究的な学び」への取り組みや成果を重視する方式で、「プレゼンテーション型」「ディスカバ!育成型」「外部アワード活用型」と、さらに3種類に分けて評価する方式です。

 ❸のように探究的な学びへの姿勢や成果を評価する入試方式を取り入れている大学は、桜美林大学以外にもあります。このような大学は、新学習指導要領での入学者選抜が行われる2025年度入試以降、徐々に増えていくと思われます。*⁴

「探究力」を評価する
「総合型選抜」を実施している大学例
大学名 入試名
お茶の水女子大学 新フンボルト入試
大阪大学 総合型選抜研究奨励型/挑戦型
金沢大学 KUGS特別入試
九州工業大学 総合型選抜 I
島根大学 へるん入試
千葉工業大学 総合型(創造)選抜
関西学院大学 探究評価型入学試験

内閣府科学技術・イノベーション推進事務局 文部科学省「探究力評価への挑戦 主に大学入試における事例」令和4年4月をもとに東京個別指導学院が加筆して作成

 また、「総合型選抜」では、「育成型」と呼ばれる新方式を導入する大学が出てきています。*⁴ 「育成型」は、出願前に実際の大学での授業やグループワーク等を受講してレポートの提出やプレゼンテーション等をさせたり、大学職員や在学生と一緒にレポートや受講内容の振り返りをしたり、学ぶ意欲や学びたいことを面談で確認して、参加した高校生に出願するかどうかを検討してもらう方式です。中には、面談後に大学職員が高校を訪問し、進路指導担当者や担任に面談結果を説明して進路指導に役立ててもらうという大学もあります。

 受験生に学部・学科に対する理解を深めてもらうことはもちろんですが、大学側にとっては入学後のミスマッチや中退を防ぐ狙いもあります。少子化にもかかわらず大学数が増え、定員割れの私立大学の割合が53.3%にものぼり、入学定員よりも入学者数が少ない(日本私立学校振興・共済事業団 2023年8月30日公表)という環境の中で、出願者の中から合格者・入学者を「選別」するのではなく、入学者を「育成」していこうという試みが私立大学の一部で始まっているのです。

まとめ
・「学校推薦型選抜(公募制)」や「総合型選抜」が増加
・専願中心から、併願中心にシフト

高校の動き 入試方式が多すぎて受験指導に混乱も

 前編で、全体傾向としては「年内入試」での入学者の割合が増えているが、大学の設置区分(国公立大学が私立大学か)や「一般選抜」での入試難易度などにより「年内入試」割合増のペースは異なるという現状をお知らせしました。さらには、入試形式が「年内入試」注力大学、「一般選抜」注力大学、「系列校」注力大学に分かれている現状があります。この状況に対応して、「どのような大学に在校生を送り出している高校なのか」によって、進路指導のやり方が分かれてきているように思います。

 これは私見ですが、以下のようなイメージです。

学校の種類のイメージ

東京個別指導学院が作成

「年内入試」注力大学に多数が進学する高校では、在校生の進路希望を実現するためにも、「指定校推薦」をはじめとする「年内入試対策」により力を入れていくと考えられます。すでに、「年内現役合格80%以上」「合格者の90%以上が総合型・学校推薦型で進学を決定」などを訴求している高校があります。*⁵ 自校の「指定校推薦」枠を積極的に公表する高校も多く、高校受験における志望校選びにおいての重要な検討材料になっています。

 このような高校は、「年内入試」出願に必要な対策、例えば志望理由書作成対策、面接練習、小論文指導なども丁寧に行う傾向にあります。半面、「大学入学共通テスト」などの「一般選抜」対策は、一部の生徒向けの対応になっていくように思います。

 一方で、原則的に生徒全員が「大学入学共通テスト」を受けるような高校もあります。難関国立大学など「一般選抜」での入学者が多い大学=「一般選抜」注力大学に多数が進学する高校(主に進学校)です。こういった高校では、「大学入学共通テスト」「個別学力検査の論述問題対策」など、「一般選抜」対策の指導が引き続き中心となるでしょう。

 このような高校は難関大学に入学する生徒が多いので、数多くの「指定校推薦」枠を持っています。しかし、有名大学の「指定校推薦」枠が多いにもかかわらず、枠のすべてを使い切っているわけではないのが特徴です。

