本連載の第2回第4回において、電気料金を引き上げて、夏の電力需要を抑制すべしとの提案を行なった。

 ところが、東京電力のホームページに、個人契約者については、「東北地方太平洋沖地震に伴い、契約アンペアの変更は、現在受付をおこなっておりません」との通告が掲示された。

 したがって、契約アンペア数の引き下げによる需要抑制方式は、東電によって拒否されたことになる。家庭による節電協力を東電自らが拒否するのは全くもって奇妙なことだが、別の方式を考えざるをえない状況になった。

 そこで考えられるのは、税方式である。

 第1回で述べたように、電気使用コストの引き上げは、電気料金に課税することによっても、料金引き上げとほぼ同じように実現できる(後で述べるように、家庭については、若干の差が生じる)。原発事故や計画停電に関連して東電に対する社会的な批判が強まっており、料金引き上げに対しては「東電の焼け太りは許せない」との声も聞かれることを考慮すると、税のほうが社会的に容認されやすいだろう。

 料金引き上げによる電力会社の増収分は特別税の形で国が吸収することを考えていたのだが、税の形で使用コストを高めることとすれば、収入は直接に国に入る。そして、税収を直接に被災地支援や社会資本の復旧にあてることができる。

 現在日本経団連が考えているのは「輪番休止方式」という統制だが、前回述べたように、これが行なわれれば、経済活動に混乱を招く。

 この方式のもう一つの問題は、家庭に節約を強制できないことだ。なぜなら、「輪番休止」や「交代休業」は、家庭などの小口の需要者には及ばないからである。家庭は全体の電力消費の3分の1程度を占めているので、その抑制は重要な課題だ。大口需要の削減だけでは、夏の計画停電は避けられない。したがって、家庭に対して「節電のお願い」以上に実効力のある措置をとることは、どうしても必要だ。

 これから数か月間は、暖房も冷房も必要がない季節になる。したがって、電力需要はそれほど増加せず、計画停電も行なわれない日が続くだろう。すると、人々の危機感も薄れて、電力需要抑制に効果的な対策がなされないまま夏に突入する恐れがある。