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インキュベーションの虚と実

明確な意図の下に集いゆるやかに連携する
コミュニティを進化させろ!
女性起業家グループ「SPARK!」

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第14回】 2012年11月12日
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グループに込められた
重要な3つの意図

 SPARK!には、いくつかの意図が込められている。

 まず、個人や会社ではなく、グループであることだ。これには二つのポイントがある。

 一つは発信の力と機会だ。会社や個人としてでは、意見や情報の発信力は限られる。よほどの有名人でもなければ、そもそも発信の機会すら得られない。一方で、個人や会社という特定の立場で発信すると、その立場に依ったメッセージだとみられてしまう。

 ところが、グループとしての発信であれば、機会は増えるし、意見も影響力を増す。他のコミュニティに刺激を与えるという面も、お互いが切磋琢磨するという意味でプラスだ。

 もう一つは、第13回でも書いたが、自らを次世代型の女性起業家へ変身させることだ。次世代型の女性起業家とは、お互いを助け合い、切磋琢磨しながら社会を変える事業を創造していく存在だ。この「協力するマインド」が、次世代型の特徴だ。

 昔は、女性起業家にとってのロールモデルもメンターもいなかった。女性起業家たちは「私がリーダーとして頑張ってます」という孤高の姿を体現することを世間から求められたし、それが格好良い姿だと見られた。

 それゆえ、起業家仲間が力を合わせて世の中を変えようという動きは起きえなかった。SPARK!は個人の満足を追い求める活動は良しとせず、グループとしての満足を追い求める活動をするのが原則だ。教祖や女王といった、組織の上に立つ存在もいない。したがって、女帝とも呼ばれる奥田氏は、女帝ではなくお膳立て役として活躍している。

 確かに奥田氏はバイタリティが人一倍あり、目立つ存在であるため、グループは奥田氏が牽引しているように見える。しかし、そんな奥田氏のパートナー的存在なのがエゴの嫌いな東氏であり、その存在がSPARK!内でよいバランスをつくっている。偶然だが最強のコンビと言えよう。

 さらに、女性起業家のロールモデル・ポートフォリオとしての意図も挙げられる。APEC WLNの時に議論されたのが、「ロールモデルは少数ではなく多様であるはずで、これから起業しようとしている人は、さまざまなタイプを示されると実際に目指しやすい」ということだ。SPARK!は、女性起業家のロールモデルの一部になれるようにという希望が込められている。

 偶然の出会いからスタートし、さまざまな意図を込めて発足したSPARK!は、会費も義務もなく、自由でゆるやかにつながっている。フェイスブックのグループ機能を活用し、イベントの出演や、ビジネスプラン・コンテストなどの情報のシェアをしている。

 これまでSPARK!が参加したイベントの一端をご紹介しよう。

 発足のきっかけとなったAPEC女性起業家サミットをはじめ、世界銀行パブリックセミナー「可能性へのチャレンジ—女性起業家の活躍で世界をより豊かに」や世銀グループのIFC主催「女性ビジネスリーダー・セミナー」、ONLabの「Open Network Live!」、「Mashup Awards」、「Nadeshiko Ventures Summit」、「岐阜Woman's Conference」などだ。

 「孤高の女性起業家」も悪くはないが、自立した者同士の自由なつながりから、新たなアイデアや人とのつながりはたくさん生まれる。実際に、上記のイベントの登壇を通して、SPARK!のメンバーはそれぞれ、多くのつながりを持ち、それは今も拡大している。それこそ、コミュニティの存在意義だ。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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