 下表は、都内のある私立高校がHPで公開している2023年度入試での「指定校推薦」枠数と進学者数の内訳です。*⁶ 早稲田大学や上智大学は「指定校推薦枠」を使い切っていますが、GMARCHでは合計約4割の「指定校推薦」枠を余らせています。

都内のある私立高校の2023年度入試での
「指定校推薦」枠数と進学者数の内訳
  指定校推薦枠 うち進学者数
東京都立大学 7 6
早稲田大学 7 7
上智大学 3 3
学習院大学 12 6
明治大学 6 5
青山学院大学 14 9
立教大学 8 6
中央大学 16 9
法政大学 11 5
成蹊大学 6 4
成城大学 8 1
明治学院大学 3 2
獨協大学 3 0
國學院大学 2 0
武蔵大学 4 2
日本大学 5 2
東洋大学 9 2
専修大学 1 0

都内のある私立高校HPをもとに東京個別指導学院が作成

 また、「一般選抜」注力大学に多数が進学する高校の場合、「指定校推薦」の基準をクリアする校内成績を収めている生徒は、「一般選抜」で十分合格を狙える成績(偏差値)であることが少なくありません。実際、上表に掲げた高校は偏差値63~68の進学校であり、GMARCHに現役で300名の合格者を出しています。

 毎年のように複数の大学が大学入試制度を変更しています。高校がそれらを情報収集して一人ひとりの希望方式での受験指導をするのは今まで以上に難しくなるでしょう。「一般選抜」「年内入試」両方に注力する高校の数は減っていき、多くは「年内入試」中心校となり、一部だけが「一般選抜」中心校になるのではないかとみています。

まとめ
・どの高校も「年内入試」大半になるわけではない
・高校によって、「一般選抜」メイン、「年内入試」メイン、「系列校進学」メインの学校に分かれていく

中学や高校の進路選択で、その先の大学進学も想定に

 このような大学入試・大学・高校の変化に対応して、保護者が気を付けたいポイントは、大きく2つあります。

  • 子どものタイプをふまえ、将来の進路についても考える
  • 大学進学を考えた高校選び・中学選びが重要になる

子どものタイプをふまえ、将来の進路についても考える

 例えば、「指定校推薦」で確実に大学に進学させたいと保護者が願っていたとします。「指定校推薦」での推薦条件は「一般選抜」での受験難易度が高い大学ほど厳しくなります。例として推薦条件が「全体の学習成績の状況(評定平均)は4.2以上、かつ数学は4.5以上」の場合、高校1年生から履修全教科にわたってまんべんなく校内試験で好成績をとり続けなければならず、数学は特にトップクラスにいなければなりません。子どもが好き嫌いなくコツコツと勉強して成績上位をとり続けるタイプなのかどうかを見極めておくことが必要でしょう。

 私立大学の「一般選抜」は3科目入試がまだまだ主流です。難関国立大学でも6教科8科目が入試科目で、高校で学ぶ全教科・科目ではありません。「一般選抜」で利用する科目を中心にがんばらせたほうが強みを発揮できる子どもも少なくありません。

「興味があること」「やりたいこと」がはっきりしている子どもの場合、「指定校推薦」では満足のいく結果が得られないこともあります。「この高校は偏差値のわりに有名大学に指定校推薦で合格できるのでコスパ高い」といった記事が出ていることがあります。「何が何でも有名大学に進学したい」のであればいいかもしれませんが、「希望する法学部には指定校推薦枠がないから、文学部の指定校推薦に応募する」というケースが出てきます。

 やりたいことがはっきりしている子どもの場合、たとえ有名大学に入学できたとしても、興味の低い学部で学ぶことに前向きになれないことでしょう。大学でどんなことを学びたいのか、大学卒業後にどんなことをやりたいのかを、小学生・中学生の段階からご家庭で考える機会を設けていった方がよいのです。

