IT技術の進展につれて、社会のアキレス腱となるのが、電力供給だ。世界の電力需要は2050年には現在よりも80~150%以上増加すると見込まれており、地球温暖化問題を踏まえると脱炭素電源の増設が急務だ。そこでビル・ゲイツほかIT業界の巨人たちは、核エネルギーに注目しているという。※本稿は、斉藤壮司・佐藤雅哉『核エネルギー革命2030 核融合と4種の新型原子炉がひらく脱炭素新ビジネス』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。
ITの爆発的な普及につれて
膨大な電力が必要となる
国際エネルギー機関(IEA)の報告書によると、世界の電力需要は現在から2050年に向けて80%から150%以上増加することが見込まれている(図1-9)。予測に幅があるのは複数のシナリオを想定しているためだが、どのみち大幅に増えることには変わりない。
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世界的に電力需要が増え続ける身近な例の1つが、人工知能(AI)技術やクラウドコンピューティング技術、暗号通貨技術をはじめとする、ITの爆発的な普及である。
例えば、昨今ブームとなっている生成AIでは、画像処理半導体(GPU)による膨大な学習を必要とする。そして、それらを支えるデータセンターの電力需要は、右肩上がりで増えることが予測されている。同じく国際エネルギー機関(IEA)によると、2026年の世界におけるデータセンターの消費電力は2022年の2倍以上に急増する見込みで、これは「日本の電力消費量にほぼ匹敵する」(国際エネルギー機関)というから驚きだ。
このことに気づいたIT業界の著名人は既に原子力発電や核融合発電に手を伸ばしている。その1人が、生成AIサービス「ChatGPT」を開発する米オープンAIの最高経営責任者(CEO)であるサム・アルトマン氏だ。アルトマン氏は小型原子炉を開発するスタートアップ、米オクロを支援している他、核融合炉の実現を目指す米ヘリオン・エナジーにも出資している。
もっと大胆な動きをしているのは米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏だろう。核エネルギー推進派として知られる同氏は原子力スタートアップの米テラパワーの設立者だ。