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ピカチュウと一緒に歩いた被災地の日々
~33万人の子どもたちとポケモンの絆が明日を創る

石島照代 [ジャーナリスト]
【第32回】 2012年8月22日
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 多くの皆さんが今回の震災を大きな事件としてとらえ、様々な活動をされています。その中で私たちができることは、普段ポケモンのファンでいてくれる子どもたちに少しでも笑顔になってもらい、明日に夢や希望を持って、「もうちょっと頑張ってみよう」と思ってもらうような、そういうお手伝いだろうと思っています。出会った子どもたちが、「あのときピカチュウに励まされたなぁ」といった思い出を少しでも持ってくださると嬉しいな、というくらいの気持ちでやっています。

被災地との信頼関係を築きながら、
33万人の子どもたちと会う

石島:私は東日本大震災発生直後にニンテンドーDSを握りしめている子どもがTVに映っていたことが、今でも忘れられません。たぶん、彼は着の身着のまま逃げたはずなのに、DSを持っている。そして結果論として、子どもにとっては、そのDSが“さっきまであった幸せな日常を生きていた自分”を証明するものになってしまったので、たとえ電源が入らなくても絶対に手放せない。

 あの瞬間、私はゲームビジネスの社会的責任を痛感したように思います。社会の明日を創る子どももユーザーにいるからこそ、儲けることだけを正義にしてはいけない。売上高、利益額の高低だけで企業価値を云々してはいけないと、強く誓った瞬間でもありました。この時の誓いがその後のコンプガチャを含む、ソーシャルゲームに対する見方を決定づけたといってもいいでしょう。

田中:たしかに、「ぼくのDS、流されちゃったんだ」って話す子どもたちには、たくさん会いました。当然、自分の命が一番大事ですけど、DSは子どもたちにとって宝物だったんだなぁと思います。ただ、被災地にはアナログで誰でも遊べるようなものを持って行って、遊んでいただいているんですけれども。

 被災地にお邪魔すると、子どもだけではなく、様々な方の人生に触れます。「仕事も失ってしまった」というお話を伺ったり、「子どもたちにはガマン、ガマンの日々だった」というお母様のお手紙をいただいたり。

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石島照代
[ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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