大学進学を考えた高校選び・中学選びが重要になる

 現在、お子さまが中学生や小学生でも、先々を見据えた進学先選びが重要になってきます。高校での大学受験対策が「一般選抜」メイン、「年内入試」メイン、「系列校進学」メインに分かれていく潮流を踏まえた進学先の検討が必要になってきているのです。秋以降に中学・高校で学校説明会が盛んに行われますが、説明会参加時に学校に確認しておくとよいポイントを5つにまとめましたので参考にしてみてください。

  • Ⓐ全体
  • Ⓑ大学付属校などの場合、系列大学への内部進学に関する確認
  • Ⓒ「指定校推薦」に関する確認
  • Ⓓ「総合型選抜」に関する確認
  • Ⓔ英語資格・検定取得への取り組み

Ⓐ全体

 国立校・公立中高一貫校・私立校のほとんどは、卒業生の合格校や進学校をHP等で公開していますが、どのような入試方式で合格しているのか(「一般選抜」「総合型選抜」「内部進学」「学校推薦型選抜(公募制)」「学校推薦型選抜(指定校制)」)の人数や割合を公開している学校は少数です。各校ともデータはとっていますので、学校説明会の個別相談で確認しておくとよいでしょう。

Ⓑ大学付属校などの場合、系列大学への内部進学に関する確認

 系列大学がある高校は、高校卒業生の70%以上が系列大学に進学する「付属校」、30~70%未満の「半付属校」、30%未満の「(ほぼ)進学校」に分かれます(ここで示したパーセンテージは統一した基準があるわけではなく目安です)。

 一般に、早稲田大学や慶應義塾大学のように入試難易度が高い大学の系列校は内部進学率が高くなりますが、一般選抜の入試難易度が低くなるにつれて、内部進学率は低くなる傾向にあります。

 内部進学できる基準や人数は、高校によって異なります。基準を満たせば全員が系列大学の希望学部に進学できる高校もあれば、希望通りの学部に進学できるかどうかは校内成績次第という高校もあります。内部進学率が高い高校ほど、内部進学を前提として高校と大学が連携した教育を行う傾向が強いため、他大学への受験指導が不十分ということもあります。その場合は、塾や予備校で別途対策を行う必要があるでしょう。

 

大学付属校における、他大学受験の対応例

他大学を受験する場合は、内部進学の権利を失う。
国公立大学や高校の指定する大学を受験する場合に限り、 内部進学の権利を持ったまま他大学を受験できる。
III 系列大学に生徒の志望する学部(医学部など)がない場合は、内部進学の権利を持ったまま他大学を受験できる。
IV 他大学の「年内入試」であればどの大学でも、内部進学の権利を持ったまま他大学を受験できる。
V 校内成績が一定以上の者は、内部進学の権利を持ったまま他大学を受験できる。
VI その他

 
大学付属・系属校へのヒアリングをもとに東京個別指導学院が作成(Ⅵ「その他」には制限なしを含む)

 また、近年では内部進学の権利を保持したまま他大学を受験できる付属校も増えてきました。その可否や条件は、高校によってさまざまです。中学受験の説明会ではここまで説明されないこともありますので、しっかり確認したいところです。

系列大学への内部進学の場合の
確認ポイント

  1. 内部進学比率
  2. 内部進学の条件
  3. 希望の学部に進学できるか
  4. 他大学を受験する場合の高校の支援体制
  5. 内部進学の権利を持ったままでの他大学受験の可否

Ⓒ「指定校推薦」に関する確認

 特に複数のコースをもつ高校では、在籍コースによっては「指定校推薦」が受けられない場合があります。*⁷ また、「指定校推薦」では、人気のある大学・学部については高校内で推薦者の選考を行う場合があります。成績順で決定する高校もあれば、単純に成績順で決定せずに学びたい内容と学部がどれだけ一致しているかを重視する高校もあります。見学先の中学・高校でしっかり確認しておきましょう。

「指定校推薦」の場合の確認ポイント

  1. 指定校推薦枠のある大学・学部(学科)と人数、基準
  2. 指定校推薦利用者の割合
  3. 指定校推薦の校内条件
  4. 校内選考の考え方

Ⓓ「総合型選抜」に関する確認

 前述したように、「総合型選抜」での試験内容が細分化・多様化されてきており、「探究活動」を評価する入試が出てきています。「総合型選抜」では、生徒が今までどのようなことに関心をもって主体的に取り組んできたかが評価される場合が多いのです。見学先の中学・高校で、「総合的な探究の時間」での活動の取り組みや、学校教員のサポート体制、その成果発表のしかた(校内だけか、校外にも出ていくのか)について確認をするとよいでしょう。学校説明会で、生徒が「探究」を発表する機会を設けている学校もあります。

