「昭和的共犯関係」にある
行政にも監視が必要

 令和6年、西暦では2024年に始まる新NISA(金融庁は単に「NISA」と呼ぶことにするらしい)でも、金融機関と金融庁の間には、回転売買の線引きを巡って「昭和的共犯関係」が存在することが分かった。

「自分で自分の仕事をつくっているのではないか」「将来の天下りのための権限行使だろう」といった意地悪な推測は今の段階では控えることにして、行政の「さじ加減」が適切であることを願うことにしよう。

 ただ、どのような行為が「不適切な回転売買の勧誘」に当たるのか、金融機関のためだけでなく、投資家のためにもあらかじめ明らかにしておくべきだろう。事後的に判断できる曖昧な権限を持つことは、行政にとっても健康的ではない。

 直近の悪い事例としては、千葉銀行とその子会社が摘発された仕組み債の不適切販売を挙げることができる。

 個人向けの仕組み債は、投資することが明白に不利な「誰にとっても不適合な商品」であるにもかかわらず、金融庁は、仕組み債の個人向けの販売自体を止めるのではなく、個々の金融機関の営業ぶりの良しあしを判断する立場でぐずぐずしていたために、投資家の被害拡大を招いた。

 新NISAでの投信の回転売買勧誘は、仕組み債ほど目立ってひどい結果をもたらさないだろうが、投資家一人一人の損は小さくても、数が大きくなる可能性があり、看過できないものになる可能性がある。

 金融庁にも監視が必要だと申し上げておく。