2023年決定版 インフレ時代の「負けない」マンション売買・管理#11Photo by Yoko Suzuki

新築供給が極端に絞り込まれる中、今後注目すべき新しい開発エリアやマンションデベロッパーの戦略は?実は開発が決まっていても今は動きがないエリアは、今後大化けする超お買い得物件になる可能性もあるという。特集『2023年決定版 インフレ時代の「負けない」マンション売買・管理』(全24回)の#11では、そんな穴場情報が満載の売買座談会最終回をお届けしよう。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

【座談会参加者】
●のらえもん @Tokyo_of_Tokyo マンションインフルエンサー、マンションアナリスト
●ふじふじ太 @fuji_fujita_kun 東京湾岸不動産コンサルティングマスター
●稲垣ヨシクニ @inagaki_kizuna 都心マンションソムリエ
●芝崎健一 @shibasan_towerz タワーマンション専門TOWERZ取締役 YouTube「芝塾タワマン不動産」運営
●デベマン マンションデベロッパーの中の人。開発担当

「『大量供給で一気に売る』は壊滅、細かく刻んで
高値で分譲する、をどのデベも貫いてる」

――デベロッパーは次はどのエリアで戦略的にマンション開発をするんですかね?

デベマン 収支が成り立つ場所はかなり限られてくるので、開発物件は選びますよね。ゼネコンも「建築費何億円以下は受注しません、見積もりすらお手伝いできません」みたいな状態なので。都心部や郊外でもある程度人気のエリアに開発が集中していくんでしょうね。そもそも郊外は顧客の購買力がそこまで強くないので価格を高く設定できない。単発的に数百戸の物件は出てくるんでしょうけど、1000戸を超えるような大型はなかなか難しい。

 それで、各社とも再開発に大きく注力してます。地方都市の中核エリアとか、建て替えとか。大手デベ(ロッパー)は地権者調整をある程度長い時間かけて進めながら大きなプロジェクトを作っていく方向にシフトしていると、最近感じますね。今年も年間の供給戸数が出ますけど、2年連続で3万戸を割りそう。私の立場で言うのもあれなんですが、デベ側が供給をコントロールしてるからですよね。大量供給で一気に売るのではなく、細かく刻んで高値で売れるところを追求する姿に大手のデベはほとんどなってますね。

芝崎健一(芝崎) この前大阪でシエリアタワー中之島っていう物件が1期で約40%の戸数が売れて、まだ60%残ってるのに一度モデルルームを閉めちゃった。来年4月に値段を変えて再販売するらしい。そういうふうに長期で売ろうというデベがめちゃくちゃ多くて。ブリリアタワー堂島もあと1割残っているのに、モデルルームはあるけど1戸も売り出していない。販売再開は来年の1月以降とのことです。その頃、競合のグラングリーン大阪の価格が決まるのでそこに合わせてやるみたいです。とにかく貪欲に高値付けにいっている。

のらえもん(のら) ところで建築費ってどのくらい上がってます?

デベマン ゼネコンから出てくる見積もりはこの1年だけでも2割くらい上がってますね。鋼材価格の値上がりは2023年の年明けくらいで一回上げ止まったんですけど、今は労務費が上がってる。職人が高齢化で減っているのと、各地方都市での盛んな大型都市開発などに取られて職人が足りない。労働規制によるコスト増も重い。建設中の物件で「労務費が合わないので建築費上げさせてください」という要求がゼネコンから来ます。でも最初に収支計画を作るときにはゼネコンからこんな「おかわり」があるなんて想定してませんから、利益を削るか、販売価格を上乗せするしかない。

 建設物価指数を見ると、基準点となる15年を100として23年6月時点でだいたい230ちょい手前くらいになってる。特に22年から23年にかけてワーッと急に上がっている。計画当初にゼネコンで取った見積もり20億円が、その後建設前にもう一度出してもらったら30億円に跳ね上がっていた、みたいな事例も聞きました。そうすると当初のグレードから下げるか、値段を上げるか、選択肢が限られてきちゃう。

とどまるところを知らない建設費の高騰。新築マンションの価格が今後下がる可能性はあまりなさそうだ。では24年以降の注目開発エリアや注目新築マンションはどこにあるのか?次ページから実際のエリア名、物件名でメンバーが語る。