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香山リカの「ほどほど論」のススメ
【第33回】 2012年6月18日
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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

香山リカと「カネ」の話をしよう1

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「カネの話をするなんて、はしたない」という感覚

 「たまには、香山さんに似合わない話をしてみませんか?」。そんな担当編集Sさんの発案から、少々苦手なおカネの話に向き合うことになりました。

 確かに編集者Sさんが察するように、私とおカネは「似合わない」ようです。

 経済的にキツかった研修医時代から今まで一貫して、もらえる給料で何となく満足してしまうタイプの私。貯金ぐらいはしていますが、資産運用というレベルには達していません。投資とはいっさい無縁です。

 いや、もっと正確にいえば、おカネと主体的に関わることを慎重に避けてきたという感じでしょうか。要するに「カネの話をするなんて、そんなはしたないマネはするもんじゃない」、基本的にそういう古風な価値観のもとで生きてきたように思います。

 私のこうしたスタンスには、医師として働いてきた環境が影響しています。東京の大学を出て、研修医として初めて勤務したのは北海道の大学病院でした。そこが、ピューリタン的というか、とかくおカネについて禁欲的なところだったのです。

 医者は医学に仕えるものであり、カネのことは口にすべきではない。激務のわりに給料も非常に安かったのですが、文句をいうなどもってのほか。副業として商業誌に原稿を書いたある医師は、「悪魔に魂を売った」と非難されるほどでした。

 その後、移った道内の別の公立病院でも、おカネの話はタブー。後に、その町が財政破たん寸前で病院もひどい赤字状態だと知りました。けれども、医者は診療に専念し経営に口を出すべからず。そんな厳然たる不文律が存在していたのです。

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香山リカ [精神科医、立教大学現代心理学部教授]

1960年北海道札幌市生まれ。東京医科大学卒業。豊富な臨床経験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書に『しがみつかない生き方』『親子という病』など多数。


香山リカの「ほどほど論」のススメ

好評連載「香山リカの『こころの復興』で大切なこと」が終了し、今回からテーマも一新して再開します。取り上げるのは、社会や人の考えに蔓延している「白黒」つけたがる二者択一思考です。デジタルは「0」か「1」ですが、人が営む社会の問題は、「白黒」つけにくい問題が多いはずです。しかし、いまの日本では何事も白黒つけたがる発想が散見されるのではないでしょうか。このような現象に精神科医の香山リカさんが問題提起をします。名づけて「ほどほど」論。

「香山リカの「ほどほど論」のススメ」

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