 さらには、生徒の興味関心に合わせた「総合型選抜」を実施している大学について質問したり、「総合型選抜」対策をどのように行っているのかを、今春の卒業者の例などを聞き出したりすると、高校でのサポート体制がイメージできます。「総合型選抜」対策には、志望理由書・学修計画書等のサポート、小論文の添削や面接練習などがあります。

「総合型選抜」の場合の確認ポイント

「探究」活動の取り組みとサポートの状況

Ⓔ英語資格・検定取得への取り組み

 英語資格・検定取得への取り組みは、どの中学・高校でも確認しておくべき事項です。「一般選抜」「系列大学への内部進学」「学校推薦型選抜(公募制・指定校制)」「総合型選抜」とも、英語資格検定試験の級やスコアが出願要件になっていたり、加点制度により有利になったりする大学が増えています。各中学・高校のHPである程度の情報は公開されていますが、各学年の平均スコアや、級別の取得者の割合などの詳しい成果を公表している学校は少ないのです。2022年入試で英語の外部検定を利用した大学は、424校で全体の55.6%にのぼります。*⁸ 大学受験において入試方式を選択しても影響があるポイントですので、個別相談で確認すべき点です。

英語資格検定試験利用大学数

旺文社 教育情報センター「外部検定利用入試 2022年は424大学!」をもとに東京個別指導学院が作成

全員の確認ポイント

英語資格検定試験への取り組み状況と成果

おわりに

 前編で見てきたとおり、「一般選抜」減少・「年内入試」増加の傾向は、間違いないのですが、その変化のペースは一律ではなく、おおむね難関大学の方が遅いのです。すべての大学が「年内入試でラクラク合格」というわけではありません。確かに国公立大学でも「大学入学共通テスト」を課さない「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」も増えてきていますが、合格に向けてはしっかりとした対策や活動実績が必要になってきます。私立大学では高い学習成績(評定平均)や大学・学部の研究内容の理解など、従来のペーパーテストでは測れない学力が要求されることが多いのです。*⁹

「どの大学でもいいので、とにかく大学生になれればよい」「現在の校内成績で合格できる大学であればどこでもよい」ということでしたら、受験者全員が合格している大学もありますので、受験対策をそれほど行わなくても「合格」を手にすることはできます。しかし、そのような考え方で大学に入学した場合は、お子さまが強い課題意識と自ら学ぶ姿勢をもって学び続けなければ、大学教育を通して得られることは限られ、大きな成長を望むことは難しいのではないでしょうか。せっかく「大学」で学ぶのでしたら、安易な大学・学部選択はお勧めしません。

 ここまで触れてきたように、入試制度や学校の変化は激しさを増しています。保護者やお子さまだけで自己分析をして、情報収集をして、進路実現に必要なことを考えていくのは難しいと思われます。そのためにも、子どものことをよく知り、ご家庭の教育方針を理解し、大学・高校・中学や入試についても詳しい相談相手を確保しておくことも、保護者がやっておくべきことではないでしょうか。

*¹ 立教大学
*² 文部科学省委託調査「大学入学者選抜の実態の把握及び分析等に関する調査研究 調査報告書」(令和5年2月)
*³ 桜美林大学 入試ガイド2024
*⁴ 内閣府科学技術・イノベーション推進事務局 文部科学省「探究力評価への挑戦 主に大学入試における事例」令和4年4月
*⁵ 瀧野川女子学園中学高等学校 合格実績
*⁶ 錦城高等学校 2023年度入試 指定校推薦大学
*⁷ 京華女子中学・高等学校 進路・進学 指定校推薦
*⁸ 旺文社 教育情報センター「外部検定利用入試 2022年は424大学!」(2022年2月25日)
*⁹ 九州産業大学総合型選抜 令和4年度入試案内より 十文字学園女子大学 サマースクール案内